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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「千年ジュリエット」初野晴(角川文庫)



【世の中は数限りない不公平でできている】

相変わらず賑やかな日常の中にサラリとした痛みや重たい現実が描かれる物語。
「エデンの谷」で描かれた、孫娘に対する祖父の最大限の愛情。
解読された遺言には笑ってしまった。
「千年ジュリエット」
楽しそうに語らう五色の虹のジュリエットたちが抱えたものの重さに切なくなりながらも、
生きることから逃げちゃいけないんだな、と、改めて思わされた。
五色の虹バッチを受け取ったトモちゃんはもう、部屋の中に引きこもることはないだろう。
人は有限であるが故に、様々な想いを受け継いで、
次の世代へと繋いでいくんだなぁ、と思いました。
しばらく浸っていたい読後感が心地よい物語。

内容(「BOOK」データベースより)

清水南高校、文化祭間近、晴れの舞台を前に、吹奏楽部の元気少女・穂村チカと、残念系美少年の上条ハルタも、練習に力が入る。そんな中、チカとハルタの憧れのひと、草壁先生に女性の来客が。奇抜な恰好だが音楽センスは抜群な彼女と、先生が共有する謎とは?(「エデンの谷」)ほか、文化祭で巻き起こる、笑って泣ける事件の数々。頭脳派ハルタと行動派チカは謎を解けるのか?青春ミステリの必読書、“ハルチカ”シリーズ第4弾!

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「空想オルガン」初野晴(角川文庫)



【俺たちは金を奪っているんじゃない。 親のこころを奪っているんだ】

「胸を張れ。顔を上げろ。諦めるんじゃないぞ」
幾通りもの選択肢のある高校生たちの未来。
躓いても挫折しても遠回りしても、彼らには辛い今を支えあう仲間がいて、
希望に満ちた未来がある。
自分にできることを懸命にやりながら、仲間たちを思いやる彼らの姿は
本当にキラキラしていて素敵だ。

吹奏楽で東海大会まで出場できた彼らの物語に添うように、今巻から登場した一人の大人がいる。
家族と縁を切り、自分を救ってくれた友人を亡くした彼は、
こんなはずじゃなかった、というどうしようもない現状で諦念したように足掻きながらも、
友達の母を救い、自分を思いやる知人の一面を垣間見、失ったと思っていた肉親の想いを知った。
彼の物語は泣けて仕方がなかった。

今作は全編にわたって家族の愛情が溢れているストーリーだったと思う。


内容(「BOOK」データベースより)

穂村チカは、憧れの草壁先生の指導のもと、吹奏楽の“甲子園”普門館を夢見る高校2年生。同じく先生に憧れている、幼なじみの上条ハルタと、恋のさやあて(?)を繰り広げながらも、夏の大会はもう目前。そんな中、どうも様子がおかしいハルタが、厄介な事件を持ち込んで…!?色とりどりの日常の謎に、頭脳明晰&残念系美少年ハルタと、元気少女のチカが立ち向かう!絶対に面白い青春ミステリ、“ハルチカ”シリーズ第3弾。

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「戦艦武蔵」吉村昭(新潮文庫)



この本に描かれている歴史を経て今の日本がある、と思うと、
手にした本の重みがずっしりと増すような気がする。
全長260メートルもの船を秘密裏に作る方法を模索して編み出し、
係わる工員たちのほとんどにその全容を知らせず、己に振り分けられた任務に邁進させる。
そうやって作り上げられた戦艦武蔵。
艦の製作の開始から完成までの事象が克明に、そして淡々とつづられる文章には、ただ圧倒される。
多くの時間とお金、そして人の手を費やして四年という年月をかけて作った船が、
千人以上の人々の命と共に海に沈められてしまう悲痛な現実。
辛うじて生き延びた人たちに対するその後の海軍の処遇があまりにも理不尽だと思った。


内容(「BOOK」データベースより)

日本帝国海軍の夢と野望を賭けた不沈の戦艦「武蔵」―厖大な人命と物資をただ浪費するために、人間が狂気的なエネルギーを注いだ戦争の本質とは何か?非論理的“愚行”に驀進した“人間”の内部にひそむ奇怪さとはどういうものか?本書は戦争の神話的象徴である「武蔵」の極秘の建造から壮絶な終焉までを克明に綴り、壮大な劇の全貌を明らかにした記録文学の大作である。

