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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「天国はまだ遠く」瀬尾まい子(新潮文庫)



人生という果てのない航路を進むにあたって、
すべての物事が自分の思い通りになることはまずあり得ない。
壁にぶつかり、人間関係に悩み、こんなはずでは、という思いに窒息しそうになりながらも、
自分なりの人生を歩み続けていかなければいけないのだ。
そして、人生はささいなきっかかけで、マイナスにもプラスにも転換する。
自殺を決行するほど思いつめていた千鶴が人生の終焉を迎える場所を彼の地に選んだことで、
彼女の人生は好転する。
田村との出会い。
何処までも美しく、雄大な自然。
ゆったりと流れる時間の中で活力を取り戻した彼女は、自分のいるべき場所へと戻っていく。
だが、それはこの土地や田村との永遠の別離ではない。
こんな人生のリセットの仕方も悪くない。
そんなふうに思わせてくれる本でした。


内容(「BOOK」データベースより)

仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。

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「黒銹 ブラディ・ドール5」北方謙三(角川文庫)



【「じゃ、なぜ生きてるんだ?」「死なないからさ」】

他者の人生の幕引きを生業とする殺し屋。
惚れた女と共に堕ちることを選んだピアニスト。
闘う男たちの中に在って、堕ちていく女にただ寄り添うピアニストの存在は、
異質なものになってもおかしくはないはずなのに。
何故か彼の存在もまた、ブラディ・ドールの色にしっくりと染まっている。
それは、彼がただ流されて堕ちるのではなく、
自らの意志で堕ちることを選ぶ強さを秘めているからなのかもしれない。
彼もまた、闘っているのだ。
「坊や」から昇格したかと思った坂井を「小僧」扱いする殺し屋、叶。
ブラディ・ドールにまたひとり、魅力的な男が加わった。

内容(「BOOK」データベースより)

獲物を追って、この街へやってきた。そいつの人生に幕を引いてやる、それが仕事のはずだった。妙に気になるあの男と出会うまでは―。惚れた女がやりたいと思うことを、やらせてやりたい―たとえ、それが自分への裏切りだとしても―。あの男はそう言って銃口に立ちふさがった。それが優しさ?それが愛ってもんなのか?私を変えたあの日、裏切りを許せなかった遠い過去が心に疼く。殺し屋とピアニスト、危険な色を帯びて男の人生が交差する。ジャズの調べにのせて贈るブラディ・ドール、シリーズ第五弾。

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「羆嵐」吉村昭(新潮文庫)



【この男は本物のクマ撃ちなのだ、と区長は思った】

荒れ地を耕し、貧困に喘ぎながらも、移り住んだ土地で生活を営んでいた村人たちを襲った悲劇。
北海道開拓の苦難を知ると共に、太刀打ちできない羆という猛威への無力感、
そして、羆撃ちを生業とする男の孤独と寂寞を突きつけられた話だった。
日本最大の獣害。
男女を選り好んで食らう羆の生態には、底の知れない恐怖しか感じられない。
2日間で6人もの人を殺めた羆を仕留めた銀四朗が、何故ここまで孤独であらねばならぬのか。
彼の為人によるところもあるのだろうが、
「きさまらはずるい」という彼の叫びはあまりにも悲しかった。
ただの烏合の衆でしかなかった警察官や、猟銃保持者たち。
集団であるが故に誰かがなんとかしてくれる、という心理が働いたであろうことは否めない。
たったひとり、羆に対峙した銀次郎。
だが、彼は最期の瞬間まで羆撃ちだった。

内容(「BOOK」データベースより)

北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現!日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音…。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする、ドキュメンタリー長編。

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「秋霜 ブラディ・ドール4」北方謙三(角川文庫)



【いま、私はおまえの夢の中に現れた。そう思うことだ】

秋の霜。強固な意志。鋭く光る刀剣。
遠山の全てを込められた意味を持つタイトルが秀逸。
その男は画家だった。58年間、暴力には縁のない世界で生きてきた男。
だが、守り抜くと決めた女のために、闘うことを心に決める。
賭けるものは己の命。
見返りを求めることのない愛。
深いなぁ、と思った。遠山の想いが。

