きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2015.03.24 「三匹のおっさんふたたび」有川浩(新潮文庫)
- 2015.03.18 「僕はここにいる」飯田雪子(ホワイトハート)
- 2015.03.16 「皆月」花村萬月(講談社文庫)
- 2015.03.13 「向こう側の遊園」初野晴(講談社文庫)
- 2015.03.08 「ジェファーソンの密約 上」ジェームス・ロリンズ(竹書房文庫)
- 2015.03.03 「死命」薬丸岳(文春文庫)
- 2015.03.01 「高熱隧道」吉村昭(新潮文庫)
- 2015.02.26 「フォー・ユア・プレジャー」柴田よしき(講談社文庫)
- 2015.02.23 「フォー・ディア・ライフ」柴田よしき(講談社文庫)
- 2015.02.21 「時のアラベスク」服部まゆみ(角川文庫)
「三匹のおっさんふたたび」有川浩(新潮文庫)
それぞれの家族との係わり方が印象に残ったシリーズ第二弾。
パート先で苦労をしていることを察しながらも敢えて口にせず、
さりげない気遣いをしながら、貴子の初めてのお給料で買ったケーキで、
家族で食卓を囲むシーンは、素敵だなぁ、と思った。
清一からまだいろんなことを学びたいと思い、健一のことを見直す祐希。
重雄のことをカッコいいと思う康生。
まだ則夫のそばにいたいと子供のようにダダをこねた早苗。
言葉にしてもしなくても、家族がきちんと向き合って、
生活をしているその姿には、地に足がついた安心感がある。
起きる事件は身近なもので、それ故に怖さややりきれない思いを抱かされた。
そんな中、書店主の井脇が万引きをした中学生たちに真摯に向き合ったその姿勢は
ちょっと感動しました。
向き合った相手がきちんと反省できる子でよかった。
内容(「BOOK」データベースより)
剣道の達人キヨ、武闘派の柔道家シゲ、危ない頭脳派ノリ。あの三人が帰ってきた!書店での万引き、ゴミの不法投棄、連続する不審火…。ご町内の悪を正すため、ふたたび“三匹”が立ち上がる。清田家の嫁は金銭トラブルに巻き込まれ、シゲの息子はお祭り復活に奔走。ノリにはお見合い話が舞い込み、おまけに“偽三匹”まで登場して大騒動!ますます快調、大人気シリーズ第二弾。
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「僕はここにいる」飯田雪子(ホワイトハート)
【これからもずっと、僕はここにいる】
綺麗で純粋でちょっと切ないお伽噺。
不思議な瓶の音に導かれて出会ったのは、透明で優しい雰囲気をまとった彼だった。
逢うたびに彼に惹かれ、淡い想いを抱いていく涼香だったけれども。
いつしか彼女は気づいていく。
それは抱えきれない哀しみが引き寄せた出逢いであることを。
前に進むためには彼とはもう二度と会えない、会ってはいけないのだということを。
だけど、その出逢いは涼香にとっては必要なものだった。
人生に立ち向かっていくために。
いつだって笑っていられるために。
ぼくはずっとここにいる。
泣き顔しか見せなかった彼に、とびきりの笑顔を。
内容(「BOOK」データベースより)
はじまりは、瓶の音だった。夜の庭に響く、聞こえるはずのない音。中一の春。新しい町で幸せに過ごしていくはずだったのに、いつしか家の中には険悪な空気が流れ、そしてある夜、それは哀しい空気へと変わってしまった。なす術もなく立ちつくすあたしの前に現れた、不思議な雰囲気をもつ人。彼が教えてくれたことは…。心に染みる、せつなく美しいファンタジー。
「皆月」花村萬月(講談社文庫)
【ふつうの生活をしていると、そこまでするかって思うけど、
渦中にいると、何も見えなくなってしまのよ】
一千万円の貯金を奪われ、突如として妻に捨てられた諏訪徳雄。
沙夜子の元夫である彼は、アキラの兄貴であり、由美のオッサンであり、
我孫子たちのおとうさんだった。
これは再生の物語。
諏訪は男として、由美は女として、そしてアキラは人間として。
人生に躓いた人たちが互いに支えあいながら、前に進む物語。
アキラの無邪気さと純粋さ、そしてまっすぐさは人を守る最強の盾であり、
時に人を死に至らしめる最凶の鉾でもある。
大人になりきれない淋しさと孤独が見え隠れする彼はどこか不憫で憎めない。
だからと言って人を殺していいということにはもちろんならないけどねww
居場所を作って待っていてくれる人ができて、ホント、良かった。
必死でがんばった由美の頭を私も撫でてあげたいなぁ、と思いました。
内容(「BOOK」データベースより)
諏訪徳雄は、コンピュータおたくの四十男。ある日突然、妻の沙夜子がコツコツ貯めた一千万円の貯金とともに蒸発してしまった。人生に躓き挫折した夫、妻も仕事も金も希望も、すべて失った中年男を救うのは、ヤクザ者の義弟とソープ嬢!?胸を打ち、魂を震わせる「再生」の物語。吉川英治文学新人賞受賞作品。
