きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2015.02.21 「月神の浅き夢」柴田よしき(角川文庫)
- 2015.02.18 「聖母の深き淵」柴田よしき(角川文庫)
- 2015.02.17 「RIKO~女神の永遠~」柴田よしき(角川文庫)
- 2015.02.15 「ブルース」花村萬月(角川文庫)
- 2015.02.11 「聖なる黒夜 下」柴田よしき(角川文庫)
- 2015.02.10 「聖なる黒夜 上」角川文庫(柴田よしき)
- 2015.02.08 「機龍警察 未亡旅団」月村了衛(早川書房)
- 2015.02.07 「蚊トンボ白髭の冒険 下」藤原伊織(講談社文庫)
- 2015.02.05 ふし「蚊トンボ白髭の冒険 上」藤原伊織(講談社文庫)
- 2015.02.03 「雪が降る」藤原伊織(講談社文庫)
「月神の浅き夢」柴田よしき(角川文庫)
【長い、長い夜の果て。途方もなく遠い夜明け。だが、開けない夜はない】
緑子の言動を見ていて、つくづく、女は感情で動く生き物だと思ったけれども。
それは何も女に限ったことではない。
男だって感情で動き、時に流される。
弱音を吐くのもいい。泣き叫んだってそれは無様じゃない。
だけど「逃げたい」というセリフは裏切りだと思う。
結局、麻生の翼は闇色には染まらない。
昏い夜の中の練は、いまも孤独だ。
読後に噛みしめる想いは、ひどく苦い。
緑子の強さは現実から目を背けないこと。
男社会にあって女であることを否定しないこと。逃げないこと。
初読の時は受け入れられなかった彼女の在り方を、理解はできないまでも
認められる分だけの年数が経ったのだなぁ、としみじみ思いました。
田村と練がじゃれあっている描写がなんだか可愛かった。
切ないままお預けくらって……もう10年以上かぁ。続き、待っています!
内容(「BOOK」データベースより)
若い男性刑事だけを狙った連続猟奇殺人事件が発生。手足、性器を切り取られ木にぶらさげられた男の肉体。誰が殺したのか?次のターゲットは誰なのか?刑事・緑子は一児の母として、やっと見付けた幸せの中にいた。彼女は最後の仕事のつもりでこの事件を引き受ける。事件に仕組まれたドラマは錯綜を極め、緑子は人間の業そのものを全身で受けとめながら捜査を続ける。刑事として、母親として、そして女として、自分が何を求めているのかを知るために…。興奮と溢れるような情感が絶妙に絡まりあう、「RIKO」シリーズ最高傑作。
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「聖母の深き淵」柴田よしき(角川文庫)
【愛してるんだ】
一連の事件の顛末を見事に描き切っている中で、
キリキリと胸が軋むような練と麻生の関係もきっちり読ませてくれました。
緑子に対しては思うところが色々で、振りかざしてくるような言い分に腹が立つけど、
その指摘の鋭さにハッとさせられたりもする。
結局彼女の女の部分に自分の感情も振り回されているような気がする。
安藤と連れ添う決意をしたシーンは好き。
愛。
とても崇高で、とても複雑なもの。
抱いて堕ちた泥沼の中から這い上がった時の麻生の翼の色は?
