忍者ブログ

きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「ピンクとグレー」加藤シゲアキ(角川文庫)



【やるしかないの。やらないなんてないからね】

人と人。
自分の視線、自分の思考を通してしか理解できない他人の姿は
ある意味、反射した光の色と同じなのかもしれない。
その先にある真実の姿は、こちらからでは決して伺えない。
すれ違ってしまった二人。
絶対的な訣別。
そして運命的な再会。
途中から涙が止まらなくなってしまった私は、彼らに何を刺激されたのだろう?
交錯する過去と現在。
第三章の冒頭で語られる光景がどういうことなのか。
理解した瞬間がとてつもなく苦しかった。
駆け抜けた先に何も見出すことのできなかった彼の悲哀。
どうにもならない。それもまた、人生。
だけどやっぱりやるせない。
もうちょっと、もうちょっとだけ、楽に呼吸することができればよかたのに。

同じマンションに住む同級生三人と、
ちょっと斜めに構えた転校生が仲良くなる瞬間がとても良かった。
ほんの些細な事で子供は打ち解ける。
そこから語られる彼らの絆がとても微笑ましくて、羨ましくもある。
そして、針が刺さったみたいな読後の余韻がたまらない。
その痛みをずっと噛みしめていたい、と思うのは多分歪んでると思うけど、
正直な思いだったりします。←つまり、この話好き。


内容(「BOOK」データベースより)

大阪から横浜へ越してきた小学生の大貴は、マンションで同い年の真吾と出会う。性格は全く違う2人だったが惹かれあい、親友に。やがて高校生になった2人は、雑誌の読者モデルをきっかけに芸能活動をスタート。同居も始めるが、真吾だけがスターダムを駆け上がっていくことで2人の仲は決裂してしまうが…。ステージという世界の魔法、幻想に魅入られた幼なじみの2人の青年の愛と孤独を鮮やかに描いた、切ない青春小説。

拍手

PR

「二進法の犬」花村萬月(光文社文庫)



【好きな奴には尽くす。嫌な奴は殺す。それだけです】

白か黒か。0か1か。
甘えと曖昧さを決して許さない人間たちの生き様の、何と苛烈で、潔いことか。
乾や倫子の放つ、闇をより際立たせる昏い輝きには、妥協も逃げもない。
だから惹かれる。強烈に。
自分の狡さや弱さを誰よりも認識していた鷲津。
目を背けがちな自己認識から逃げなかったからこそ、
玄人とは相容れないはずの鷲津が彼らに受け入れられたのだと思う。
悲劇を招いたのは、白にも黒にもなりきれなかった彼の甘さ故だ。
凄惨な血讐。
道具にされた1号が哀れでならない。
「今夜、愉しみにしています」
ストイックさを最後まで貫いた中嶋に涙だった。

絶対的な恐ろしさと、どこまでも包み込むような包容力。
狡猾な計算高さと、子供のような無邪気さ。
相容れないものを抱え込んだ男の、徹底的な二進法。
怖いけど惹かれる。
そんな彼から目が離せませんでした。
そして中嶋!中嶋!!
ものっすごいイイ男だと思います。
ひとりできゅんきゅんしてたら、みんなで中嶋を取り合っていました(笑)

内容(「BOOK」データベースより)

家庭教師・鷲津兵輔が、生徒として引き受けることになった女子高生の倫子。彼女の父は、武闘派乾組組長・乾十郎だった。鷲津は、乾組という組織、十郎の「白か黒か」を徹底する生き様、そして倫子の凛とした存在に、次第に自分の所在を見いだしていく。博打、抗争、性愛…激流のなか、鷲津が手にしたものは―!全てのひとが心に抱える深い闇を重厚に切なく描く傑作巨編。

拍手

「機龍警察[完全版]」月村了衛(早川書房)



