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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「ソロモンの偽証 第Ⅲ部 法廷 下巻」宮部みゆき(新潮文庫)



そして、判決。
陪審員の生徒たちの見事な評決と事実認定。
個人的にはこれしかない、という判決でした。
自分だけが苦しんでいると思っていたら、他人の痛みは理解できない。
自分の苦しみに他人を巻き添えにするようなことを、してはいけない。
差し伸べられた手はあったのに。
これは、振り払った彼自身の咎だ。
真相を明らかにしようと思った動機は、
事件の動機をすべての人に知ってもらいたいと思ったから。
それは彼の英断であり、勇気でもあった。
誰かが深く傷つくことのない結末でよかった。
この事件と裁判に係ったすべての子どもたちが、
前に進むために光を得られる裁判でよかった。

「友達になりました」
すっと、光がさすような言葉だと思いました。
裁判を通して子どもたちの成長が見て取れたのが、本当にうれしかった。




内容(「BOOK」データベースより)

ひとつの嘘があった。柏木卓也の死の真相を知る者が、どうしても吐かなければならなかった嘘。最後の証人、その偽証が明らかになるとき、裁判の風景は根底から覆される―。藤野涼子が辿りついた真実。三宅樹理の叫び。法廷が告げる真犯人。作家生活25年の集大成にして、現代ミステリーの最高峰、堂々の完結。20年後の“偽証”事件を描く、書き下ろし中編「負の方程式」を収録。

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「ソロモンの偽証 第Ⅲ部 法廷 上巻」宮部みゆき(新潮文庫)



【俺らは仲間だったんだから】

事件の核心に触れる裁判の始まり。
これまで検証してきて読み手が既に把握している事実の合間に挟んでくる、
今初めて知る事実。
多くの人物たちの視点から多角的にとらえられる事象。
それがあるから、既知の事実確認部分にも飽きることなく読み進め、
最後の最後で驚かされました。
人は、孤独の中に在っては真っ当に人生を歩んでいけないような気がする。
多くなくてもいい。
たった一人でも、自分のことを理解してくれる友達、
同じものを見て笑える友達、些細な事を話せる友達。
そんな友達がいてくれてこそ、
誰かのぬくもりが傍らにあってこそ、笑っていられるんだろうな、と思いました。

さて、次巻でいよいよ最終巻。
私が嘘だと認識していることは、果たして本当に嘘なのか?
私の思い描いた真実は、果たして本当の真実に寄り添っているのか?
気になります!



内容(「BOOK」データベースより)

空想です―。弁護人・神原和彦は高らかに宣言する。大出俊次が柏木卓也を殺害した根拠は何もない、と。城東第三中学校は“問題児”というレッテルから空想を作り出し、彼をスケープゴートにしたのだ、と。対する検事・藤野涼子は事件の目撃者にして告発状の差出人、三宅樹理を証人出廷させる。あの日、クリスマスイヴの夜、屋上で何があったのか。白熱の裁判は、事件の核心に触れる。

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「ソロモンの偽証 第Ⅱ部 決意 下巻」宮部みゆき(新潮文庫)



【彼はここにいる。僕らと一緒に。今、この時は】

たくさんの人に話を聞き、検証し、次第に浮かび上がってくる事実の断片。
弁護側、検察側の当人の胸の内。
それらをすべて繋ぎあわせることのできる「読み手」にしか推測し得ない「真実」は、
果たして彼らの知りたい真実か否か。
それが推測でしかあり得ない以上考えることに意味はなく、読み進めるしかない。
誰かが今以上に傷つく裁判になりはしないかと、胸が苦しくて仕方がない。
秘密を胸の内に抱え込んだままの「彼」が真実を口にする時。
彼らはいったい何を知るのだろう?
抱えたものが重くて苦しんでいるのなら、楽になってくれるといいと、願います。

吾郎&一美のカップルの存在は、なんだかとっても和みます。
一美の考え方にははっとさせられました。


内容(「BOOK」データベースより)

いよいよ動き出した「学校内裁判」。検事となった藤野涼子は、大出俊次の“殺人”を立証するため、関係者への聴取に奔走する。一方、弁護を担当する他校生、神原和彦は鮮やかな手腕で証言、証拠を集め、“無罪”獲得に向けた布石を着々と打っていく。次第に明らかになる柏木卓也の素顔。繰り広げられる検事と弁護人の熱戦。そして、告発状を書いた少女が遂に…。夏。開廷の日は近い。

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「ソロモンの偽証 第Ⅱ部 決意 上巻」宮部みゆき(新潮文庫)



【現実に向き合う準備はできたか?】

知りたいのは真実。たった一つの真実。
この事件で傷ついた人々が、前に進むために。
たとえ傷は残っても、せめてその傷が膿んでしまわないように。
多くの人の思惑が介入した結果、見えなくなってしまった真実。
複雑に絡まった糸を紐解くために、少年・少女たちは当時の状況調べ始める。
嘘を貫こうとする人。
知っていることを隠している人。
懸命に真実を探求する人。
少年の死の真相を探っていたはずが、きな臭い放火事件の真相も見えてきて、
事態はますます混沌としてくる。
聡明すぎる少年の真意は?
彼女の嘘は暴かれるのか?
続き、気になります!

