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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「悪の経典 下」貴志祐介(文春文庫)



中学生の時の殺人は看破され、アメリカでの悪事も露呈した。
ばれてますよ?イロイロ。
自分が思っているほど完璧でも天才でもないことに、気づかないお馬鹿さん。
そんな蓮実の犠牲になった人たちに対しては、言葉もありません。
ギリギリのところで生き延びた雄一郎と怜花。
でも、彼らが心から笑える日が来るのはいつだろう?
蓮実には共感も同調もできなくていいし、そもそも彼には感情が欠落しているから
こちらの感情が揺さぶられるわけもない。
極限状態の中にあっても、自分が助かる道を探るためにクラスメイトを犠牲にした渡会の方が
その心理がわからなくもないだけに、嫌な気分にさせられた気がする。
以下辛口。

せっかく読んだけど、残念なくらい読後に何も残らない話でした(苦笑)


内容(「BOOK」データベースより)

圧倒的人気を誇る教師、ハスミンこと蓮実聖司は問題解決のために裏で巧妙な細工と犯罪を重ねていた。三人の生徒が蓮実の真の貌に気づくが時すでに遅く、学園祭の準備に集まったクラスを襲う、血塗られた恐怖の一夜。蓮実による狂気の殺戮が始まった!ミステリー界の話題を攫った超弩級エンターテインメント。

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「悪の経典 上」貴志祐介(文春文庫)



蓮見の殺人の動機は、我儘を押し通す子供のような幼稚な思考に基づいている。
気に入らないものは排除してしまえばいい。
邪魔になるものは壊して捨ててしまえばいい。
そうして思いついた殺人を実行出来るだけの知能と幸運を備えていたことが、
巻込まれた人たちにとっての不幸だった。
蓮見の築き上げようとしている王国は、いびつに歪んだ砂の城。
一見、完璧に積み上げられているようでも、生じた綻びから一気に瓦解する脆さを持っている。
既に彼の異質さに気付いている人たちがいる。
彼の小さな王国はこの先どうなるのか?
とりあえず次巻へ。

表紙のカラス。
何かの象徴なのかしら?と思ったら、まさかあんな目にあわされているとは(ФωФ)!

内容(「BOOK」データベースより)

晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき―。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。

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「機龍警察 自爆条項 下」月村了衛(ハヤカワ文庫JA)



すべてを失ってしまってはじめて気づく幸せ。守られていた自分。
けれども、一度血塗れた道を歩み始めてしまったからには、後戻りはできない。
それも、自らの意志であり、選択である。
戦いつづける日々に安寧はない。
だが、今のライザは孤独であったとしても、独りではない。
特殊な立場にある姿、ユーリ、ライザ。
そんな自分たちを仲間であり仲間でない、と、自問するユーリ。
「俺たちを撃てるか?」とユーリに問われ「撃つ」と躊躇いなく答えるその口で、
珈琲のおかわりを訪ねる姿の抱える闇も、相当に深い。

警察内部に巣食う実態のつかめない「敵」は、確実に身近にいる。
ドロリとした不穏な気配を拭えぬまま、次作へ。
警察官の誇りを貫こうとしている特捜部のみんなの努力が真に報われる日が来るといい。

それにしても……
副題の「自爆条項」の意味が明らかになった時は思わずうなるしかなかった。


内容(「BOOK」データベースより)

ライザ・ラードナー、警視庁特捜部付警部。そして元テロリスト。自らの犯した罪ゆえに彼女は永遠の裏切り者となった。イギリス高官暗殺と同時に彼女の処刑を狙うIRFには“第三の目的”があるという。特捜部の必死の捜査も虚しく国家を越える憎悪の闇が遂に見せる最後の顔。自縄自縛の運命の罠にライザはあえてその身を投じる。過去と現在の怨念が東京迷宮で狂おしく交錯する“至近未来”警察小説、慟哭と死闘の第二弾。

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「機龍警察 自爆条項 上」月村了衛(ハヤカワ文庫JA)



【愛国者であるということと、誇りを抱いて生きるということはまた別だ】

日本警察に中国黒社会、そしてアイルランドのテロ組織。
過去と現在を織り交ぜながら語られる物語に強烈に引きつけられる。
事件を描きながらも、相変わらず「人間」が深く掘り下げて描かれているのがいい。
それぞれが抱えた想いがあり、柵がある。
だから彼らに寄り添える。
日本警察に属する<傭兵>ライザの過去が、息が詰まるほどに重い。
血筋だけで投げつけられてきた侮蔑や憎悪。
だが、窮屈で生き辛い環境に身を置きながら、父は叫ぶ。
「ライザには自由が必要だ」と。
息苦しいその世界での生が、彼は自由だという。
真実を知り得ることが自由だと感じたライザが飛び込んだ世界で何を見たのか。
この巻では語られてはいない。

