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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「不夜城」馳星周(角川文庫)



【おれはおまえを連れていきたい。おまえが望む場所にだ。
 だけどな、そんな場所はどにもないんだよ】

愛しさを感じた女を信じることができなかった男。
助けを求めてすがった男を信じられなかった女。
唯一の拠り所は自分自身。行きつく先は、喰うか、喰われるか。
常に一手先を読み、保険をかけておかなければ明日につなぐことのできない命。
それでも信頼に値しない相手。掬われる足元。
裏切りと計算の渦巻く殺伐とした世界に身を置く者たちの末路は憐れでもあり、物悲しくもある。
彼らにとってのやすらぎとは、愛情とは、いったい何なのか。
問いかけてみたところで返ってくるものは、空しさだけだった。


内容(「BOOK」データベースより)
新宿・アンダーグラウンドを克明に描いた気鋭のデビュー作!おれは誰も信じない。女も、同胞も、親さえも…。バンコク・マニラ、香港、そして新宿―。アジアの大歓楽街に成長した歌舞伎町で、迎合と裏切りを繰り返す男と女。見えない派閥と差別のなかで、アンダーグラウンドでしか生きられない人間たちを綴った衝撃のクライム・ノベル。

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「虚の王」馳星周(角川文庫)



【考えればいいんだよ。
 どうすればいいのか、なにをすればいいのか。
 ちゃんと考えればなんだってうまくいくんだから】

邪気のない悪意。
日常の中に紛れた狂気。
うるさいから刺す。邪魔だから殺す。
まるで不快な汗をぬぐうような気軽さで、
道徳や倫理といった概念を飛び越えてしまう少年、
栄司と出逢ったことによって運命を狂わされた人々の物語。
かつては暴力で渋谷に君臨した隆弘ですら、
栄司と出逢ったことで破滅への道を転がり落ちていってしまう。
僅か数日の出来事にしては、あまりにも濃密すぎて眩暈すら覚えそうになる。
度を越した暴力の連鎖に眉を顰めながらも、先へ先へと頁を捲る手が止まらない。
それは、登場人物を介して作者の放つエネルギーに吸い寄せられ、
引き込まれるような感覚なのかもしれない。

内容(「BOOK」データベースより)

新田隆弘は鬱屈をため込んでいた。かつては渋谷で伝説のチームと言われた“金狼”の元メンバーも、今ではヤクザの下っ端。兄貴分の命令で高校生が作った売春組織を探っていた隆弘は、中心人物の渡辺栄司に辿り着く。さして喧嘩が強そうでもない、進学校に通う色白の優男。だが、栄司は仲間を圧倒的な恐怖で支配していた。いったい何故。隆弘が栄司の全く異質な狂気に触れたとき、破滅への扉が開かれた―。

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「将棋ボーイズ」小山田桐子(幻冬舎文庫)



【俺はね、負けた時に、あれをやっておけばよかった、
 これをやっておけばよかったって思うのが嫌なんだよ。
 負けた悔しさはあっても、
 あれもこれも全部やってきた結果だからしょうがないと思いたい。】

仲間たちと共に部活(将棋)に打ち込みながら過ごす高校生たちの3年間の物語。
この多感な時に「仲間と一緒に必死にやったこと」が後の自分に与える影響ってすごく大きいと思う。
例えばそれは仲間たちとの絆であったり、その時の自分の成長度合いであったり、
その時に感じた悔しさや喜びであったりするのだろう。
将棋への取り組み方や、仲間との接し方は人それぞれ違う。
それでも、大会がある以上、上位を目指すならチームは意識を同じくして
取り組んでいかなければいけない。
温度差がある部分を摺合せ、互いに技術を磨きあい、
相手に対して無神経な物言いをしている部分はきちんと反省する。
躓きながらもそうやって過ごしてきた三年間の間の
少年たちの成長具合が伝わってきたのが微笑ましくてよかった。

内容(「BOOK」データベースより)

勉強も運動も苦手な歩は、なんとなく将棋部に入部する。そこには、亡父の願いと周りの期待に悩む天才・倉持がいた。そんな時、県大会の団体戦メンバーが呼び上げられる。落ちこぼれと本気になれないエースが、タッグを組んで奇跡を起こす!?僕らの未来を決めるのは、大人でも偏差値でもない―実在の将棋部をモデルにした絶対感動の青春小説!!