「向こう側の遊園」初野晴(講談社文庫)
花々が咲き乱れる廃園となった遊園地。
月明かりに照らされる夜に、彼岸と此岸の境界は曖昧になり、
動物たちの最後を看取る青年に巡り合える。
初野さんらしい、優しさと厳しさを備えた話。
語られる言葉の断片に、時に胸を抉られる。
生と死。
どんな命にも、生きてきた年数分の物語と想いが刻まれる。
人の想いですら理解に苦しむ人という存在が、
動物たちの最期にどんな想いを託すのか。
或は。
何を願うのか。
それぞれの章から投げかけられる問はどこまでも真摯で重い。
蒼い光を投げかける月の光。
匂いたつ数多の花の香り。
終末の物語の中に在って、唯一語られる再生の物語。
彼らに、光ある未来を。
内容(「BOOK」データベースより)
花々が咲き乱れる廃園となった遊園地。そこには、謎めいた青年が守る秘密の動物霊園があるという。「自分が一番大切にしているものを差し出せば、ペットを葬ってくれる」との噂を聞いて訪れる人人。せめて最期の言葉を交わせたら…。ひとと動物との切ない愛を紡いだミステリー。
「ジェファーソンの密約 上」ジェームス・ロリンズ(竹書房文庫)
【普通ならこのようなことは起こらない。
だが、ここで発生している事態は、どこからどう見ても普通じゃないんだよ】
発見されたジェファーソンの書簡。
先住民たちの間に囁かれた、恐るべき言い伝え。
シンクロする過去の悲劇と現在の悲劇。
建国当時からの存在を匂わせる、謎の組織ギルド。
少しずつ紐解かれていく歴史の闇の中に隠された真実。
さらには、世界中で連鎖するニュートリノの放出との関連は?
多くの謎にぐいぐい引き込まれながら、一気に読み。
今回はアメリカが舞台。そして、日本のカミオカンデもちょっとしたご活躍。
緊迫した場面でも、コワルスキ―は相変わらず癒しだわ。
グレイとセイチャンの間の緊張感がなんだかいたたまれない。
でも、これまでのことを顧みればどうしようもないよね。
さて。
地球規模の危機的状況に直面した物語。
どんな結末を迎えるのかは次巻へ。
内容(「BOOK」データベースより)
アメリカ・ユタ州山間部の洞窟で謎の爆発が起こった。現場の大地や岩盤は細かい砂と化し、火山の噴火を誘発してしまう。シグマフォースのペインター・クロウ司令官は、現場に居合わせたハンク・カノシュ教授らとともに、爆発の謎を追う。同じ頃、シグマのグレイ・ピアース隊長と女暗殺者セイチャンは、テロ組織ギルドの手がかりを求めて国立公文書記録管理局に向かっていた。トーマス・ジェファーソンら建国の父たちとアメリカ先住民との間の密約とは?「十四番目の植民地」とは?「大いなる秘薬」とは?それらは爆発と、ギルドの起源と、関係があるのだろうか?ニュートリノの謎の放出と、トーマス・ジェファーソンの書簡の内容を手がかりに、グレイたちはアイスランド沖合の島へと向かう。
「死命」薬丸岳(文春文庫)
【今まで家族のことを大切に思ってきた。
だが、大切にしてきたかと問われれば、自信がない】
抑えに抑えていた殺人衝動が解き放たれたきっかけが余命宣告。
そのおかげで新しい世界に踏み込めたと語る榊。
その言葉に、彼の三十三年の空虚さを突きつけられたようで、苦い思いが込み上げる。
解放された魂は殺人という行為によって至上の快楽を貪るのだけれども。
人生を奪われた彼女たちにとってはたまったものではないだろう。
到底許される所業ではない。
奇しくも同じ病で余命幾許もないことを知らされた殺人犯と刑事。
追う者と追われる者が対峙したその空間で、蒼井が榊についた嘘。
それは榊にとって天使の囁きか、悪魔の囀りか。
どの瞬間に命が尽きても、悔いはあるだろう。
家族や仲間に見守られて眠りにつけた蒼井は幸せだったのだと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
若くしてデイトレードで成功しながら、自身に秘められた女性への殺人衝動に悩む榊信一。ある日、余命僅かと宣告され、欲望に忠実に生きることを決意する。それは連続殺人の始まりだった。元恋人の澄乃との皮肉な再会。犯人逮捕に執念を燃やす刑事・蒼井にも同じ病が襲いかかり、事件の展開は衝撃の結末を―。
「高熱隧道」吉村昭(新潮文庫)
【なぜ人間は、多くの犠牲をはらいながらも
自然への戦いをつづけるのだろう?】
昭和11年に始まった黒部第三発電所建設工事は、
場所によっては165度の岩盤温度を記録する高熱地帯を掘り進まなければならい
過酷な大工事だった。
完成までの4年の間に失った命は300名を超える。
劣悪に過ぎる環境下で偉業を成し遂げた作業員たちに笑顔はなく、
疲れ果てた彼らのやり場のない憎しみを向けられた、現場を指揮した者たちは、
