きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2015.02.01 「機龍警察 暗黒市場」月村了衛(早川書房)
- 2015.01.30 「ダナエ」藤原伊織(文春文庫)
- 2015.01.28 「ダックスフントのワープ」藤原伊織(文春文庫)
- 2015.01.25 「この光と闇」服部まゆみ(角川文庫)
- 2015.01.24 「ひまわりの祝祭」藤原伊織(講談社文庫)
- 2015.01.22 「名残り火」藤原伊織(文春文庫)
- 2015.01.18 「シリウスの道 下」藤原伊織(文春文庫)
- 2015.01.17 「シリウスの道 上」藤原伊織(文春文庫)
- 2015.01.17 「てのひらの闇」藤原伊織(文春文庫)
- 2015.01.16 「テロリストのパラソル」藤原伊織
「機龍警察 暗黒市場」月村了衛(早川書房)
【すべてが裏切りと不実に満ちている。
信じられるものは何もなかった。己自身の魂さえも。】
身震いするような思いに急き立てられるように頁をめくった。
仲間に裏切られ、矜持を踏み潰され、腐って堕ちたと自らさえも思ったユーリだったけれども。
それでも、彼は、警官としての魂を失わなかった。
彼を取り巻いていた人々の真意に触れた瞬間の心の震えは言葉にならない。
絶望の中で見つけた真実の光。
けれども、それはすべてを失った後の儚い残光。
手を伸ばしても決して届かない。
死者は何も語らず、生者はその想いを伝える術がない。
だけど。
彼の手を握ってくれる仲間はいまこここいる。
姿の煎れた珈琲の香りが漂った気がした。
南仙台で、おぉ!と、拳を握り、閖上、石巻、金華山と
馴染んだ地名がでてきてテンションがあがりました。
内容(「BOOK」データベースより)
警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部は、旧知のロシアン・マフィアと組んで武器密売に手を染めた。一方、市場に流出した新型機甲兵装が“龍機兵(ドラグーン)”の同型機ではないかとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手した―日本とロシア、二つの国をつなぐ警察官の秘められた絆。リアルにしてスペクタクルな“至近未来”警察小説、世界水準を宣言する白熱と興奮の第3弾。
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「ダナエ」藤原伊織(文春文庫)
三篇からなる短編集から香るのは、ほろ苦さに包まれた甘いやさしさ。
描かれるのは、誰かのために行動する人間の諦観と、凛とした決意。
それは「犠牲」ではない。彼らの他者に対する「想い」の現れだ。
藤原さんの描く世界観が本当に好き。
感想は読む時期、年齢、心理状況によって変わってくる。
逆に作者が紡ぐ物語も、その時に生きるからこそ描き得るものだとするならば。
小池真理子女史のあとがきを読んでから「まぼろしの虹」を読みかえしたら、涙が滲んだ。
彼の死を静かに突きつけられたあとがきには、じわじわと胸にくるものがありました。
内容(「BOOK」データベースより)
世界的な評価を得た画家・宇佐美の個展で、財界の大物である義父を描いた肖像画が、切り裂かれ硫酸をかけられるという事件が起きた。犯人はどうやら少女で、「これは予行演習だ」と告げる。宇佐美の妻は、娘を前夫のもとに残していた。彼女が犯人なのか―。著者の代表作といえる傑作中篇など全3篇収録。
「ダックスフントのワープ」藤原伊織(文春文庫)
【人はギリギリのところまでいったら、
いつだって独りぽっちでなにかを決めなきゃいけないときがくるんだ】
四篇からなる短編集。
根底に漂う雰囲気は、どれもクールで知的でどこか悲劇的。