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「初恋ソムリエ」初野晴(角川文庫)



【普門館は大事だと思う。
 でも、その後の人生のほうがもっと大事だ】

読後に胸の痛みが残る本。
でも、その痛みは決して不快なものではなく、
この物語に出てくる人たちのやさしさや思いやり、
そして抱えてきた傷に触れたような気持ちになる。
ずっとその余韻に浸っていたくなる。
そんなやわらかな痛みだ。
これは、誰かが誰かを思いやる物語だと思う。
誰かが抱えた悩みをみんなで一生懸命解決しながらも、
吹奏楽ときちんと向き合い、腕を上げていくことも忘れない。
要所要所を大人がきちんと手助けしてあげているところも好印象。
ものすごく好きなシリーズになりつつある。
未だ語られていないハルタの事情や、草壁先生の過去がとても気になります。


内容(「BOOK」データベースより)

廃部寸前の弱小吹奏楽部を立て直し、普門館を目指す高校2年生の穂村チカと上条ハルタ。吹奏楽経験者たちに起きた謎を解決し入部させることに成功していた2人だったが、音楽エリートの芹澤直子には断られ続けていた。ある時、芹澤の伯母が高校にやって来た。「初恋研究会」なる部に招待されたのだという。やがて伯母の初恋に秘められた、40年前のある事件が浮かび上がり…(表題作より)。『退出ゲーム』に続く“ハルチカ”シリーズ第2弾。

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「つきのふね」森絵都(角川文庫)



【人より壊れやすい心に生まれついた人間は、
 それでも生きていくだけの強さも同時に生まれもっているものなんだよ】

淋しさや後悔は大なり小なりみんな抱えていて、先の見えない未来に不安になったりもする。
たったひとりでも自分の心に寄り添ってくれる誰かが傍にいてくれれば、
それほど心強いこともない。
逆に、よりどころを見失ってしまった時の落胆と淋しさと恐怖は計り知れない。

壊れかけたみんなを繋ぐために頑張った勝田。
宇宙船を捨てて地に足をつけた智さん。
ひきこもった殻の中から出てきた梨利。
そして、皆を繋ぎ、足掻くことをあきらめなかったさくら。
それぞれの心のあり方がやさしく切なく胸に染みる、素敵な話でした。

辛い時期を乗り越えた露木からの手紙には胸を打たれる言葉がいくつもあって、
何度も繰り返しなぞってしまいました。

内容(「BOOK」データベースより)

あの日、あんなことをしなければ…。心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき―。近所を騒がせる放火事件と級友の売春疑惑。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く、奇跡のような傑作長編。

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「天空の蜂」東野圭吾(講談社文庫)



3.11以前に読んだのなら、純粋に楽しめたんだろうなぁ、と思う。
けれども、東日本大震災を経験してしまったからこそ、
色々な思いを噛みしめながら項を捲った。
震災当時誰かが言っていた「安全神話などではなく、安全願望だ」という言葉が
鮮烈に耳に残っている。
良いとか悪いとか言う以前に、原発のことをきちんと知ることが大事なんだろうなぁ。
そういう意味では著者はどの視点にも偏ることなく、公平な目線で物語を展開していると思う。
説明はとても分かりやすかったし、色々なことがストンと胸に落ちてきた。

エンタメ的には……
救助シーンが、というよりも、航空救難隊の皆々様がとてもかっこよかった!デス。


内容(「BOOK」データベースより)

奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。

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「退出ゲーム」初野晴(角川文庫)



【きみたちがこれから経験する世界は美しい。
 しかし同時にさまざまな問題に直面するし、不条理にも満ちている】

青春真っ只中の高校生たちの元気いっぱいな物語。
4編の短編からなる本書では、思春期の悩みや問題ごとだけではなく、
家族の在り方や、一人の人間の生死観まで、実に深い部分まで緻密に描かれている。
例えば「エレファンツ・ブレス」
奇天烈な導入からはじまるこの物語は、
一人の女子中学生の悩みからベトナム戦争にまで話が及ぶ。
いろいろと考えさせられた。
それでも物語の主軸は彼らの所属する吹奏楽部にある。
弱小だった吹奏楽部で部員を増やしながら
吹奏楽の甲子園に出場することを目指す彼らの今後の物語を読むのが楽しみだ。
そしてハルタとチカの恋の行方も気になるところ。