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「光待つ場所へ」辻村深月(講談社文庫)



【きっと恋をしたら、そういう俗っぽいことも、
 潔癖じゃいられないダメなことも、全部わかるようになるのに】

チリチリと胸に刺さる感情は、覚えのある傲慢さ。覚えのある嫉妬心。
ここではない、どこかへ。
楽に呼吸ができる世界を、本来の自分が在るべき世界を探そうとする心理は
結局は現実世界で真っ向勝負することからの逃避にすぎないんだと、
気づくことができるまで、とても苦しかった時代が、確かに存在する。
今はもう、乗り越えてしまったその時の想いを、彼女の紡ぐ物語はリアルに思い出させてくれる。

この物語で語られる彼らや彼女たちの人生は、
周囲の人たちとの係わりや、自らの体験にから得たことによって
苦悩や惑いの中から明るい光に照らされた未来へと歩きだしている。
収められた5編の短編を総称するのにふさわしいタイトルだと思いました。


内容(「BOOK」データベースより)

大学二年の春。清水あやめには自信があった。世界を見るには感性という武器がいる。自分にはそれがある。最初の課題で描いた燃えるような桜並木も自分以上に表現できる学生はいないと思っていた。彼の作品を見るまでは(「しあわせのこみち」)。文庫書下ろし一編を含む扉の開く瞬間を描いた、五編の短編集。

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「理髪師の、些か変わったお気に入り」榎田尤利(キャラ文庫)



シリーズ最終巻。
物語にかかわった人たちが生まれ育ち、愛し、仕事を営んできた藤井沢商店街。
そんな街を、え?最後は出て行ってしまう物語なの??と一瞬首を傾げたわけですが……
違ったね。
「ただいま」「おかえり」
無条件で自分を迎え入れてくれる場所。
無条件で自分を抱きしめてくれる場所。
誰かが自分を待ってくれている場所。それが故郷。
そういった場所があるっていうことは、とても心強いし、支えになると思う。
そんなことをやさしく伝えてくれる物語でした。
うん。
終始暖かな気持ちになれる素敵な物語でした!

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「アパルトマンの王子」榎田尤利(キャラ文庫)



飛び出したいけど飛び出せない。
そういう葛藤やしがらみってあるよね。
特に長男長女は自由に飛ぶことができない。
折り合いをつけるのが人生……なのかな?
それでも優一は世羅に出会えたんだから人生捨てたもんじゃない。
時に枷になったとしても、家族がみんな仲良く寄り添いあえるのはとても幸せなことだと思う。
今回は子供たちが無敵に可愛かった☆

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「結婚相手は抽選で」垣谷美雨(双葉文庫)



突如施行された「抽選見合い結婚法」に振り回される人々の物語。
25歳から35歳までの男女は強制的にお見合いをして結婚しなければならず、
3回断ったらテロ撲滅隊送りになるというトンデモ法律。
設定は斬新だし、登場人物たちの語り口も面白いしで、楽しく読める物語ですが、
見合い相手が善人だけとは限らないことを思うと、ちょっと怖いかな、と。
弱みに付け込んで、とか、力任せに、とか。
まぁ、マイナスのことを考えるとキリがないので割愛。
結局は廃止される法律なんだけど、少子化、晩婚化、未婚率の上昇など、
リアル社会で取りざたされる諸々とあわえて考えさせられます。
とはいえ、この物語の登場人物たちは自分のことに必死でそこまで深く考えていないんだろうなぁ……と。(笑)
でも、それでいいのかもしれない。
自分のことに必死になれるのは自分だけ。
結婚相手となれば、この先の生活の全てが係わってくるだけにそれは必死だよね。
そして自分だけではなく、親も係わってくるからよけいにややこしくなる。
お見合いを断らせようとしたり、どうにか結婚までこぎつけようとしたり、
すったもんだする中で登場人物たちの成長が垣間見れたのが好ましいところ。
「何のために結婚するのか」
「何故その人と結婚するのか」
明確に自覚することは大事だと思う。


内容(「BOOK」データベースより)

少子化対策のため「抽選見合い結婚法」が施行されることになった。相手が気に入らない場合は断ることができるが、三回パスしたらテロ撲滅隊送りになる。だが、この強制的な見合いに、モテないオタク青年は万々歳、田舎で母親と地味に暮らす看護師は、チャンスとばかりに単身東京へ。慌てて恋人に結婚を迫るも、あっさりかわされてしまう女性もいて…。それぞれのお見合い事情をコミカルかつ、ハートウォーミングに描いた長編小説。

