きままに読書★
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カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2015.05.08 「一瞬の風になれ 第三部」佐藤多佳子(講談社文庫)
- 2015.05.06 「一瞬の風になれ 第二部」佐藤多佳子(講談社文庫)
- 2015.05.05 「一瞬の風になれ 第一部」佐藤多佳子(講談社文庫)
- 2015.05.04 「遺体」石井光太(新潮社)
- 2015.05.02 「虐殺器官[新版]」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
- 2015.04.27 「黒警」月村了衛(朝日新聞出版社)
- 2015.04.25 「夏の吐息」小池真理子(講談社文庫)
- 2015.04.23 「ワーキング・ホリデー」坂木司(文春文庫)
- 2015.04.22 「デルフィニア戦記18 遥かなる星の流れに・下」茅田砂胡(C・NOVELS)
- 2015.04.21 「デルフィニア戦記17 遥かなる星の流れに・上」茅田砂胡(C・NOVELS)
「一瞬の風になれ 第三部」佐藤多佳子(講談社文庫)
【人生は、世界は、リレーそのものだな。
バトンを渡して、人とつながっていける。】
青空の下を全力で駆け抜けたような爽快感。
読後に胸を満たすのはそんな感情です。
新二がいたから陸上を続けることができた連。
連がいたからより速く走ることができた新二。
親友でライバル。そしてかけがえのない仲間。
一緒に走ることが楽しくて。とても楽しくて。
だからこそ、負けたくはないし、相手より前を走っていたい。
勝負に無頓着だった連が「勝ちたい」という意欲を貪欲に示すようになっていく様子に、
そして、常に速さを希求し続けた新二に、頁を捲る私の方もわくわくした。
彼らはどこまで風に近づくことができるのだろう?と。
途中彼らと一緒に泣きながらも、楽しく読み切った小説でした。
全力で何かに打ち込むことの素晴らしさを改めて思いました。
あのひたむきさ、私の中にもまだあるかな?
内容(「BOOK」データベースより)
いよいよ始まる。最後の学年、最後の戦いが。100m、県2位の連と4位の俺。「問題児」でもある新人生も加わった。部長として短距離走者として、春高初の400mリレーでのインターハイ出場を目指す。「1本、1本、走るだけだ。全力で」。最高の走りで、最高のバトンをしよう―。白熱の完結編。
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「一瞬の風になれ 第二部」佐藤多佳子(講談社文庫)
【でも、もう、降りることのできない山を登っているのだと思った。
仲間たちと。苦しさと喜びをともに。】
今日と同じ走りを再現することはできない。
すべては、一回きりの走りだ。
だからこそ、その一回がとても大切で、その瞬間にすべてを賭ける。
その一瞬に、様々な想いをぶつけ、感情を揺さぶられ、責任を感じ、
悔しさを噛みしめて、喜びに沸く。
試合で勝てない自分を思い描いたとしても、
明日走ることの出来なくなる自分を思い描いている者はいないだろう。
守屋のために連のみせたこだわりと本気。
健一の怪我がきっかけでぶつけ合う悲鳴のような言葉。
離れようとした部に再び戻っていく新二の姿。連の言葉。
後半は本当に涙が溢れて仕方がなかった。
次巻は「走りたい」という想いを再び胸にいた新二たちの最後の学年の物語。
ドキドキします。
内容(「BOOK」データベースより)
オフ・シーズン。強豪校・鷲谷との合宿が始まる。この合宿が終われば、二年生になる。新入生も入ってくる。そして、新しいチームで、新しいヨンケイを走る!「努力の分だけ結果が出るわけじゃない。だけど何もしなかったらまったく結果は出ない」。まずは南関東へ―。新二との連の第二シーズンが始まる。吉川英治文学新人賞、本屋大賞ダブル受賞。
「一瞬の風になれ 第一部」佐藤多佳子(講談社文庫)
【神様にもらったものを粗末にするな。
もらえなかったヤツらのことを一度でもいいから考えてみろ】
共に戦う仲間がいるからこそ、そして、
絶対に負けたくない相手がいるからこそ、更なる速さを目指して頑張れる。
憧れるだけではなく、いつかは彼以上のスピードで走りたいと、希う。
部活に対する姿勢の温度差でぶつかりあいながらも、
次第にチームとしてまとまっていく姿。
他校の選手たちと試合ごとに顔見知りになり、言葉を交わしていく姿。
指導者に対する反発
恋愛事でのもやもや。
家のこと、犬のこと、家族のこと、兄弟のこと。
どれをとっても、10代のその瞬間でしか味わうことのできない感性が滲んでいて、