茂木をやりこめた樹里は天晴れ。
俊次の言い分がここで初めて明かされて、彼もまた、被害者なんだなぁ、と。
噂と真実は違う。
そのことを忘れてはいけない。


内容(「BOOK」データベースより)

二人の同級生の死。マスコミによる偏向報道。当事者の生徒達を差し置いて、ただ事態の収束だけを目指す大人。結局、クラスメイトはなぜ死んだのか。なにもわからないままでは、あたし達は前に進めない。だったら、自分達で真相をつかもう―。そんな藤野涼子の思いが、周囲に仲間を生み出し、中学三年有志による「学校内裁判」開廷が決まる。求めるはただ一つ、柏木卓也の死の真実。
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「ソロモンの偽証 第Ⅰ部 事件 下巻」宮部みゆき(新潮文庫)



【わかっているのは、時を巻き戻せないということだけだ】

それを「隙」と言うのなら、私たちはみんな隙だらけだ。
その「隙」に「悪意」をもってスルリと入り込まれたら、即座に太刀打ちできる術はない。
日がな一日身構えて生きているわけではなく、
ましてや、悪意に晒されるとは、思ってもいないのだから。
結果、対応は後手に回り、悪意に振り回され、新たに失われてしまった命がある。
信じたくない真実を塗り固める嘘。
誰かを陥れるための嘘。
知っていることを覆い隠す沈黙。
叫んでも届かない真実。
負の連鎖が呼び込む厄災は止まらない。
そして少女は決断する。
自らの手で、真実を見つけ出すことを。

健一をこちら側に引き留めることができてよかった。
行夫は本当によくがんばった。
そしてやっぱりメディアは便利だけど、
使い方を誤ったら本当に怖いツールだなぁ、と思いました。


内容(「BOOK」データベースより)

もう一度、事件を調べてください。柏木君を突き落としたのは―。告発状を報じたHBSの報道番組は、厄災の箱を開いた。止まぬ疑心暗鬼。連鎖する悪意。そして、同級生がまた一人、命を落とす。拡大する事件を前に、為す術なく屈していく大人達に対し、捜査一課の刑事を父に持つ藤野涼子は、真実を知るため、ある決断を下す。それは「学校内裁判」という伝説の始まりだった。

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「ソロモンの偽証 第Ⅰ部 事件 上巻」宮部みゆき(新潮文庫)



【彼のいいところを見つけてしまった。
 その発見の喜びが、涼子の頬を緩ませていった】

親の心、子知らず。そして、子の心、親知らず。
理解しあい、信頼しあう家族がある一方で、噛み合わない家族は哀しいほどに噛み合わない。
物分かりが良くて、物事が明確に見えている子どもほど、
息をすることが大変そうな学校生活。
そんな中で起こった一人の少年の死。
他人をどれだけ傷つけても意に介さない子供たち。
その子供を諌めようともしない大人たち。
逆恨みもいいところの身勝手な理由で隣人に敵意を抱く女。
自己の在り方を模索する子供たち。
冷静に事態を収めようと尽力する大人たち。
少年の死をきかっけに、彼らの人生がどう揺れ動いていくのか。
次巻へ。

嫌な面を見せられてイラッとして、良いところを見つけて嬉しくなる。
パーフェクトな人間はいない以上、人付き合いは良いところも嫌なところも含めて
その人と一緒にいたいと思うかどうかだよなぁ、とぼんやり思ってみました。
でも家族は選べない。
子どもは親がいなければ生きていけない。
突きつけられたそれぞれの家族像に、色々考えさせられました。

内容(「BOOK」データベースより)

クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か。自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった―。一つの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、死の真相を求める生徒達を描く、現代ミステリーの最高峰。

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「嘘」北國浩二



【いまさら過去を変えることはできん。
 だが、ひょっとしたら、明日は変えることができるかもしれん】

真実の世界があまりにも辛くて、耐えがたいものだから。
だから、人は嘘をつく。
逃げるために。守るために。幸せになるために。
それは、優しい嘘。本当の幸せを得るための嘘。
その嘘を責めることは、誰にもできない。
認知症と虐待。
重いテーマを軸に物語は展開する。
認知症を発症しなければ、再会は叶わなかったであろう親娘。
嘘から始めなければ親子になりえなかった女と少年。
嘘からはじまった三人での家族生活。
次第に打ち解けていく彼らの姿は確かに親子だった。
だが、歪な悪意がそんな幸せを一瞬にして粉々に打ち砕いてしまう。
それでも、彼らの絆は壊れなかった。そのことに心から安堵する。

内容(「BOOK」データベースより)

あの夏、私たちは「家族」だった―。息子を事故で亡くした絵本作家の千紗子。長年、絶縁状態にあった父・孝蔵が認知症を発症したため、田舎に戻って介護をすることに。そんな中、事故によって記憶を失った少年との出会いが、すべてを変えていく。「嘘」から始まった暮らしではあるものの、少年と千紗子、孝蔵の三人は歪ながらも幸せな時を過ごす。しかし、破局の足音が近づいてきて…。ミステリ作家が描く、感動の家族小説。

