きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2016.02.01 『仮面の告白』三島由紀夫 新潮文庫
- 2016.01.30 「世界の名詩を読みかえす」(いそっぷ社)
- 2016.01.29 「チーム」堂場瞬一(実業之日本社文庫)
- 2016.01.25 「閃光スクランブル」加藤シゲアキ(角川文庫)
- 2016.01.19 「いつか時が汝を」北方謙三(徳間文庫)
- 2016.01.14 「友罪」薬丸岳(集英社文庫)
- 2016.01.12 「潮騒」三島由紀夫(新潮文庫)
- 2016.01.10 「美しさと哀しみと」川端康成(中公文庫)
- 2016.01.05 「ピンクとグレー」加藤シゲアキ(角川文庫)
- 2016.01.03 「二進法の犬」花村萬月(光文社文庫)
『仮面の告白』三島由紀夫 新潮文庫
己の性癖に葛藤と煩悶を繰り返した少年時代。
この時代の描写が秀逸。
艶めかしさと婀娜めかしさ、そしてその背徳感に身震いを覚える。
紡がれる言葉の、なんと美しいこと。
隠匿すべき衝動に震える少年は、いつしか処世術としての演技を身に着ける。
同性への衝動を周囲の人間に気取られぬためには、
仮面を被った道化になるしかなかったのかもしれない。
女を愛せるという演技をし、園子とのつながりを欲し続けたのは、
「ふつう」で在りたいという願望の表れか。
マイノリティであるが故に、孤独で在ること畏れたのかもしれない。
人は画一的である必要はない。
だが、それは、今の時代であるからこそ言える言葉なのだろう。
鬼気迫るものが薄れてきた後半で、ようやく息が付けたものの、
前半部を読みながら、比喩ではなくクラクラしました。
言葉に絡みつかれるような、そんな感覚に囚われて。
内容紹介
「私は無益で精巧な一個の逆説だ。この小説はその生理学的証明である」と作者・三島由紀夫は言っている。女性に対して不能であることを発見した青年は、幼年時代からの自分の姿を丹念に追求し、“否定に呪われたナルシシズム"を読者の前にさらけだす。三島由紀夫の文学的出発をなすばかりでなく、その後の生涯と、作家活動のすべてを予見し包含した、戦後日本文学の代表的名作。
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「世界の名詩を読みかえす」(いそっぷ社)
美しいイラストと読み継がれてきた名詩の素敵なコラボ。
一気読みするものではないなぁ、と、
数日かけて作家たちの言葉を追いかけました。
ヘッセはやさしくて淋しい。
リルケは愛。
ゲーテは力強さ。例えるなら父。
ハイネは繊細。
ケストナーは皮肉屋。
ボードレールは絵画的。
ランボーは挑発的。
カフカは幻想。
ブレヒト、グラス、ホイットマンははじめましての作家さんだったため
具体的なイメージが浮かびませんでした。
ということは、私の彼らに対するイメージは、収められている数編の詩からというよりは、
今まで読んできた彼らそのもののイメージということなんですね。
ヘッセとランボーは私の中では別格。
鎌倉散策中に素敵な建物に出会いました。
「あら、カフェかしら?」
と、足を向けたその建物は「葉祥明美術館」
そこで手にしたのがこの本です。
大好きな作家さんの胸打たれる詩が素敵なイラストに彩られていて、
うっかり涙ぐんでしまいまして(^^;……自分土産にお持ち帰りした本です。
改めて読んでうっとりしました。
内容(「BOOK」データベースより)
青春のはかなさを叙情豊かにうたったヘッセ、恋愛のロマンチシズムにただよう寂しさをつづったハイネ、人間の卑小さをわらい、社会に怒りをむけたケストナー、人生の暗闇を美しい言葉で描いたボードレール、自然の雄大さを素朴な筆致で浮き彫りにしたホイットマン、…ほか、リルケ、ゲーテ、ランボー、カフカ、ブレヒト、グラスの名詩45編を収録。
「チーム」堂場瞬一(実業之日本社文庫)
一生のうちでただ一度、刹那に賭ける瞬間があってもいい。
走るときは一人。
だけど、孤独ではない。
限界を超える力を振り絞って走る彼らを支えるのは、
仲間の存在であり、声援であり、そして自分自身を信じる気持ちである。
その原動力は、チームメイトとの信頼と友情。
同じ高みを目指す以上、ある種の一体感は存在する。
勝つためには、そうでなければならない。
学連選抜。
にわかに集まった彼らが目指した「優勝」という最高点。
温度差がある中で反発しあながらもまとまっていく彼らの在り方がとても良かった。
非情に徹しきれなかった彼ら。
同じ痛みを感じて一皮剥けたエース。
ライバルであり、親友である存在。
そして、浦。
最後の山城の言葉に落涙でした。
「ここが限界だと思った瞬間から、本当のスタートが始まるんです」
そう言っていたイモトの言葉を思い出した。
堂場さんは刑事ものばかり読んでいたけど、
スポーツ小説も安定の読みやすさと面白さでした。
野球!野球も気になります!