そして主人公たちは、それぞれ世の中を斜めに見るような孤独を抱えている。
どの話も読み終わったところで立ち止まり、胸の中に残ったチクリとした痛みを顧みて、
物語を反芻する。
それはひどく心地良い瞬間だ。
余韻に浸っていたいと思う読後感は、短編でも健在。
一番印象的だったのは「ダックスフントのワープ」
物語世界と現実世界が崩壊する瞬間は、心に冷水を浴びせられたような感覚を味わうことになる。
それでも、藤原伊織の描く物語だよなぁ、と、納得してしまうのだ。
内容(「BOOK」データベースより)
大学の心理学科に通う「僕」は、ひょんなことから自閉的な少女・下路マリの家庭教師を引き受けることになる。「僕」は彼女の心の病を治すため、異空間にワープしたダックスフントの物語を話し始める。彼女は徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていったが…。表題作ほか三篇。
「この光と闇」服部まゆみ(角川文庫)
【闇の中に在って、世界は何と美しく輝いていたことだろう!】
美しい言葉で綴られる、かくも美しく幻想的な物語。
構築された緻密で華麗な世界に魅せられ、甘く悩ましい香気にうっとりと目を細める。
これは、光に満ち溢れた世界で父王の愛情を一身に浴び、
花の香りと芸術と物語世界に生きる王女の物語。
何が虚構で何が真実なのかを決めるのは彼ら。
彼ら自身が想い、見て感じたことがすべて。
「言葉」による色相の描写。
「視覚」による世界の描写。
脳裏に浮かぶイメージの華麗さと鮮烈さにただひたすら陶酔し、読後は溜息が零れました。
文字通り闇と光の世界の物語。
誘われて本当によかった。
内容紹介
森の奥深く囚われた盲目の王女・レイア。父王からの優しく甘やかな愛と光に満ちた鳥籠の世界は、レイアが成長したある日終わりを迎える。そこで目にした驚愕の真実とは……。耽美と幻想に彩られた美しき謎解き!
「ひまわりの祝祭」藤原伊織(講談社文庫)
寂寞や感嘆の入り混じった何とも形容のしがたいこの読後感に、いつまでも浸っていたい。
そんな余韻を残してくれるハードボイルド。
登場人物たち会話がとても軽妙で酒脱。
そしてタイトルの妙。
昨日と同じ今日。今日と同じ明日。
変わらない時間のループの中に身を置いていた秋山の周囲がある夜をきっかけに騒がしくなる。
一枚の絵画を巡って多くの人間が水面下で画策し、
係わりを持つつもりのなかった秋山を巻き込んでの騒動となっていく。
その過程で詳らかになる人間模様。
英子の件に関してはやりきれない想いしかない。
秋山や原田の頭のキレ具合はかなり小気味よかった。
内容(「BOOK」データベースより)
自殺した妻は妊娠を隠していた。何年か経ち彼女にそっくりな女と出会った秋山だが、突然まわりが騒々しくなる。ヤクザ、闇の大物、昔の会社のスポンサー筋などの影がちらつく中、キーワードはゴッホの「ひまわり」だと気づくが…。名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編。
「名残り火」藤原伊織(文春文庫)
何故彼は、そして彼女は死ななければならなかったのか。
彼らの穏やかな日常を奪った犯人の
あまりにも身勝手で理不尽な動機を思えば思うほど、ただひたすらに口惜しい。
心を許した友のために犯人を探し出していく堀江の手法は
決して褒められたものではないだろうけれども、私は嫌いではない。
最初に法を犯したのは犯人たちの方なのだから。
事実を知った奈緒子のけじめのつけ方はあまりにも壮絶で悲壮すぎた。
危うさを孕んだ堀江のことをきちんと見てくれている人たちがいる。
そんな事実がなんとなく嬉しくなった本作でした。
今回登場の三上社長がかなり癒しになったわ。
素敵なおじ様です!かっこいい~~!