事件を巡っての駆け引きや腹の探り合いも相当おもしろい。
そして前作の延長に今作がある。
最後の沖津の言葉に捜査員たちと同じように総毛立ちながら、下巻へ。
ものすごいわくわくする。

内容(「BOOK」データベースより)

軍用有人兵器・機甲兵装の密輸事案を捜査する警視庁特捜部は、北アイルランドのテロ組織IRFによるイギリス高官暗殺計画を察知した。だが特捜部には不可解な捜査中止命令が。首相官邸、警察庁、外務省、そして、中国黒社会の暗闘。やがて、特捜部の“傭兵”ライザ・ラードナー警部の凄絶な過去が浮かび上がる。世界標準のスケールと圧倒的リアリティを持ち極限にまで進化した“至近未来”警察小説、戦慄と驚愕の第二弾。

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「流れ星が消えないうちに」橋本紡(新潮文庫)



とても綺麗な喪失と再生……というより、喪失と新しい始まりの物語。
加地と奈緒子と巧とで描かれた三角形。
それは加地が生きている時も亡くなった後も変わらない形。
加地の死という辛く悲しい出来事はあったけれども、
彼らの描く三角形が、とてもかわいらしくて微笑ましかった。
流れ星に願った巧の願い事になんだかきゅんとた。
若者独特の感性を、綺麗に書かれているなーという印象。
個人的には父の悩みと、母との関係がとっても気になるところ。
お父さんの夢へのチャレンジ権、是非与えてあげて欲しいなぁ……
彼らと同じ年代の頃に読んだら、より色々な揺さぶられ方をしたんだと思う。

内容(「BOOK」データベースより)

忘れない、忘れられない。あの笑顔を。一緒に過ごした時間の輝きを。そして流れ星にかけた願いを―。高校で出会った、加地君と巧君と奈緒子。けれど突然の事故が、恋人同士だった奈緒子と加地君を、永遠に引き離した。加地君の思い出を抱きしめて離さない奈緒子に、巧君はそっと手を差し伸べるが…。悲しみの果てで向かい合う心と心。せつなさあふれる、恋愛小説の新しい名作。

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「機龍警察」月村了衛(ハヤカワ文庫JA)



久々に、読みながら血がざわざわするくらい面白かった。
至近未来警察小説と称されているけれども、
事件を通して「人、或は人生」と「警察組織」がきっちりと描かれた物語。
それぞれの生き様、歩いてきた人生、価値観、任務に対する想い。
そういったものがちゃんと伝わってくる。
だから彼らの言葉に重みがある。そして時に切ない。
見栄とプライドと同族意識とに雁字搦めになって
捜査の邪魔にしかなっていない警官が滑稽でもどかしい。
全体的にはプロローグ的な物語。
警察組織の中に潜む闇は明らかにされていないまま続編へ。
個性的な彼らに早く会いたくて。
速攻注文してしまいました(笑)

内容(「BOOK」データベースより)

大量破壊兵器の衰退に伴い台頭した近接戦闘兵器体系・機甲兵装。『龍機兵』と呼ばれる新型機を導入した警視庁特捜部は、その搭乗要員として姿俊之ら3人の傭兵と契約した。閉鎖的な警察組織内に大きな軋轢をもたらした彼らは、密造機甲兵装による立て篭もり事件の現場で、SATと激しく対立する。だが、事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた…“至近未来”警察小説を描く実力派脚本家の小説デビュー作。

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「黄昏の岸 暁の天」小野不由美(新潮文庫)



「天は何故民を助けてくれないのか?」と叫んだ李斎。
「人は自らを救うしかない」と静かに語った陽子。
そして「天をあてにしてどうする?」と言った泰麒の言葉に、
王と麒麟、そして民の決定的な違いを見た気がした。
運命とは自らの手で切り開くもの。
他者に依存し、祈り縋るだけでは何事も動かすことはできない。
厳しいことを突きつけられるけれども、真理だと思う。
安住の地を飛び立った泰麒と李斎の苦難の道の先に光明があることを願います。
各国の重鎮会議の様相を呈していた本巻。
天敵とみなす氾王と延王のとぼけた掛け合いが個人的に楽しかった。