内容(「BOOK」データベースより)
箱根駅伝出場を逃がした大学のなかから、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、いわば“敗者の寄せ集め”の選抜メンバーは、何のために襷をつなぐのか。東京~箱根間往復217.9kmの勝負の行方は―選手たちの葛藤と激走を描ききったスポーツ小説の金字塔。巻末に、中村秀昭(TBSスポーツアナウンサー)との対談を収録。
「閃光スクランブル」加藤シゲアキ(角川文庫)
【そこで生きられるのはよっぽどの天才か、鈍感な人間だけなんです】
「有名税」という言葉が頭を過った。
プライベートが切り売りされることは、
芸能人で在り続けるための代償のようなものなのか。
ゴシップになりそうなネタには喰いつかれても、
華々しい笑顔の裏の、血の滲むような思いが顧みられることはない。
アイドルで在り続けることはかくも大変だ。
程度の差こそあれ、日常で惑い、悩むのは、芸能人も一般人も変わらない。
人生が壊れるほどの衝撃。
自らを傷つけなければ収まらない衝動。
呑みこんだ毒や哀しみは癒えなくとも、吐き出すことはできる。
要は、その相手がいるかどうか、なのかな。
「取り戻そう。これからの日々を」
モノクロの世界から鮮やかな世界への脱却。
お互いにとってプラスに作用するような出逢いはとても素敵だと思う。
スクランブル交差点での決別のシーンがとても好き。
頑張って生きるあなたたちにエールを。
内容(「BOOK」データベースより)
人気アイドルグループのメンバー・亜希子は、世代交代の現実に思い悩み大物俳優と不倫を続けている。最愛の妻を亡くし、ゴシップカメラマンとして生計を立てる巧はそのスクープを狙っていた。2人はある事件を機に出会い、思いがけない逃避行が始まる。瞬く光の渦の中で本当の自分を見つけられるのか。渋谷スクランブル交差点で激しく交錯するパパラッチと女性アイドルの人生―愛と再生を描く疾走感あふれるエンタメ小説。
「いつか時が汝を」北方謙三(徳間文庫)
どこまでもどこまでも渇いていて、ただ一点だけがひどく熱い。
端的に述べるなら、そんな物語だ。
ぐっと引き込まれる冒頭。
感覚に馴染んだ文体。
自らに課したルールをストイックなまでに守り通したシンゴ。
その仕事に関して、彼は誰よりもプロフェッショナルだった。
狂いのない時計のように正確に刻まれる彼の日常の中で、
クリスの存在だけが、イレギュラーだったように思える。
だが、彼がいてこそ、動き出した「時」。
「死ぬべき時人は死ぬ。死ぬべきでない時は、死にたがっても死なない」
この本に限らず、一貫して貫かれる北方の哲学。
手向けの花は白いバラを。
この表紙は秀逸だと思います。
人気(ひとけ)のまったくない湖畔のキャンプ場。
イナゴを捕まえたのはてっきり食用だと思っていたわけですが……
そうですか。釣り餌でしたか。
ちなみに会社でその話をしたら
「え?イナゴを食べるのは魚の方なんですか!?」と返ってきて安心しました(笑)
いや、イナゴの話がしたいわけじゃなく。
お友達からのプレゼント本。ありがとうございました♪
内容(「BOOK」データベースより)
アメリカ南西部。綿の実が弾け、夏の雪が降る田舎町。時計修理を請け負い、釣りとバラ作りを楽しみに静かな日々を送る私は、年に一度、特殊な仕事を引き受ける。過去を引きずりながら異国の町で暮らす男の生き様。珠玉のハードボイルド。
「友罪」薬丸岳(集英社文庫)
人と人。
出会った時から始まる繋がり。
人となりを知れば、情が移る。
相手がどんな過去を背負っていても
知らなければ、過去は現在に干渉しない。
けれども。
殺されてしまった人たちには、その先の人生はないことを忘れてはならない。
彼らを失った人たちの悲しみも、永遠に癒されない。
己が犯した罪から目を背け、逃げることは許されない。
贖罪は生涯しつづけなければいけない。