内容(「BOOK」データベースより)
飲料メーカーの宣伝部課長だった堀江の元同僚で親友の柿島が、夜の街中で集団暴行を受け死んだ。柿島の死に納得がいかない堀江は詳細を調べるうち、事件そのものに疑問を覚える。これは単なる“オヤジ狩り”ではなく、背景には柿島が最後に在籍した流通業界が絡んでいるのではないか―。著者最後の長篇。
「シリウスの道 下」藤原伊織(文春文庫)
【満足に自己満足以外の満足があるんですか】
最初に浮かぶのは、世の中ってそういうものだよね、という諦観。
決して爽快な読後じゃないけど、それも悪くない。
それは多分、皆が必死で頑張ったから。そして間違ったことをしていないから。
浅井の手助けを得て脅迫の件は片がつき、社内の害悪も排除することができた。
残るプレゼンに関しては、戸塚の成長が著しくて、
頑張っている姿に心からエールを送りたくなる。
最後の馬鹿社長に対して毅然と答えた彼を責める者は誰もいない。
それでもプレゼンは通らない。
そのことに納得していまう程度には、私も年齢と経験を重ねたってことなんだろなぁ。
今夜は静かにお酒が飲みたい気分です。
内容(「BOOK」データベースより)
新規クライアントの広告コンペに向け、辰村や戸塚らは全力を傾注する。そんな中、3通目の脅迫状が明子の夫の許に届いた。そして勝哉らしき人物が上野近辺にいることを突き止めた辰村は、ついに行動を起こす!広告業界の熾烈な競争と、男たちの矜持を描くビジネス・ハードボイルドの結末は。
「シリウスの道 上」藤原伊織(文春文庫)
【なにかを選べるってだけで、恵まれてるさ】
生きるということは、こんなに切ないことだったかしら、と、やるせない想いを噛みしめる。
生きてきた年数分いろいろあるわけで、誰もが大なり小なり悩みや厄介事を抱えている。
一社会人としてはとても充実した仕事をしている日々を送っているように見える彼らも
私生活ではどこか疲弊してしまっている。
安らいでほしいと、お節介にも思ってしまう。
コンペの結果はこれからだし、脅迫者の姿もわからない。
そして、かつての幼馴染の人生はこの先どう交わっていくのか。
やきもきしながら下巻へ。
「テロリストのパラソル」とのリンクが嬉しいのとこっちも切ないのと半々。
内容(「BOOK」データベースより)
大手広告代理店・東邦広告に勤める辰村祐介には、明子、勝哉という2人の幼馴染がいた。この3人の間には、決して人には言えない、ある秘密があった。その過去が25年の月日を経た今、何者かによって察知された…。緊迫した18億円の広告コンペの内幕を主軸に展開するビジネス・ハードボイルドの決定版ここに登場。
「てのひらの闇」藤原伊織(文春文庫)
勤務する会社の会長の突然の自殺の理由を解き明かそうと、動き出した堀江。
調べれば調べるほど、会長の周囲にはきな臭い雰囲気が漂っていて、
これ、一介のサラリーマンの手に負えるの?と、ふと過った思いは、
堀江の持つ別の一面を鮮烈に突きつけられることによって霧散する。
肝の座り方、手段の容赦なさ、腕っぷしの強さが半端なくカッコいい。
堅気とは言い難い方法で真実にたどり着きながらも、
同僚たちには最後まで「堀江課長」であり続けた彼の人となりが良い。
彼の周囲の男たちもまた、漢気あふれる魅力的な人物ばかりで、
読後、しばらく心が痺れていました。
内容(「BOOK」データベースより)
飲料会社宣伝部課長・堀江はある日、会長・石崎から人命救助の場面を偶然写したというビデオテープを渡され、これを広告に使えないかと打診されるが、それがCG合成である事を見抜き、指摘する。その夜、会長は自殺した!!堀江は20年前に石崎から受けたある恩に報いるため、その死の謎を解明すべく動き出すが…。
「テロリストのパラソル」藤原伊織
【きょう、友だちをなくした】
いま在るこの場所は、必ずしも、自分が思い描いていた通りの場所ではないかもしれない。
だが、そこでどう生きるかは、自分次第だ。
その結果が桑野にとってはテロであり、破滅であった。
島村も浅井も、望んでこの場所に流れ着いたわけではないだろう。
だが、彼らは奥底に熱いものを抱えたまま、自分なりの矜持を持って生きている。
島村の静かな生活は、桑野によって掻き回された。
だが、彼は桑野に対して恨み言は言わないだろう。
浅野も然り、だ。
この二人のコンビ(?)好きだなぁ…
渇いた文体で描かれる男たちの世界。
暫し浸っていたい心地よさです。
藤原伊織再読祭り。ここから開幕です
内容(「BOOK」データベースより)
アル中のバーテン・島村は、ある朝いつものように新宿の公園でウイスキーを呷った。ほどなく、爆弾テロ事件が発生。全共闘運動に身を投じ指名手配された過去を持つ島村は、犠牲者の中にかつての仲間の名を見つけ、事件の真相を追う―。乱歩賞&直木賞を史上初めてダブル受賞した傑作。