内容(「BOOK」データベースより)

「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない」―穂村チカ、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみのホルン奏者。音楽教師・草壁先生の指導のもと、吹奏楽の“甲子園”普門館を夢見る2人に、難題がふりかかる。化学部から盗まれた劇薬の行方、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決…。2人の推理が冴える、青春ミステリの決定版、“ハルチカ”シリーズ第1弾。

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「永遠の仔 五」天童荒太(幻冬舎文庫)



【生きていたことが間違ってなかったって。
 そう信じさせてくれた人と出会えたことで、充分なのよ】

「打ち明けてしまう弱さ」
志穂はそう記したけれども、確かに、彼女がすべてを抱えて胸の内に秘めていたなら、
せめて聡志は救えたのかもしれない。
彼女によって明かされた真実は、誰にとっても残酷なものであったけれども、
同時に優希の心を救うものでもあった。

笙一郎が越えてしまった分岐点。
誰か一人でも彼を傍で支えてくれる人が、或は、彼を必要としてくれる人がいてくれれば、
こちら側に踏みとどまることができたのかもしれない。
三人が離れ離れだった十七年間、優希には家族や患者がいて、
梁平には叔父や叔母、奈緒子や伊島がいた。
けれども、笙一郎の人生に寄り添う者はおらず、結果的に彼は道を踏み外してしまった。
改めて思う。
人は、一人では生きられない。
負の連鎖を断ち切ることができるのも、闇に呑まれるまいと戦えるのも、
人生を踏ん張れるのも、たぶん、誰かの存在があってこそなのだと思う。
愛しいと思う気持ちも決して一人では生まれてこない。
一番身近にいる他人は家族。
お互いの生を喜び、抱きしめあえる家族であることを願ってやまない。

内容(「BOOK」データベースより)

母に続き弟まで喪ってしまった優希、母と優希への愛情にもがき苦しみ続けた笙一郎、そして恋人を殺害されてしまった梁平。三つの無垢なる魂に最後の審判の時が訪れる―。十七年前の「聖なる事件」、その霧に包まれた霊峰に潜んでいた真実とは?“救いなき現在”の生の復活を描き、日本中に感動の渦を巻き起こした永遠の名作、衝撃の最終章。

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「永遠の仔 四」幻冬舎文庫(天童荒太)



【ただつらくて、虚しいだけで終わるわけじゃない……
 きっと、生きてることが楽しくなる道もあるんだって、伝えたかったの】

過去ごと抱きしめあい、あるがままの自分を受け入れあえる伴侶に出会えた岸川夫妻。
彼らのように幸せになる権利は誰にでもあるはずだ。
けれども、優希たちの指の間からは、幸せがすり抜けて行ってしまっている。
そんな思いが最後までぬぐえなかった。
「あなたたちのように生きたかった」
育ての親である叔父夫婦に想いを吐き出した梁平。
彼らの愛情を改めて感じ、ようやく奈緒子との未来を考え始めた直後に彼を襲う悲劇。
すべての悲劇は、彼らが再会することさえなかったら防げたものだったのか、
それとも、いずれはどこかで破綻するものだったのか。
答えを見つけられないまま、最終巻へ。



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「永遠の仔 三」天童荒太(幻冬舎文庫)



【おれたちは、別の世界で始めるんだ。
 この世界の人間は誰もいない、新しい世界で、
 どんな痕も残っていないきれいなからだで、初めから生き直していくんだ……】

実の親から受けるには、あまりにも凄惨な過去の出来事の告白。
優希が呑みこんできた想いを吐き出すことができたのは、
笙一郎と梁平もまた、同じような修羅をくぐってきたからだ。
子どもが受け止めるにはあまりにも辛い仕打ちを何故血の繋がった親ができてしまうのか。
子どもは親の憤りや苛立ちの捌け口ではない。
「新しい世界で初めから生き直したい」
10代になって間もない子供の台詞が痛々しくてたまらない。
依然として知れない聡志の行方。
大人になって再会した三人の想いも少しずつ歪さを増していく。
息苦しさを払拭できないまま、次巻へ。


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