心情的に殺人者を忌避することは致し方ないことだろう。
だが、それよりも罪深いのは裏切り。
そして、さらに忌まわしいのは関係のない興味本位の者たちによる、プライバシーの侵害。
「あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか?」
その問いに関する答えは、実際に当事者になってみなければわからない。
結局は当人同士の“関係性”に依ってしか判断できないものだろう。
問いかけられることすべてが、終始重くて苦しかった。
まともに向き合うのが辛かったので、感情を遮断して読むしかなかった。
それにしても益田……
内容(「BOOK」データベースより)
あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか?埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり―。少年犯罪のその後を描いた、著者渾身の長編小説。
「潮騒」三島由紀夫(新潮文庫)
【正しいものが、黙っていても必定勝つのや】
煌めく陽の光。海の匂い。そして、海の奏でる潮騒。
余計な物の一切を削ぎ落としたかのような島での暮らし。
その中で育まれた若い二人の恋は、文字通りの純愛。
一途で誇らしげで、濁りがないから美しい。
下世話な噂をされても、逢瀬を禁じられても。
彼らはどこまでも凛として、胸を張っていた。
出過ぎず、出しゃばらず。
それでも息子の恋を案じる母の心遣いもあたたかかった。
盲目的に突っ走ることなく、周囲に理解を得ながら
ゆっくりと育まれていった恋。
青年から成年へ。
とても自然に、そして見事に変貌を遂げた瞬間のように感じられる幕引きがいい。
情景描写がとても美しく、登場人物たちが生命力に満ち溢れている。
海女たちが行商からお買い物をするシーンは、とても共感できます!
とりあえず蜂はとても良い働きをしたと思います。
内容紹介
文明から孤絶した、海青い南の小島――潮騒と磯の香りと明るい太陽の下に、海神の恩寵あつい若くたくましい漁夫と、美しい乙女が奏でる清純で官能的な恋の牧歌。人間生活と自然の神秘的な美との完全な一致をたもちえていた古代ギリシア的人間像に対する憧れが、著者を新たな冒険へと駆りたて、裸の肉体と肉体がぶつかり合う端整な美しさに輝く名作が生れた。
「美しさと哀しみと」川端康成(中公文庫)
【そう言うけれど、家庭ってけっこう堅固なものよ】
日本語の美しさにぐっと引きつけられる。
濡れ場ですら上品に書き上げるその語彙力と筆力には、
魅せられるわけですが、
余計な事しかしなかった不倫男とちょっと大丈夫?という変質的な女に
どうしても感情移入ができずに読了。
身勝手な思い込みで暴走したけい子には嫌悪感しかなかったし、
彼女の危うさと妖しさに気付いていながらも、
窘めることのできなかったいい年した大人たちにも、悲劇の責任はある。
大木と音子が恋に落ちた経緯がわかれば、
受け止め方はもう少し違ったのかなぁ、とは思いますが、
結果ありきだと、どうしたって大木の常識に疑問を抱かざるを得ない。
頑張っていいとこ探しをしようとしたけど、できなかった敗北感。
この憤り感満載の読後感がイヤで、この時代の作品は避けてたんだけど、
苦手分野はやっぱり苦手ってことかなぁ。
脱毛クリームっていったいいつから存在するのかしら?と思って調べたら
なんと、紀元前4000年からの歴史があったんですねー。
雑学一つ増えました。
「ピンクとグレー」加藤シゲアキ(角川文庫)
【やるしかないの。やらないなんてないからね】
人と人。
自分の視線、自分の思考を通してしか理解できない他人の姿は
ある意味、反射した光の色と同じなのかもしれない。
その先にある真実の姿は、こちらからでは決して伺えない。
すれ違ってしまった二人。
絶対的な訣別。
そして運命的な再会。
途中から涙が止まらなくなってしまった私は、彼らに何を刺激されたのだろう?