「愛している」という言葉に嘘がないことはわかっているけれども。
練の幸せを願ってやまない私には、泣きたくなるような問いかけです。
初読の時より再読した時の方がジワジワと胸に迫る切なさが半端ない。
内容(「BOOK」データベースより)
一児の母となった村上緑子は下町の所轄署に異動になり、穏やかに刑事生活を続けていた。その彼女の前に、男の体と女の心を持つ美人が現れる。彼女は失踪した親友の捜索を緑子に頼むのだった。そんな時、緑子は四年前に起きた未解決の乳児誘拐事件の話をきく。そして、所轄の廃工場からは主婦の惨殺死体が…。保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。互いに関連が見えない事件たち、だが、そこには恐るべき一つの真実が隠されていた…。ジェンダーと母性の神話に鋭く切り込む新警察小説、第二弾。
「RIKO~女神の永遠~」柴田よしき(角川文庫)
【あたしの中で、女は永遠だ】
どこまでも泥臭い警察組織の中にあって、彼女はどこまでも女だった。
対等であることと平等であることは意味が違う。
女が女であるという、ただそれだけの理由で貶められる謂れはない。
男にしかできない戦い方があるのなら、女にしかできない戦い方で挑んでいけばいい。
平等で在ろうとすることは難しいだろう。
だが、対等であろうと望むその先には果てがない。どこまでも上り詰めていける。
好悪で問われれば、緑子のことは多分好きにはなれない。
でも、彼女の奔放さと強さ、そしてしたたかさは実は嫌いではない。
高須に対してやり返した緑子のやり口はお見事でした。
練の物語に行きつくために、この巻は避けて通ることのできないハードルです(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
男性優位主義の色濃く残る巨大な警察組織。その中で、女であることを主張し放埓に生きる女性刑事・村上緑子。彼女のチームは新宿のビデオ店から一本の裏ビデオを押収した。そこに映されていたのは残虐な輪姦シーン。それも、男が男の肉体をむさぼり、犯す。やがて、殺されていくビデオの被害者たち。緑子は事件を追い、戦いつづける、たった一つの真実、女の永遠を求めて―。性愛小説や恋愛小説としても絶賛を浴びた衝撃の新警察小説。第十五回横溝正史賞受賞作。
「ブルース」花村萬月(角川文庫)
【あまりに胸が、心が痛いので、気を失った】
あまりに純粋で狂おしい情愛と、苛烈なまでの暴力の連鎖。
法の外にはみ出した行為を是とする徳山の想いに同調するまい、と、
自分に言い聞かせるのだけれども。
報われることのない彼の想いに胸が軋む。
徳山の想いを認め、受け入れながらも、
対峙する道を選ばざるを得なかった村上の頑なで不器用な潔さ。
崔とサチオの犠牲の上に成り立つ安寧を良しとせず、
綾の元を去ることを選び、つかみかけた光に背を向けた。
誰も彼もが抱えていた大人になりきれない青臭さが、
自らも含む人々の運命を歪ませていったのだ。
描かれる物語は魂の慟哭。文字通りのブルース。
北方氏のあとがきが秀逸。
「たまらんぜ、萬月。なにが悲しくてこんな小説を書く」
私にはその言葉がもうたまりませんでした。
内容(「BOOK」データベースより)
南シナ海の烈風。眼下で砕ける三角波。激しい時化に呻く25万トンの巨大タンカーの中で、村上の友人、崔は死んだ。仕事中の事故とはいえ、崔を死に至らしめた原因は、日本刀を片手に彼らを監督する徳山の執拗ないたぶりにあった。徳山は同性愛者であった。そして村上を愛していた。村上と親しかった崔の死こそ徳山の嫉妬であり、彼独自の愛の形であった―。横浜・寿町を舞台に、錆び付いたギタリスト村上とエキセントリックな歌姫綾、そしてホモのヤクザ徳山が奏でる哀しい旋律。芥川賞作家が描く、濃密で過剰な物語。
「聖なる黒夜 下」柴田よしき(角川文庫)
【この男が堕ちたところまで自分も堕ちて、
闇の中で道を探す以外に、もうどうにもならない。】
時に殺してしまいたいほどの屈折した想いではあったかもしれない。
だが、確かに韮崎は練を愛していた。そして練もその想いに応えた。
冷たい線路の上に投げ出した練の命をひろいあげたのは、韮崎という闇だった。
その闇に練を追いやった原因の一端が自分で在ると悔やむのであれば、
共に闇に堕ちる覚悟がなければ、麻生に練の人生に口をはさむ資格はないだろう。
韮崎が殺されることがなければ、麻生は自らの犯した過ちに気付きもしなかったのだから。