読んでいて清々しい気持ちになれました。
彼らの成長が楽しみ。
三年間部活としてかかわった陸上部。
フィールドの雰囲気、スタート前の緊張感、先輩への憧れ、限界を認識した時の悔しさ。
等々を懐かしく思い出しました。
内容(「BOOK」データベースより)
春野台高校陸上部、一年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感…。ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。青春陸上小説、第一部、スタート。
「遺体」石井光太(新潮社)
津波で亡くなった一人でも多くの方々を家族の元へ帰そうと、
そして、土葬が検討される中、何とか火葬して供養できるようにと、
一心不乱に努力した数多くの方々へのインタビューをまとめたルポルタージュ。
遺体を丁寧に扱い、語りかけ、身元を示すものを見つけ出そうと、
懸命に努力する数多の人たち。
一人一人がそれぞれの立場で今の自分にできることを。
模索しながら十分すぎる程心血を注いでいるにもかかわらず、
それでも、他にもっとなにかできることが、と、自らに問う姿勢に胸を打たれた。
津波に流されて建物が何もなくなった土地に、
穏やかな日差しが降りかかる光景を見た時、涙が溢れて仕方がなかった。
内容(「BOOK」データベースより)
あの日、3月11日。三陸の港町釜石は海の底に沈んだ。安置所に運び込まれる多くの遺体。遺された者たちは懸命に身元確認作業にのぞむ。幼い我が子が眼前で津波にのまれた母親。冷たくなった友人…。悲しみの底に引きずり込まれそうになりながらも、犠牲者を家族のもとへ帰したい一心で現実を直視し、死者の尊厳を守り抜く。知られざる震災の真実を描いた渾身のルポルタージュ。
「虐殺器官[新版]」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
美しいとすら言える亡骸の描写に鳥肌が立つ導入部。
これは、死者を語りながら生者を語る物語。
他者とそして自己の内面との対話を繰り返しながら問われる罪の意識。
「大切な人の死体は物に見えない」
だから、面識のない数多の人間を手にかけることができるし、
大切なたった一人の人間を手にかけることを躊躇し、苦悩する。
たとえ、平和な世界を願ったとしても、
それが他者の累々とした屍の上に築かれる社会がまっとうであるはずがない。
クラヴィスはそのことに気付き、そして選択した。
自らの意志で罪を背負うことを。
たとえその思考の果てにどんな結果を引き起こしたとしても、
人は考えることをやめてしまったらいけないんだと思う。
一気に読みきった初読の時に比べると、倍近く読むのに時間がかかったのは、
彼らの紡ぐ言葉を拾いもらすまいと、懸命になっていたためか?
咀嚼しきれていない部分もあるだろうけど、反芻しながら噛み砕いて行こうと思います。
映画が楽しみ。
内容(「BOOK」データベースより)
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?現代の罪と罰を描破する、ゼロ年代最高のフィクション。
「黒警」月村了衛(朝日新聞出版社)
【窮地に追い込まれて人は初めて己と己以外の他者の本性を知る】
人間、誰しもが表裏の顔を持っている。
警察官、武闘派ヤクザ、中国黒社会の首領。
立場の全く違う三人を結びつけたのは、ヤクザの男が垣間見せた、
日向に立つ者のような裏の顔。
信じると決めた男になら、裏切られても構わない。
無気力だった警察官にそこまでの決意をさせたのは、
一人の男の死、そして、同じ義憤を抱く男からの義兄弟の契り。
彼らの仇である巨悪のラスボスは、的外れな正義を振りかざす人間に、
不相応な権力を与えちゃダメよね、の、典型。
その男を斃すために投じた仕掛けがうまくはまっていく様は、小気味良かった。
タイトルは一人の男の再生を見事に表現していたと思う。
相対することで、過去の最低な自分を忘れないでいようとするかのような
沢渡と波多野の関係性がいい。
ファミレスで向き合う沢渡と波多野の間に沈が割り込むシーンがなんだかツボでした。
内容(「BOOK」データベースより)
警視庁組織犯罪対策部の沢渡と滝本組幹部の波多野は、組織に追われる中国人女性を見殺しにしたトラウマを抱えていた。そんな二人のもとに中国黒社会の新興勢力「義水盟」の沈が現れる。黒社会の大組織・天老会に追われているカンボジア人女性サリカを匿ってほしいと沈から頼まれる二人。サリカは天老会の最高機密を握っているらしい。義侠心に富む波多野はサリカを隠れ家に匿うことになるが…。トラウマをもつ無気力警官、武闘派ヤクザ幹部、そして若き黒社会の首領が交錯するとき、漆黒の闇に潜む巨悪が顔を覗かせる―『機龍警察』の著者による書き下ろし長篇警察小説。