子どもは大人の言葉をきちんと聞いている。
だから、わからないだろう、と、侮ってはいけないし、
都合のいいことだけを伝えてごまかして、真実から遠ざけてはいけない。
泰麒を麒麟として、国の台輔としてみなすのであれば、
宮中の大人たちは真実を知らせなければいけなかったのだと思う。

内容(「BOOK」データベースより)

驍宗が玉座に就いて半年、戴国は疾風の勢いで再興に向かう。しかし反乱鎮圧に赴いた王は戻らず、届いた凶報に衝撃を受けた泰麒も忽然と姿を消した。王と麒麟を失い、荒廃へと向かう国を案じる将軍は、命を賭して慶国を訪れ、援助を求める。戴国を救いたい―景王陽子の願いに諸国の麒麟たちが集う。はたして泰麒の行方は。

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「華胥の幽夢」小野不由美(新潮文庫)



それぞれの国の在り様、そして王の在り様が描かれた短編集。
重責から逃れることなく、言い訳を断ち切り、それが、前王を討った自らの責任であると。
苦悩し、葛藤した末に、施政者であることを決意するまでの月渓の在り様がたまらなく好き。
一方、砥尚の孤独には息が詰まりそうになった。
現実から目を背け、華胥華朶に夢を見た彼らの危うさが痛々しい。
理想を掲げる事、誰かを責める事はたやすい。
ならば、理想を具現化するためにどうすればよいのか、
或は責めた誰かに成り変わって何ができるのか。
問われて答えられることのできるものは、果たして如何ほどか。
答えられないものは同罪だということに、誰もが気づかなかった。
結局は道を誤ったけれども、砥尚は最期まで王だった。
泰麒、楽俊、延王と利広。
彼らの物語には気持ちがほっとしました。

内容(「BOOK」データベースより)

王は夢を叶えてくれるはず。だが。才国の宝重である華胥華朶を枕辺に眠れば、理想の国を夢に見せてくれるという。しかし采麟は病に伏した。麒麟が斃れることは国の終焉を意味するが、才国の命運は―「華胥」。雪深い戴国の王・驍宗が、泰麒を旅立たせ、見せた世界は―「冬栄」。そして、景王陽子が楽俊への手紙に認めた希いとは―「書簡」ほか、王の理想を描く全5編。「十二国記」完全版・Episode 7。

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「丕諸の鳥」小野不由美(新潮文庫)



国の礎を担うのは民である、ということを改めて痛感させられた4編。
王が不在でも、国が荒廃しても、そこで生活を営まなければいけない民がいる。
そんな彼らが国を案じ、己にできることを必死でやり遂げようとする様に、胸を打たれる。
「丕諸の鳥」情景描写が溜息が零れるほど見事だった。
未来を諦めないでほしい。ここに人々の心の叫びを汲み取れる王がいるのだから。
「落照の獄」読後の苦い思いを形容する言葉がみつからない。
「青条の蘭」災害を食い止めようと王宮を目指してひたすらに走り続けた標仲。
動けなくなった彼の代わりに人々の手から手へと青条が託されていく様には涙が滲んだ。
苦悩や絶望の中にあっても、希望の光が決して潰えてはいないことを示してくれた物語だった。


内容(「BOOK」データベースより)

「希望」を信じて、男は覚悟する。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒は、国の理想を表す任の重さに苦慮していた。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか―表題作ほか、己の役割を全うすべく煩悶し、一途に走る名も無き男たちの清廉なる生き様を描く全4編収録。

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「ハサミ男」殊能将之(講談社文庫)



タイトルが秀逸。
ハサミ男がハサミ男に出会い、これで事態は終息へ……とは向かわず、
さらに新たな展開へ。
真剣な人の気持ちを弄んだり、試したりしちゃいけないよ、と思いつつ、
だからってそれが殺される理由にはならない。
逆に殺す言い訳にもならない。
そんな理由で!?と思った瞬間、ハサミ男も同じことを叫んでたよ。
とはいえ、そう言ったハサミ男に正当な理由があるわけでもない。
そんなんでも理由のある殺人は、まったく理由のない殺人よりは人間らしい気がした。
実はしっかりと仕事をしていた警察の皆々様。
捜査ってそうやって行われていくのねー、と、感心しつつも、ラスト、思いは複雑でした。

内容(「BOOK」データベースより)

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。

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