綺麗事では誰も救えはしない。その言葉は響かない。
冤罪。
その言葉の投げかける意味は、とてつもなく重い。
練の問いかけに答える麻生。
それで何かが変わることはないだろう。
長い夜は明けることはない。多分この先もずっと。
けれども。
そこに差し込む一筋の光の存在を信じたい。
内容(「BOOK」データベースより)
聖なる日の夜、一体何が起こったのか。ひとつの事件を通して暴かれていく麻生龍太郎と山内練に秘められた壮絶な過去。さらに事件は新たな殺人事件を招き、人間の愛憎、傲慢、悲痛な魂の叫びを曝け出していく。二人はこの暗黒の絶望の淵で何を決断したのか。息をもつかせぬストーリー、幾重にも張られたミステリ、そして人間の罪と罰を描破した孤高の大長編!!下巻に本書サイド・ストーリー『ガラスの蝶々』を書籍初収録。
「聖なる黒夜 上」角川文庫(柴田よしき)
【俺はどっちだって構わないんだ。ただ、あんたの言葉を聞きたい。】
やり直す場所は、夜明けの線路の上。
穏やかに暮らしていたあのアパートではなく、
全てを終わりにすると決めた、冷たい暗闇の中。
自分をそこから引きずりあげた韮崎との出逢いは間違いだったのか。
静かな問いに震える声で答えた麻生は、己の傲慢を知る。
「感謝する」
絞り出すような言葉に嘘はない。
かつての麻生が練に放った、偽ったつもりのない言葉。
そこに練を気遣う心があったとしても、
その言葉が練の運命を残酷なまでに狂わせたことを、
知ってしまったからには彼は心に刻むべきだ。
幸せか?と問われれば、練はただうっすらと笑うだけだろう。
疲れ果てた魂が、愛おしくてたまらない。
初読は人待ちの名古屋空港で。
気付けば私、分厚いハードカバー抱えてラウンジで号泣していました。
殺人事件をきっかけに浮かび上がった練の人生が、やりきれなさすぎてたまらない。
内容(「BOOK」データベースより)
東日本連合会春日組大幹部の韮崎誠一が殺された。容疑をかけられたのは美しい男妾あがりの企業舎弟…それが十年ぶりに警視庁捜査一課・麻生龍太郎の前に現れた山内練の姿だった。あの気弱なインテリ青年はどこに消えたのか。殺人事件を追う麻生は、幾つもの過去に追いつめられ、暗い闇へと堕ちていく―ベストセラー「RIKO」シリーズから生まれた究極の魂の物語、ついに文庫化!上巻に本書サイド・ストーリー『歩道』を書籍初収録。
「機龍警察 未亡旅団」月村了衛(早川書房)
【殺した子供に倍する数の悪党を俺は殺した、
だから帳尻は合っている、悪いがそれで勘弁してくれ】
過去の積み重ねの上に現在がある。
語られる由紀谷の人生に心を動かされた者たちは、自らの過去に何を思ったのか。
慈愛に満ちた母が子を食らう鬼となった。
殺戮を止めるために、甘んじて受け入れた裏切り者の烙印。
救いたいと願った仲間から一生涯狙われ続ける命。
だが、彼女の決意は揺らがない。
由紀谷に綴った約束を果たしてほしいと、願ってやまない。
そして城木が背負うこととなった重い枷。
知らなければよかった真実。だが、直視しなければならない己の貌を映す鏡。
父の断罪が胸を抉る。
潰されないでほしい。救いようのない現実に。
感傷的なレビューになってしまいましたが……
事件を止めようと奔走する人たちを邪魔する「敵」に腹が立って
みんなの背負ったものが痛々しすぎて、やるせない読後感でした。
途中で止められなくて一気読み。
続き、気になる~~~><
内容(「BOOK」データベースより)
チェチェン紛争で家族を失った女だけのテロ組織『黒い未亡人』が日本に潜入した。公安部と合同で捜査に当たる特捜部は、未成年による自爆テロをも辞さぬ彼女達の戦法に翻弄される。一方、特捜部の城木理事官は実の兄・宗方亮太郎議員にある疑念を抱くが、それは政界と警察全体を揺るがす悪夢につながっていた―世界のエンタテインメントに新たな地平を拓く“至近未来”警察小説、衝撃と愛憎の第4弾。
「蚊トンボ白髭の冒険 下」藤原伊織(講談社文庫)
巻き込み、巻き込まれ、めまぐるしい騒乱のなかに投げ出された人々の人生が
劇的な変化を来した三日間の物語。
他の手段を講じる道も、もしかしたらあったかもしれない。
だが、達夫の選び得る選択肢は、これしかなかった。
結局、それを良しとしたことで、瀬川や黒木たちの人生も大きく変わっていく。
誰もが納得ずくで突き進んでいったところが、本当に心憎い。
白髭と達夫との会話が終始楽しかったのは、白髭の口調にもよるのかな?