【敵は警察の中にいるからだ】

警察組織の中に属する者の誇りとは?
仕事に賭ける熱意とは?
「敵は警察の中にいる」
この言葉で終わるこの物語は、壮大な物語の序章。
大人げなく仲間を罵倒し、捜査をぶち壊す警察がいる一方で、
淡々と任務を遂行する三人の傭兵。
抱えた過去から目を逸らさず、自らをも俯瞰するような姿。
孤独と疎外感を抱えたユーリ。
どこまでも深い闇の中にいるライザ。
彼らの方がよっぽど命がけで戦っている。
警察仲間にやっかみの入った理不尽な敵意を向けられながらも、
熱意を失わない夏川や由紀谷ら捜査員の存在も忘れてはならない。
再読して改めて気づかされる、ちりばめられた伏線。
今後の展開が楽しみだ。

単行本に収録された著者の「インタビュー・エッセイ再録」は、
彼のこの物語に対する熱意と真摯な姿勢、
執筆にあたって何に影響され、どんなことを思いながら文章を生み出しているのか。
そういったことを垣間見ることができて、興味深かった。
今年最後の感想です。
機龍警察にはじまり、機龍警察に終わった一年でした!






内容(「BOOK」データベースより)

テロや民族紛争の激化に伴い発達した近接戦闘兵器・機甲兵装。新型機“龍機兵”を導入した警視庁はその搭乗員として3人の傭兵と契約した。警察組織内で孤立しつつも彼らは機甲兵装による立て籠もり現場へ出動する。だが事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた…日本SF大賞&吉川英治文学新人賞受賞の“至近未来”警察小説シリーズ第1作を徹底加筆した完全版。必読の特別企画多数収録

拍手

「クリスマスキャロル」ディケンズ(新潮文庫)



過去の自分と向き合い、現在の自分の境遇を突きつけられ、未来の自分を知る。
幽霊たちに導かれて心を入れ替える機会を与えてもらえたスクルージは幸せだと思う。
目の前を流れる事象に心を痛めたのは、まだ良心が残っていた証。
ボブもフレッドもたぶんマーレイも、スクルージを見捨ててはいなかった。
やっぱり彼は幸せだと思う。
どん底に落ちることなく、人の心のあたたかみに気づいて
彼らの想いに報いることができたのが、スクルージの一番の幸せかな。
因果応報。
この言葉は真理だと思う。
だから私は、ボブやフレッドの想いが通じたことこそが、なんだか喜ばしかった。

ぶっちゃけ、スクルージの人生は自業自得というか、因果応報というか。
自分でそういう道を選択して歩いていったんでしょ?と思うわけで、
彼の周りの人たちの思いが報われたってことが、私的なこの本の感動ポイントでした。
……って、ちょっとズレてるかしら?(笑)


内容(「BOOK」データベースより)

ケチで冷酷で人間嫌いのがりがり亡者スクルージ老人は、クリスマス・イブの夜、相棒だった老マーレイの亡霊と対面し、翌日からは彼の予言どおりに第一、第二、第三の幽霊に伴われて知人の家を訪問する。炉辺でクリスマスを祝う、貧しいけれど心暖かい人々や、自分の将来の姿を見せられて、さすがのスクルージも心を入れかえた…。文豪が贈る愛と感動のクリスマス・プレゼント。

拍手

「幸福な食卓」瀬尾まい子(講談社文庫)



読後にジワリと涙がこみ上げました。
不器用でも、回り道をしても、懸命に前にむかって歩いていこうとする人たちの物語。
ちょっとびっくりする宣言も、おおらかに受け入れる家族。
だけど、それは彼らがとても苦しい思いをしてきたから。
奔放なようで、実は誰よりも家族のことを考えているから。
そこここから滲むやさしさが、時に切なくてあたたかい。
「家族は作るのは大変だけど、その分めったになくならない」
懸命に言葉を紡ぐヨシコの慰めは、胸に響いた。
母だけは私を裏切らないと、どこかで確信できていた若かりし頃の人生の迷走期。
だから安心して迷えたし、決断もできた。
母に心から感謝ですね。
大浦くんの存在は本当に癒しでした。