交錯する過去と現在。
第三章の冒頭で語られる光景がどういうことなのか。
理解した瞬間がとてつもなく苦しかった。
駆け抜けた先に何も見出すことのできなかった彼の悲哀。
どうにもならない。それもまた、人生。
だけどやっぱりやるせない。
もうちょっと、もうちょっとだけ、楽に呼吸することができればよかたのに。
同じマンションに住む同級生三人と、
ちょっと斜めに構えた転校生が仲良くなる瞬間がとても良かった。
ほんの些細な事で子供は打ち解ける。
そこから語られる彼らの絆がとても微笑ましくて、羨ましくもある。
そして、針が刺さったみたいな読後の余韻がたまらない。
その痛みをずっと噛みしめていたい、と思うのは多分歪んでると思うけど、
正直な思いだったりします。←つまり、この話好き。
内容(「BOOK」データベースより)
大阪から横浜へ越してきた小学生の大貴は、マンションで同い年の真吾と出会う。性格は全く違う2人だったが惹かれあい、親友に。やがて高校生になった2人は、雑誌の読者モデルをきっかけに芸能活動をスタート。同居も始めるが、真吾だけがスターダムを駆け上がっていくことで2人の仲は決裂してしまうが…。ステージという世界の魔法、幻想に魅入られた幼なじみの2人の青年の愛と孤独を鮮やかに描いた、切ない青春小説。
「二進法の犬」花村萬月(光文社文庫)
【好きな奴には尽くす。嫌な奴は殺す。それだけです】
白か黒か。0か1か。
甘えと曖昧さを決して許さない人間たちの生き様の、何と苛烈で、潔いことか。
乾や倫子の放つ、闇をより際立たせる昏い輝きには、妥協も逃げもない。
だから惹かれる。強烈に。
自分の狡さや弱さを誰よりも認識していた鷲津。
目を背けがちな自己認識から逃げなかったからこそ、
玄人とは相容れないはずの鷲津が彼らに受け入れられたのだと思う。
悲劇を招いたのは、白にも黒にもなりきれなかった彼の甘さ故だ。
凄惨な血讐。
道具にされた1号が哀れでならない。
「今夜、愉しみにしています」
ストイックさを最後まで貫いた中嶋に涙だった。
絶対的な恐ろしさと、どこまでも包み込むような包容力。
狡猾な計算高さと、子供のような無邪気さ。
相容れないものを抱え込んだ男の、徹底的な二進法。
怖いけど惹かれる。
そんな彼から目が離せませんでした。
そして中嶋!中嶋!!
ものっすごいイイ男だと思います。
ひとりできゅんきゅんしてたら、みんなで中嶋を取り合っていました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
家庭教師・鷲津兵輔が、生徒として引き受けることになった女子高生の倫子。彼女の父は、武闘派乾組組長・乾十郎だった。鷲津は、乾組という組織、十郎の「白か黒か」を徹底する生き様、そして倫子の凛とした存在に、次第に自分の所在を見いだしていく。博打、抗争、性愛…激流のなか、鷲津が手にしたものは―!全てのひとが心に抱える深い闇を重厚に切なく描く傑作巨編。