「夏の吐息」小池真理子(講談社文庫)
【生き続けること、愛し続ける事、諦めないこと、
笑うこと、突き進むこと、振り返らないこと】
淡々とした言葉でつづられる、愛の話が六篇。
一つ一つの物語の後を引く余韻が鮮烈で、
次の物語に進む前に一度本を閉じて、その余韻を噛みしめる。
すると、流麗な言葉で綴られる物語の情景が浮かんできて、気持ちが揺さぶられる。
やるせなさと切なさに涙が滲む物語。
生死観を考えさせられる物語。
街の活力と人の逞しさに力づけられる物語。
それらは、命への讃歌であり、愛の讃歌でもある。
特別な話はひとつとしてなく、どれもが日常の中で起こり得る物語。
だからこそ、余計に胸に迫るものがある。
特に印象に残ったのは
「月の光」の不安定さ「パロール」のやるせなさ「上海にて」の力強さ。
六篇の収録順はこれ以外ないと思いました。
内容(「BOOK」データベースより)
永遠に待ち続けると思うのです。世界のどこに行っても、地の果てにいても、私はあなたを待っている。―六年前、突如行方が分からなくなった恋人を待つ女性のモノローグからなる表題作他、濃厚な死の影の間近で紡がれる詩情。
「ワーキング・ホリデー」坂木司(文春文庫)
あったかくてほっこりする、日なたの匂いのする物語。
亡くなったと言われていた父親・大和が実は生きていることを知って、
夏休みを利用して会いに来た進。
突然現れた小学校5年生の子供に戸惑いつつも、
父親らしくあろうとする大和の態度は好感が持てます。
物分かりの良すぎる子供だった進が夏休みの終わりに
「帰りたくない」と感情を爆発させて駄々をこねるシーンでちょっと安心しました。
うん。
子供はこのくらいじゃないと。
楽しかった一夏の思い出の後には、最初から決められていた別れ。
だけど、これが最後ではない。
ほら、次は冬休みが!
読後感の申し分ないホンワリしたお話でした。
内容(「BOOK」データベースより)
「初めまして、お父さん」。元ヤンでホストの沖田大和の生活が、しっかり者の小学生・進の爆弾宣言で一変!突然現れた息子と暮らすことになった大和は宅配便ドライバーに転身するが、荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの連続で…!?ぎこちない父子のひと夏の交流を、爽やかに描きだす。文庫版あとがき&掌編を収録。
「デルフィニア戦記18 遥かなる星の流れに・下」茅田砂胡(C・NOVELS)
そして物語は終わりを告げる。
6年間苦楽を共にした同盟者は自らの故郷へと帰っていく。
別れの言葉を覚悟したウォルの涙。リィの涙。
離れ離れになることは身を切られるように寂しくて悲しいけれども。
そして、様々なことがあった6年だけれども。
「楽しかった」
その言葉で括れる6年であって良かったと思う。
彼らと共に戦ってきたキャラクターの魅力に引っ張られて、一気に読み切りました。
読みつづけている間中、私自身もとても楽しかったです。
終わりが近づくにつれ寂しくなっていく感覚を味わうのは久々。
出会えてよかったシリーズです。
沖さんのイラストがまた素晴らしく……イラスト集欲しいなぁ……←わりと真剣。
内容(「BOOK」データベースより)
放浪の戦士と異世界の少女の出逢い、すべてはここから始まった。盟約という堅い絆で結ばれた二人は、いくたの危地を乗り越え、あまたの合戦に勝ち抜いて、戦士は大国の王に、少女は王と国の守護神となった。獅子王と妃将軍がつむぐ、デルフィニアの伝説がここに完結する。
「デルフィニア戦記17 遥かなる星の流れに・上」茅田砂胡(C・NOVELS)
最後の奇跡……読み進めたいし、読み終わりたくないしで、気持ちは複雑。
リィを救う為に王位を(一時的に)捨てて出奔したウォル、
そして彼と共に飛び出したルウとシェラ。
夫と間男、もとい、ウォルとルウの会話は相変わらず緊迫感がなくて笑えます。
彼らが侵入した砦でリィの起こした奇跡。
崩れ落ちた瓦礫の中でウォルと再会したイヴン、バルロ、ナシアス。
イヴンがウォルを遠慮なく締め上げるシーン、好きだわ。
始終こうして屈託なく彼らとど付き合える関係こそがウォルの望むものなんだろうけど。
もう彼は後戻りできない「国王」という道を歩んでしまっている。
リィが宿敵の一人を打ち取ったところでいよいよ最終巻へ。
内容(「BOOK」データベースより)
リィを嫡子ナジェックの妻とする!勝利の女神を辱め、デルフィニアの戦意を削がんとするゾラタスの卑劣な策に、三騎はタンガへの途をひた走る。王位を捨て一戦士に戻ったウォル、異世界の相棒ルウ、己の意志で行動するシェラ―。昏々と眠り続けるリィだったが…。難攻不落のボナリス城に轟音が響く時、最後の奇跡が始まった。