「どんなにショッキングなことがあっても、日常はきちんと進んでいく」
それが、人の営み。
わかっていても、哀しい時は哀しい。
でも、涙は我慢する必要はないと思います。


内容(「BOOK」データベースより)

佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて…。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。

拍手

「一鬼夜行 花守り鬼」小松エメル(ポプラ文庫)



いつの時代も変わらずに咲き誇る桜の花。
ヒラヒラと舞い踊る蝶。酒を酌み交わす人々の喧騒。
ありふれた光景に身を置きながら、あちら側とこちら側を行き来する
不思議な浮遊感。
行きつ戻りつしながら垣間見られるのは綾子の過去。
美雪の想い、生い立ち。そして、喜蔵の想い。
誰もが何かに傷ついて、苦しんで、惑い悩んで。
時に笑顔を忘れてしまうけれども。
互いに手を差し伸べあい、思いやり、
そうやって笑顔を取り戻すことのできる仲間に囲まれた彼らの在り方が
とても素敵だと思いました。
小春の身の置き方が切ないけど、皆ちゃんと小春のことを思ってくれているのがうれしかった。

高市と桃爺のエピソードがとても好き。
真っ正直な誠意ってちゃんと伝わるんだよね。
小春の意図に気付いて
眠るまいと必死で腿を抓る喜蔵と小春のやり取りもとても好き。
なんだかんだこの二人は良いコンビだと思います。


内容(「BOOK」データベースより)

人嫌いの若商人・喜蔵が営む古道具屋を、旅の若者・高市が訪ねてくる。一緒に花見へと繰り出した妹の深雪たちを追いかける羽目になった喜蔵だが、料理だけを残して皆の姿は消えていた。不可思議な一日に翻弄される喜蔵を、待ち受けていたのは―?からくり人形が語り出す深雪の秘めた想い。綾子のかなしい過去。小春の意外な思い出…桜の中でそれぞれの心が交錯する。涙あり、笑いありの明治人情妖怪譚シリーズ第三弾。

拍手

「本当の戦争の話をしよう」ティム・オブライエン(文春文庫)



連なるいくつもの短編で綴られるのは、戦場での若き兵士たちの日常。
故国から遠く離れたヴェトナムの地で、
友と笑いあい、ジョークを交わし、彼女の話をする。
けれども、そこには地雷があり、砲撃があり、ふいに訪れる死がある。
逃げ出したくなるような恐怖心を押し隠しての行軍。
友の死に責任を感じ、殺した男の死を背負い、
帰国しても、彼らの心の片隅に常に在りつづける戦場。
個人的には『レイニー河で』が秀逸。
徴兵に怯えるティムをただ黙って見守り続けたエルロイの存在は大きかった。
何のための戦いだったのか?
それを問うことは一切なく、本書はただ、兵士たちの日常を語り続ける。
だからこそ、死についてい考えさせられ、じわじわとこみあげる想いがある。
生きて帰ることこそが、彼らの重要な任務。
そう思うことは、感傷だろうか?


内容(「BOOK」データベースより)

日ざかりの小道で呆然と、「私が殺した男」を見つめる兵士、木陰から一歩踏み出したとたん、まるでセメント袋のように倒れた兵士、祭の午後、故郷の町をあてどなく車を走らせる帰還兵…。ヴェトナムの・本当の・戦争の・話とは?O・ヘンリー賞を受賞した「ゴースト・ソルジャーズ」をはじめ、心を揺さぶる、衝撃の短編小説集。胸の内に「戦争」を抱えたすべての人におくる22の物語。

拍手

「疾走・下」重松清(角川文庫)



