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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「キング」堂場瞬一(実業之日本社文庫)



多分、それは最後のチャンスだった。
彼らの希求したものは、ただひとつ。
誰よりも早くゴールを駆け抜けること。
だが、勝者たりえるのはたった一人。
ベテランの域に差し掛かった、同年代のマラソンランナーが三人。
勝利を勝ち取るために彼らの選んだ手段は、三者三様だった。
早さを追い求める彼らの姿勢が鬼気迫っていて、とても苦しい。
何故そこまで?と問う資格は、レースに参加していない私にはないだろう。
置かれた環境に差があるのは当たり前。
結局は、手段はどうであれ、自分がどこまで頑張り通せたか、
そして「勝ちたい」と渇望できたのか、ということ尽きるように思う。

付け加えると。
だからといって、私自身はすべての手段を容認するわけではない。



内容(「BOOK」データベースより)

五輪男子マラソン代表・最後の一枠の選考レースまで四か月。日本最高記録を持ちながら故障に泣き、復活を期する天才・須田が最有力とされる中、優勝経験がなく“万年三位”の青山に正体不明の男が接触、「絶対に検出されない」ドーピングを勧めてきた。青山は卑劣な手段を一旦は拒むが…。ランナーたちの人生を賭した勝負を活写する傑作長編!

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「影の中の影」月村了衛(新潮社)



【人間とは裏切る生き物だ。
 だが同時に、信義も誇りも、厳然として存在する】


影ではあっても孤独ではない男。
手を掴んだ人たちの命を守る為に身体を張って闘ったヤクザ。
目を背けることなく、真実を追い求めた彼女。
ウイグルからの亡命者たちを守る為に
限られた時間の中で繰り広げられた凄惨な死闘。
国も警察も、あてにならない状況下で、
寄る辺になるものは自らの技量と、これまで培ってきた人たちとの絆。
根底にあるのは信頼。
だから、闘える。
一気に読み切る面白さを備えた本書は、極上のエンターテイメント。
そこに理屈はいらない。
……とはいえ。
フィクションとノンフィクションの境界はさておき、
取り上げられている問題は深刻な問題だと思います。


他作品の感想の繰り返しになるけど、
著者は「人と人」「人の在り様」を描くのがとても上手い。
個人的には樋口の生き様がとても印象的でした。
一歩間違えたらシリアルキラーになってしまっていた彼に、居場所があってよかった。
そして、そんな彼を御した菊原組長がカッコイイ!
「リラックス」「深呼吸」
行き詰った時には必ず思い出したい言葉です。

内容(「BOOK」データベースより)

人民解放軍による悪魔の所業から逃れ、日本に潜伏中のウイグル人亡命団と、事件を追う女性ジャーナリストが襲われた。証拠隠滅をはかるべく送り込まれた中国の刺客。それを黙認する弱腰の日本政府と警察。絶体絶命の亡命団に、謎の男が救いの手をさしのべた。頭脳明晰、身体屈強。ロシア武術を極め、情報機関にも裏社会にも怖れられる存在―。こいつは一体何者なのか?その手がかりは、謎の言葉「カーガー」。

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「いつか友よ 挑戦シリーズ5」北方謙三(集英社文庫)



カナダの山中で、獣と死者と向き合う生活を送っていた竜一。
あたかも、世捨て人であるかのように。
そんな彼を現実世界に引き戻した少年がいた。
「お礼を、なにもできないんだ、ぼくには」
「おまえが、ひとり前の男になることさ」
交し合った笑顔が、いまはとても苦しい。
守るために。
生き延びるために。
そして、誇りのために。
そのために闘い方を身に着けざるを得なかった男たちの生き様は、一様に哀しい。
ハンティングワールドのバッグを手放した竜一は、
日本との決別を心に決めたように思えて仕方がない。
またもや居場所を失くした男は、それでも、生ある限り闘いつづけるのだろう。

やるせない読後感で挑戦シリーズ終了。
自らのできることを力の限りやりつくした結果、
何かを失くしていく竜一の生き様がとてもやるせない。
彼のやすらぎはどこにあるのだろう?