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「青狼 男の詩」浜田文人(幻冬舎文庫)



【人を頼ることはあっても、けじめをつけるのは己ひとり。
 それが極道者や】

昭和四十年代の極道世界の物語。
当然、私の知らない世界なわけで、家系図……ではなく、組織図欲しいわぁ、と思いました。
幼少期からずっと慕ってきた松原と同じ世界に飛びこんだ村上。
自らの意志の働かないところで美山組の舎弟から松原組の若頭に杯を直したところから、
美山に寄り添った道を歩くことができなくなり、村上は二つの道理の間で揺れるようになる。
終盤までは大きな盛り上がりもなく淡々と進んでいくわけだけど、最終章。
松原と美山のやりとりにしびれました。
愚直なまでにまっすぐ。
村上はそんな生き方しかできないのかな?
対する美山はそれが是か非かはともかく、かわりゆく極道世界の先を見ている。
それでも村上を可愛がっていたころの想いはそのままで彼の家族を思案する美山。
気丈な母親と村上のやりとりもよかった。
この先の話がどう展開していくのか気になるところ。

内容(「BOOK」データベースより)

殺人の罪で服役後、幼少期から慕ってきた神侠会の美山勝治を頼りに、同会の松原宏和が率いる組に入った村上義一。栄達をひたすら目指すが、松原と美山の対立が起こり、微妙な立場に立たされる。守るべきは、組織の筋目か、己の義理か―。二つの道理の間で揺れながらも、極道の世界でまっすぐに生きようとする男を鮮烈に描いた、傑作長編小説。

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「名前探しの放課後 下」辻村深月(講談社文庫)



誰かのために一生懸命になれること。
誰かの言葉を信じられること。
そして、目の前のことに全力で取り組むことのできるひたむきさ。
伝わってくる登場人物一人一人の気持ちがとても心地よくて、暖かな気持ちになれる。
そんなストーリーでした。
自力では手に負えない部分は、無条件に甘えるのではなく、
対価として労働力を提供したうえで大人の手を借りているところも好印象。

読後の叫びはうまいなー、と、もったいないなーと、この二言に尽きました。
伏線の張り方とか、10代の子たち特有の人との繋がり方とか揺れる心理とか。
そういうのの描き方はとても上手いなーと思う。
もったいないのは……この本だけだと、多分最後に???ってなること。
『ぼくのメジャースプーン』を事前に読んでることが必要条件。
(できれば『凍りのくじら』も)
続編とかシリーズとか。そんなふうになっていれば親切なのになーと思います。

とはいえ。
とてもキレイに着地したなー、というお話でした☆


内容(「BOOK」データベースより)

坂崎あすなは、自殺してしまう「誰か」を依田いつかとともに探し続ける。ある日、あすなは自分の死亡記事を書き続ける河野という男子生徒に出会う。彼はクラスでいじめに遭っているらしい。見えない動機を抱える同級生。全員が容疑者だ。「俺がいた未来すごく暗かったんだ」二人はXデーを回避できるのか。

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「名前探しの放課後 上」 辻村深月(講談社文庫)




過去に抱えた傷やコンプレックス。
スクールカーストめいた歪んだ位置づけに基づく劣等感や、少し勘違いした優越感。
弱者と強者。凡人と優等生。陰湿ないじめ。
高校生の抱える心の惑いや揺らぎ、仲間意識。
そんな、10代特有の様々な想いが、リアルに伝わってくる。
辻村作品が胸に響くのは、そんな彼らの繊細な想いが理解できてしまうから。
「名前探しの放課後」
近い未来に自殺するであろう誰かを懸命に探すいつかたち。
今後の展開にドキドキしながら下巻を手にしています。(既読なんですけどね>笑)


内容(「BOOK」データベースより)

依田いつかが最初に感じた違和感は撤去されたはずの看板だった。「俺、もしかして過去に戻された?」動揺する中で浮かぶ一つの記憶。いつかは高校のクラスメートの坂崎あすなに相談を持ちかける。「今から俺たちの同級生が自殺する。でもそれが誰なのか思い出せないんだ」二人はその「誰か」を探し始める。

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