逃げるようにその場を立ち去っていく。
そこに達成感や充足感はなく、虚しさともの悲しさが胸の内を侵食する。
係わった人たちをそれだけの極限に追い込む危険を伴う作業だったことが
淡々と綴られる文章から伝わってくる。
それでも、続けられた隧道工事。
その時代にあれだけのトンネルを貫通させた人々には畏敬の念を抱かずにはいられない。
いまの日本の礎の一端を、間違いなく彼らも担っている。
今から80年近く前の技術の進捗も自然現象の解析も地質調査も
今とは比べ物にならない時代に
これだけの工事をやり遂げた人々がいるということに心が震えます。
泡雪崩が建物をあたかも消失したかのようにごっそりと吹き飛ばす、という事象には絶句。
自然の恐ろしさを改めて思い知らされました。
内容(「Amazon」より)
黒部第三発電所――昭和11年8月着工、昭和15年11月完工。人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。犠牲者は300余名を数えた。トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学。
「フォー・ユア・プレジャー」柴田よしき(講談社文庫)
【人生には、絶対に他人には任せられない選択をしなくてはいけない時が、
一度や二度はくるもんだ】
副業での人探からはじまった、ハナちゃんを見舞った災厄の数々。
恋人の失踪、殺人事件、薬絡みの大捕り物。
そして自分と友人の命の期限が切られた24時間。
スピード感あふれる展開にドキドキワクワクしながら頁を捲りました。
どこまでも泥臭く立ち回り、人間味に溢れているハナちゃんは魅力的。
だからみんな放っておけない。
合間合間で語られる日本の保育園事情は真剣に考えさせられました。
こんなに前から取りざたされていることが、今でもあまり改善されていない現状。
個人的には笑い上戸の麻取、逸見の存在がツボ。
人を食った感じがたまらなくいい。
もちろん練には及びませんが☆
内容(「BOOK」データベースより)
無認可保育園の園長兼私立探偵・花咲慎一郎。彼に持ち込まれた人探しは、やがてクスリがらみの危険な仕事に発展する。その上、最愛の女性・理紗が行方不明に…。次々に襲いかかる無理難題と戦う心優しいハードボイルド探偵に、明日はあるのか!?読み始めたら止まらない傑作シリーズ第2弾。
「フォー・ディア・ライフ」柴田よしき(講談社文庫)
【愛はいつだってうまく行かない。いろんな人生を狂わせる。】
愛する人を守りたい。大切な人を守りたい。家族を守りたい。
そんな切なる想いに端を発した出来事が、多くの人々の人生を狂わせる。
園長業と探偵業。
二足のわらじで大都会で途方に暮れる人々のために奔走する
ハナちゃんの一生懸命さにエールを送りたくなる。
鬼籍に入った韮崎の影は色濃く、奈美も練も今なお彼を介してつながっている。
奈美の生き様は女子としてカッコいいと思う。
そして悪魔と言われながらも危うさを垣間見せる練のことが気になって仕方がない。
小さな子供がさらに小さな子供たちを守るためにヒッチハイクに出るシーンは
本当にいたたまれない。
ハナちゃんが命を担保に守った場所で、子供たちが安らげることを希う。
内容(「BOOK」データベースより)
新宿二丁目で無認可だが最高にあったかい保育園を営む男・花咲慎一郎、通称ハナちゃん。慢性的に資金不足な園のため金になるヤバイ仕事も引き受ける探偵業も兼ねている。ガキを助け、家出娘を探すうちに巻きこまれた事件の真相は、あまりにも切なかった…。稀代のストーリーテラーが描く極上の探偵物語。
「時のアラベスク」服部まゆみ(角川文庫)
そしてすべての真実が闇の中に葬られるのだとするならば。
殺された人たちはあまりにも救われない。
殺人事件が起きたというのに、危機感のなさすぎる人々の対応。
探られたくない腹を抱えていたからこそ、警察の介入を忌避した慶。
だが、彼の主張を通した人たちもまた、同罪だ。
推測の域を出ない無責任な言葉が、新たな悲劇を生む。
春美の無神経に過ぎる言動も相乗効果になって、
途中までひどくイライラしながら読み進めていたのだけれども。
亮が気づいた真実。千秋の語った真実。そして当事者たちからの手紙。
真実が解き明かされていく最後の展開にはぐっと引きつけられてしまった。
ロンドン、ブリュージュ、そしてパリ。
憂鬱そうな空の下の異国の地に、降り立ってみたい。
そんな想いに駆られる読後でした。
内容(「BOOK」データベースより)
東京、冬。出版記念会の席上に届けられた一本の真紅の薔薇から、惨劇の幕が開く。舞台は、ロンドン、ブリュージュ、パリを経て、再び東京の冬へ。相次いで奇怪な事件が続発し、事態は混迷の度を深めていく。精緻な文体と巧妙なトリックを駆使して、人生の虚飾と愛憎を描く、本格長編推理。第七回、横溝正史賞受賞作。