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「翼をください」原田マハ(角川文庫)



それはまさしく偉業である。
そして、偉業の陰にはとてつもないドラマがあった。
決して世界に発信されることのないドラマが。
けれども、そのドラマは人知れず、語り継がれる。
熱い想いと、純然たる想いを込めて。
全世界を巻き込んだ大戦へと世情が向かう中、
多くの人々の夢を乗せて世界一周という偉業を成し遂げた「ニッポン号」。
それをあの時代に成し得たという事実に、ただ驚嘆する。
共に苦難を乗り越えた搭乗員たちを結ぶ絆が眩しい。
「どこかでつながっている世界で、僕らは生きている」
世界はひとつ。
彼らの飛行が、彼女の存在が、そのことを証明してくれた。

トラビスとの交信のシーン。切なくてたまらないけど、とても好き。
「もしも、許されるなら、私に翼を」
大きく羽ばたくことのできる両翼で、どこまでも高く、どこまでも遠くへ。
もしも、翼を得ることができたなら、私はどこに飛んでいくのだろう?


内容(「BOOK」データベースより)

カンザス州の田舎町に生まれ育ったエイミー・イーグルウィングは、女性として初めて大西洋横断飛行に成功するなど、数々の記録を打ち立てていた。大空を自由に駆けることに魅了されたエイミーは、空から見た地平には国境が存在しないことに気づく。世界平和のために、自分は飛ぶのだ、と。その強い信念はやがて彼女を、世界一周に挑む「ニッポン号」との邂逅へとみちびく。数奇な真実に彩られた、感動のヒューマンストーリー。

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「風群の荒野 挑戦シリーズ4」北方謙三(集英社文庫)



それは、その男の宿命なのか?
ならば、彼はどんな業を背負っているというのだろうか?
何度もう言う。
彼はそこに在るだけだ。
だが、彼は、牙を持つ男たちにとってとてつもなく高い岩のようなものなのかもしれない。
越えなければ、先に進むことのできない障壁。
だから、獣と化した男たちは、一様に彼に戦いを挑む。
自らの生きる意味を賭けて。
周囲をも巻き込むその必死さに馬鹿じゃないの?と叫びたくもなる。
わかっている。その馬鹿を貫くのが北方流の男なのだろう。
命がけの戦いの果てにある生死は、命に縁があるかないかの違いでしかない。
戦いの果ての竜一の呟き。「俺はもう必要じゃない」
残るのは、寂寞。

戦いたいなら、独りで戦いを挑みに行けばいい。
単独でそこまでたどり着けないのも、
相手を同じ土俵に引きずり出せないのも、自らにその価値がないからだ。
何故関係のない他者を巻き込む?
と、憤りいっぱいになるので、自分で自分を和ませてみる。
今回の巻の副題。
「老いぼれ犬・世界を股に掛ける」
いかがなものかしら?


内容(「BOOK」データベースより)

「狼は哲学者だな。戦闘に熟達しただけのコマンドじゃない」傭兵がつぶやく。その「狼」に立ち向かうため、石本一幸がペルーにもどってきた。アフリカで血を吸ったナイフを携え、戦争のプロフェッショナルを伴って。憎悪と友情、硝煙と血を描いて、物語はクライマックスを迎える。

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「翼をください 上」原田マハ(角川文庫)



先へ先へと逸る想いを必死で抑えながらの読了。
とにかく読みながら胸が震えた。
「世界はひとつである」と。
確固たる想いを胸に抱き、世界一周を成し遂げることを夢見たエイミーに。
「やるしかない」と。
世界一周を成し遂げようとする暁星新聞社の面々の志に。
全世界を巻き込んでの大戦へと世情が加速する時代。
その飛行には、軍部の思惑が見え隠れする。
明らかになった真実。
信じてきたものが足元から瓦解したエイミーの決意。
したためられることのなかった手紙が痛い。
そして、日本の海軍機での世界一周計画の始動。
ドキドキしながら下巻へ。

アインシュタイン、リンドバーグ、ルーズベルト、山本五十六、キャパetc/etc。
歴史上の人物がリアルに息づいている描写に、
物語を楽しむのとはまた違った意味合いを含んだ高揚がありました。



内容(「BOOK」データベースより)

暁星新聞の記者である青山翔子は、社内の資料室で一枚の写真を見つけた。それは、1939年に世界初の世界一周を成し遂げた「ニッポン号」の写真だった。翔子は当時、暁星新聞社が社運をかけて取り組んでいたプロジェクトにカメラマンとして参加していた男を追って、カンザス州アチソンへと飛ぶ。老人ホームで暮らす山田は、翔子から渡された古い写真を見て、重い口を開いた。そこには、ある米国人女性パイロットの姿が―。

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「孤狼の血」柚月裕子(角川書店)