ラスト、全力で地面を蹴ることができる高揚が見事に伝わってきた。
まさに、大冒険の物語。
冒険の終わりには、ただ平穏な眠りを。
内容(「BOOK」データベースより)
黒木は暴力団に巨額の損失を与え、追われる身だった。その行方を知るべく、彼らは卑劣な手段で達夫を脅迫した。そこに凶悪獰猛な赤目の男・カイバラが介入、達夫の恋人・真紀を誘拐する。そのとき皮肉にもシラヒゲの能力は尽きようとしていた。カイバラの挑発に単身敵地に乗り込む達夫。はたして真紀を無事救出できるのか。
ふし「蚊トンボ白髭の冒険 上」藤原伊織(講談社文庫)
奇妙な生き物との不思議な出逢い、そして、アパートの隣人を助けたことによって
達夫の日常が劇的な変化を遂げる。
大がかりなトラブルに巻き込まれ、僅か二日間の間に起きた、あまりにも濃密な出来事。
背負った過去の出来事から、生きていて楽しい必要なんかあるのかと呟いた達夫が貫いた、
痛々しいほど真摯な誠実さ。
黒木もどこか壊れているし、真紀の抱えた喪失も大きい。
仕事をする職人さんたちの描写がとても好き。
やくざ側の瀬川も、なんだか憎めない話の分かるおっさんかと思ったら……
不気味な敵は他にいました。
ドキドキしながら下巻へ。
内容(「BOOK」データベースより)
羽音と不思議な声がすべての始まりだった…。陸上競技への夢を断念し、水道職人となった若者・達夫の頭の中に、ある日奇妙な生物が侵入してくる。その名も蚊トンボ・シラヒゲ。超人的能力を得た達夫は、アパートの隣人・黒木を理不尽な暴力から救う。しかし、それは恐るべき闇社会との対決を意味していた。
「雪が降る」藤原伊織(講談社文庫)
六編の物語から成る短編集は、人生に傷を持った人々の物語。
個人的には過去と現在のやるせなさと理不尽さがオーバーラップする「台風」と
男女の会話がとてもスタイリッシュで男二人のやりとりが妙に艶っぽい「雪が降る」が好き。
「紅の樹」の堀江の生き様と赤に染まる樹の描写には息を呑んだ。
彼の紡ぎだす物語の読後感は本当にぶれない。
痛みを伴った心地よさにいつまでも浸っていたい。
運命を受け入れながらも、決して逃げてはいない人々の日々の物語。
少年や子供たちですら、毅然として生きている。
内容(「BOOK」データベースより)
母を殺したのは、志村さん、あなたですね。少年から届いた短いメールが男の封印された記憶をよみがえらせた。苦い青春の日々と灰色の現在が交錯するとき放たれた一瞬の光芒をとらえた表題作をはじめ、取りかえようのない過去を抱えて生きるほかない人生の真実をあざやかに浮かびあがらせた、珠玉の六篇。