【あなたは生きてください。
 自分の生を一生懸命に生きて、他人の生を、慈しんでください】

「ひとり」を厭うた少年は、つながりを求めて受話器に手を伸ばす。
声がききたかっただけ。寂しかっただけ。抱きしめてほしかっただけ。
彼女たちもその呼びかけに応える。
たぶん、彼女たちも寂しかったのだ。
けれども……
その逢瀬が、新たな負の連鎖を呼び込んでしまう。
マイナスとマイナスで、さらなるマイナス。
人生はこんなにもままならない。
「逃がすために。守るために」
それが、少年の最期の願い。
最後に届いたメッセージは間に合ったのだと。
彼が微笑んで逝けたことが、せめてもの救いなのだと。
そう、思いたい。

僅か15歳の少年が、全てを背負わなければいけなかったことが、やるせない。
守ってあげられるのは親だけだったのに。
親もまた傷つき、疲弊し、自分自身を奮い立たせる術を持ち合わせてはいなかった。
最後まで傍観者に徹した語り部は、あくまでも見守るしかない他人。
雄二に会わせる事さえしなければ、と思うのは、私だけかな?






内容(「BOOK」データベースより)

誰か一緒に生きてください―。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは、故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人―。人とつながりたい…。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結。

拍手

「疾走・上」重松清(角川文庫)



【あの頃には二度と戻れない。
 すべてがあの頃とは変わってしまった】

知らず、泥沼に嵌りこんでいくような負の連鎖。
絡みつくような悪意。崩壊する家族。
こうなる未来を止めることのできる術があったのだとしたら。
シュウイチに対する両親の態度にあったかもしれない。
だが、親だという理由だけでは強く在ることができない人もいる。
そして、あるがままの自分を受け入れることができなかったのは、シューイチの弱さだ。
思い詰めたシュウジを引き留めたのは、あまりにも日常的な情景。
その日常が叩き壊されてしまったことが、なんだかやるせない。
その目に宿った闇。
願った方向とは真逆へと向かってしまったシュウジの人生。
息苦しさを引きずったまま、下巻へ。

「孤立」「孤独」「孤高」この定義にはなるほど、と、納得。
既視感を感じた語り口調。
何かと思ったら丸山健二の『争いの樹の下で』を彷彿とさせられました。
誰の視点なのか、下巻で明らかになるのかな?



内容(「BOOK」データベースより)

広大な干拓地と水平線が広がる町に暮す中学生のシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる…。十五歳の少年が背負った苛烈な運命を描いて、各紙誌で絶賛された、奇跡の衝撃作、堂々の文庫化。

拍手

「楽園のカンヴァス」原田マハ(新潮文庫)



【アートを理解する、ということは、この世界を理解する、ということ。
 アートを愛する、ということは、この世界を愛する、ということ】

絵画は自らを語らない。
けれども、その絵画に込められた想いがある。
その想いがそれを汲み取った者の気持ちを揺さぶり、
時に、その者の人生を変える。
「夢をみた」
一枚の絵画に込められた謎と、その謎に翻弄される人々。
そして、語られる一人の画家の人生。
と同時に、それは、彼の周囲にいた人々の人生をも語っていたのだ。
ルソーに固執したバイラー。
その理由が明らかになった時、胸が震えました。
そんな人生も、あるのだと。
彼らの人生の物語は終幕を迎えたけれども。
ティムと織江の人生はまだこれから。
二人のカンヴァスに描かれる物語は、どんな色を織り成すのかしら?


「四百年もまえの絵が自分の目の前にある、ということは、単純に「すごい」ことだ」
一番共感したのは実はこの一文。
ルーブルで教科書の中でしか見たことのなかったレンブラントの絵を間近で見た時、
涙が溢れて仕方がありませんでした。
その理由がまさにそれ。
数百年の時間を越えて、いま、この場所に在る絵画を見ることのできる感動に、
ただ打ち震えました。



内容(「BOOK」データベースより)

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに篭めた想いとは―。山本周五郎賞受賞作。

拍手

  

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 5 6 7 8
11 12 13 15 16
18 19 21 23
24 25 26 27 28 29 30

フリーエリア

プロフィール

HN:
みやこ
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R

Copyright ©  -- きままに読書★ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / material by DragonArtz Desighns / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]