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「人間失格」太宰治(新潮文庫)



自分を偽りながら生きていく世界での孤独感。
どこにも行き場がない閉塞感。
それでも、彼には行く先々で受け止めてくれる女がいて、
見捨てずにいてくれた家族がいた。
どうにかしようがあったのに、と思う。
でも、どうにもなりようがなかったのは、
結局は彼自身がどうにかなることを望まなかったからだ。
周囲に心を許さず、不運にも見舞われ、
次第に追い込まれていく葉蔵に共感しすぎて、
息が詰まりそうになった10代の頃。
自分が年を重ねたせいなのか、精神が健全になった?せいなのか。
始終客観的に読み切ってしまったことが少し淋しかった。

16歳の私の感想を引っ張り出してみた。←日記代わりに読書記録つけてたんです(笑)
綴られているのは葉蔵に対する強い共感と激しい反発。
存在意義を模索していた頃の青臭い言葉を延々と吐き出しつつ、
最後の一文は「絶対に逃げない」で結ばれていて、
当時先の見えない人生と闘っていたんであろう自分の負けん気に笑ってしまった。


内容紹介

「恥の多い生涯を送って来ました」。そんな身もふたもない告白から男の手記は始まる。男は自分を偽り、ひとを欺き、取り返しようのない過ちを犯し、「失格」の判定を自らにくだす。でも、男が不在になると、彼を懐かしんで、ある女性は語るのだ。「とても素直で、よく気がきいて(中略)神様みたいないい子でした」と。だれもが自分のことだと思わせられる、太宰治、捨て身の問題作。

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「最後の晩ごはん お兄さんとホットケーキ」椹野道流(角川文庫)



【『みんな』が自分の周りにいてくれるってのが、
 幸せなんだよなあ、きっと】

親子でも兄弟でもその関係は個と個で、
道を正すことはままあっても、
価値観を押し付けることは間違っている。
修復できない程に行き違ってしまった兄弟の関係。
そこに至るまでにはそれ相応の理由があって、
それなのに関係の修復をちらつかせる奈津の存在に、
終始苛立ちを感じたけれども。
病室で兄弟がホットケーキを焼くシーンでじんわりしてしまいました。
おせっかいをやく人がいなければ、彼らはこんな時間を持てなかった。
でもそれは、彼らが家族だったからこその歩み寄り。
他人だったら多分無理だった。
だからこそ、これからの時間を大事にしてほしいなーと思いました。

そして明らかになった夏神さんの過去。
彼の後悔と罪悪感は多分、一生消えないと思うけれども。
「俺のことを助けるために生き残った!」と言った海里。
「自分の命も加えてほしい」と言ったロイド。
みんな素敵だね。
今回もご馳走が大変美味しそうでした!


内容(「BOOK」データベースより)

兵庫県芦屋市、元イケメン俳優の五十嵐海里は、夜だけ営業の定食屋「ばんめし屋」で、料理人見習いとして働き始めた。店長・夏神留二の謎めいた過去が気になるが、親しき中にも礼儀あり。打ち明けてもらえる日を待っている。そんなある日、獣医だという女性客がやってきた。彼女はなんと、海里の兄の婚約者。しかし海里と兄とは派手にケンカ別れをしたきりで…。とびきり温かく、優しい絆がここにある。泣けるお料理青春小説。

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「ハツカネズミと人間」ジョン・スタインベック(新潮文庫)



【だって、おれにはおめえがついてるし、おらにはおめえがついている】

そしてジョージは夢を語る。
安全装置を外した拳銃の引き金に指をかけて。
もう、手の届かなくなってしまった夢を語る。
互いに支えあいながら生きてきたレニーを苦しみから救う為に
夢を語りながら引き金を引く。
どの場面を顧みても仕方なくて、仕方ないからこそやるせない。
「こんなところはいやだ」と言ったレニーの言葉が重くのしかかる。
ジョージの選択を理解したスリムの存在は、
果たしてジョージの傷を和らげることはできるだろうか?
大地と共に泥臭く生きる男たちの悲劇的な物語。
個人的には何度読んでも胸が軋む不朽の名作。

【ガーディアン必読1000冊】
初読の時の感想はレニーはジョージの行為を全く予測できないいまま死んでいった、
と書いてあったけど。
もしかしたらレニーはこれから起こることをわかっていたのかな?と思った今回。
余計に切ない。
再読なのに涙腺が壊れました。



内容(「BOOK」データベースより)

一軒の小さな家と農場を持ち、土地のくれるいちばんいいものを食い、ウサギを飼って暮らす―からだも知恵も対照的なジョージとレニーという二人の渡り労働者の楽園への夢。カリフォルニアの農場を転々とする男たちの友情、たくましい生命力、そして過酷な現実に裏切られて起こる悲劇を、温かいヒューマニズムの眼差しで描く。戯曲の形式を小説に取り入れたスタインベックの出世作。

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