キドニーが心情を語るシーンはひどく切ない。
過去はやり直せない。
失ったものは取り戻せない。
それでも、男たちは、この街で生きていく。

葉巻を巡る海の男たちのやりとりが、あまりにも子供じみていて笑ってしまった。


内容紹介

人生の秋を迎えた画家がめぐり逢った若い女。過去も本名も知らない。何故追われるのかも。だが、男の情熱に女の過去が融けてゆく。”ブラディ・ドール”シリーズ第四弾! 再び熱き闘いの幕が開く。

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「肉迫 ブラディ・ドール3」北方謙三(角川文庫)



【死ぬときは死ぬさ。男ってやつはな。】

闘う理由は亡くした妻のため。娘のため。そして、友と認めた男のため。
そこに、打算も計算も損得勘定もない。
だからこそ、強く在れる。愚かしいほどまっすぐに、命をかけられる。
守りたい人のために。

己の在り方に揺るぎのない川中。
妨害や脅迫に屈せず、果敢に闘う秋山。
男としての成長の著しい坂井。
過去を背負い、今に生きる男たちの生き方に少しずつ感化されていく藤木。
そんな彼らと一線を画しつつも、寄り添うキドニー。
何とも不思議な魅力を持つ男たちが集う店、ブラディ・ドール。
男の窮地にただ震えるのではなく、共に闘える菜摘に、
同じ女としてエールを送りたい。


内容紹介

固い決意を胸に秘め、男は帰ってきた。港町N市――妻を殺された男には、闘うことしか残されていなかった。男の熱い血に引き寄せられていく女、”ブラディ・ドール”の男たち。シリーズ第三弾!

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「碑銘 ブラディ・ドール2」北方謙三(角川文庫)



【気になるやつとならないやつ。
 世の中にいるのは二種類の人間だけさ】

端的で簡潔な文章故なのか、情景がリアルに浮かんでくる。
波の音。酒の匂い。暴力。銃声。女。そして、なんとも魅力的な男たち。
刑務所帰りの24歳成人男子を「坊や」と呼びかけて様になる男はそうはいない。
一癖も二癖もある男たちが集う店、ブラディ・ドール。
自分を殺しに来た男と臆することなく殴りあい、
そして受け入れることのできる川中の漢気と懐の広さに、多くの男たちが魅了される。
手から手へと受け渡されるジッポ。
あぁ…と思うけど、感傷に浸るのは今ではない。
バーカウンターで辛口の酒が飲みたくなる本。
甘いカクテルはいらない。

内容(「BOOK」データベースより)

港町N市―市長を巻きこんだ抗争から2年半が経過した。生き残った酒場の経営者と支配人、敵側にまわった弁護士の間に、あらたな火種が燃えはじめた。そこに流れついた若い男。檻の中で過ごした2年間が男の胸に静かな殺意を抱かせていた。『さらば、荒野』につづく著者会心の“ブラディ・ドール”シリーズ第2弾!

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「さらば、荒野」北方謙三(角川文庫)



【「なにか、俺にできることは?」
 「ないね」
 「なにもか?」
 「ここから出て行ってくれりゃいい」】

満を持してのブラディ・ドール再読。
若干大げさな言い回しだけど、そんな気分。
シリーズ通しての評価は私の中では一作目が一番低いんだけど、
それでもくぅぅぅ、と、拳を握り、息を止め、胸をドキドキさせながら
次へ次へと頁を捲ってしまう世界が紙面に広がっています。
どこかからっぽで、何かが足りていなくて、色々なものを諦めていて。
それでも、男の矜持と熱い魂を本能で忘れてはいない男たちの世界。
この巻は、ブラディ・ドールのオーナー、川中良一を主軸に繰り広げられる、
壮大な物語の幕開けです。
ドキドキが収まってから、次巻へ……



冬は海からやって来る。静かにそれを見ていたかった。だが、友よ。人生を降りた者にも闘わねばならない時がある。夜。霧雨。酒場。本格ハードボイルド、“ブラディ・ドール”シリーズ開幕!(生江有二)

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「海の翼」秋月達郎(新人物文庫)



【人はひとりでは生きていけないということです。
 歴史もまた、おなじです。ひとりでは紡げません。
 人から人へ何事かが伝えられ、さらにまた人から人へ何事かが伝えらえる。
 歴史はそうしたことの積み重ねで成り立ってゆく。】

多種多様な情報が飛び交う現代の情報化社会において、
何故、自分を含め、こんなにも大事なことを知らない人がたくさんいるのだろう?と。
この本を読むまでは知らなかったトルコの人たちの思いに胸が熱くなりました。
イランイラク戦争で混乱を極めたイラン国内に取り残された在留日本人を救うための飛行機を、
日本の政府も民間の航空会社も飛ばすことができなかった。
だが、トルコ政府もトルコの国民も、日本の人々を救うために手を尽くしてくれた。
語り伝えられた100年前の出来事に対する恩義を忘れていなかったから。
ありがとう、と。
ただ、そんな思いに胸が震えて、涙が溢れて仕方がなかった。
絶対に忘れてはいけない大切なことがたくさんたくさん詰まった本でした。

内容(「BOOK」データベースより)

イラン・イラク戦争開始から五年後の一九八五年(昭和六十)三月七日、イラク軍は突如、三月十九日以降にイラン領空を飛ぶ航空機の無差別攻撃を宣言。自国機の乗り入れのなかった日本は、イラン国内に取り残された在留日本人の救出対策に苦慮する。タイムリミットが迫るなか、日本人の苦境を知って、救援に動いた国があった…。このトルコ政府の英断の裏には、明治二十三年(一八九〇)九月、日本訪問から帰国中に紀州沖で台風にまきこまれたトルコ軍艦エルトゥールル号遭難の悲劇があった―。百年の時空を超えた“恩返し”を描いた感動の書き下ろし長篇大作。

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「武装酒場」樋口明雄(ハルキ文庫)



【おれの奢りだ。好き勝手やりな】

笑いすぎてお腹痛い……
たかが酔っ払い。されど酔っ払い。
それぞれに事情を抱えた居酒屋「善次郎」の常連客達。
その日店に足を運んだ彼らは、ほんの些細なきっかけにより、
拳銃、手榴弾、果ては不発弾を抱えた立てこもり事件を引き起こしてしまう。
(本人たちに自覚なし)
「奴らはなぜそんなことを!?」叫ぶ警察。
だが、酔っぱらいの心理は論理的には説明がつくものではなくて……
「飲んで騒ぐことじゃないですか?」
冷静な返しがいたたまれない(苦笑)
すべてを引き受けた店主、善次郎の漢気が果てしなくかっこよすぎる。
そして7年後……
いやぁ、ホント笑った。無条件に面白い本だったわ。


内容(「BOOK」データベースより)

阿佐ヶ谷のガード下にある居酒屋「善次郎」。妻を絞め殺したと思いこんだ男、借金の取り立てから追われる男、その他、様々な窮地に立たされた常連客たちが、己の苦境から現実逃避するために、偶然この店に集まってしまった。一方、別の事件で警察が「善次郎」の向かいの店にパトカーで出動。サイレンの音を聞いた常連客たちは、それぞれが自分を捕まえにきたと思いこみ、事態は立て篭もり事件にエスカレートしてしまうのだが…。抱腹絶倒のスラップスティック小説の金寺塔、待望の文庫化。

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「デッド・オア・アライヴ」薬丸岳他(講談社文庫)



同じ時間、同じ場所を舞台にした、生死の危機をテーマにした7人の作家によるアンソロジー。
実はアンソロという形態自体が初読みだったわけですが、
作品同士がさりげなくリンクしていたり、ホテルの写真をふんだんに使った装丁だったり
アンソロならではのお楽しみがあったことと、
初読みの作家さんでほかの作品も!と思える方に出会えたりと、色々な意味で面白い本でした。
もちろん作品自体も十分に楽しませていただきました!
薬丸作品は人の心理の描き方がやるせない。夏目の優しさは相変わらず。
竹吉作品はおじ様の立ち回りが痛快で素敵。
高野作品は歴史をうまくなぞっての着地点はお見事。
鏑木作品はなんていうか……秀逸。ドキドキしながら読みました。


内容(「BOOK」データベースより)

7人の江戸川乱歩賞作家への挑戦状。「2013年9月7日正午。主要人物が帝国ホテルにいる短編ミステリーを執筆せよ。テーマはデッド・オア・アライヴ、生死の危機」。挑むは薬丸岳、竹吉優輔、高野史緒、横関大、遠藤武文、翔田寛、鏑木蓮。命懸けの謎に溢れたこの世界は天国か地獄か。豪華競作アンソロジー!

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