人は人に惚れる。人に尽くす。
信頼に応えるものは、やはり信頼。
違法行為を繰り返す大上に対する周囲の人たちの接し方を見ていると、そう思える。
そして、外道はどこまでいっても外道。
極道ではなく、外道を一掃するために刑事であり続けた大上。
自らの信念に基づく正義。
筋が通っていたからこそ、やくざ者たちも彼の正義に応えた。
仲間も彼を認めた。
それを目の当たりにしてきた日岡。
日岡と共に大上の在り様を認めてしまっている自分がいて、
だからこそ、やるせない思いに歯噛みすることになる。
プロローグとエピローグの位置づけが秀逸。
孤狼の血は確実に受け継がれている。

「こういうときこそいつもどおりにしとらんといけんのよ」
晶子の言葉が胸に刺さる。
腹を括った晶子の生き様もまた、カッコいいと思いました。
そしてカツの言葉に涙。
読後のもやっと感は「もっとこの話、読みたーい!」という、欲求からのもの。
もうちょっとこの物語世界に浸っていたかった。
小声で主張すれば、続編、とうよりは、その後の一之瀬に会いたい。←そこ!?
そして『公安捜査』を読みかえしたくなりました。


内容(「BOOK」データベースより)

昭和六十三年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上のもとで、暴力団系列の金融会社社員が失踪した事件の捜査を担当することになった。飢えた狼のごとく強引に違法行為を繰り返す大上のやり方に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。やがて失踪事件をきっかけに暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが…。正義とは何か、信じられるのは誰か。日岡は本当の試練に立ち向かっていく―。

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「男たちの荒野」北方謙三(角川文庫)



「ハードボイルドとは?」と問われたら、
「俺が書いているのがハードボイルドだ」と断言する著者。
私にとってのハードボイルドは北方謙三と同義だ。
そして、北方と言えば『ブラディ・ドール』と『水滸伝』が私の双璧。
本書は『ブラディ・ドール』好きにはたまらい一冊だと思う。
他者が語る作品や作者には実は興味がなくて、
読本的なものは敬遠してきた私が言うんだから間違いない。(←北方的に断言・笑)
四章の「抜粋」だけでも、私にとっては価値がある。
作中人物から見たそれぞれの人となり。関係性。
彼らの好んだ酒。服装。
等々が窺い知れて、気持ちがザワザワする。

北方現代物読みの友だち本書のどこにひっかかって
『水滸伝』を読む気になってくれたのかは判明しました。(笑)
現代物・時代物と括らず「北方謙三」というカテゴリーで彼の作品に触れてもらいたいと、
個人的には思います。
どれもこれも「核」は一緒だと思うので。
そしてこの本は、作中の人物たちの飲み方を真似て、お酒が飲みたくなる本です。

内容(「BOOK」データベースより)

“ブラディ・ドール”、癒されぬ傷を持った男たちの酒場。そこには幾多の闘い、死があった。死んでいった男たちに墓標はない。だが私の心に、彼らの猛き魂は永久に生き続ける。友よ、同じ荒野を生きたけものよ、私はおまえを忘れない。そして今こそ、おまえの碑銘を刻もう―。不朽のハード・ボイルドシリーズ、“ブラディ・ドール”。己の掟に生き、心引き裂く闘いにあえて挑んだ者たちの物語が、今ここに集約される。著者が語るシリーズ誕生秘話から、荒野を駆けた男たちの軌跡、そして作中を彩った登場アイテムまで、すべてのエッセンスを分析し収録した熱き魂の聖典。

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「風の聖衣 挑戦シリーズ3」北方謙三(集英社文庫)



彼はただ、そこに在っただけ。
無二の友と共に。彼らの信仰と共に。
そして、村人たちの安息のために、極限まで肉体を研ぎ澄ませ、闘ってきたのだ。
大きな犠牲を払いながらも、守り通した村民の日常。
束の間でも、安息の日が訪れるはずだった。
めでたいことへの祈りしか許されない岩。
その場所を血で汚した男がいる。
決して墜としてはならない星に手を掛けた男の身勝手さに腹が立つ。
拭えない敗北感を抱き続けた自らの心の再生に、何故他者の死を必要とする?
結局、彼は敗者で在り続けるのだ。
「はじめに行くところを間違えた」彼の言葉が酷く虚しい。
何故なら、私もそう思うから。

日本から遥か遠くのアンデスの地で「老犬トレー」口ずさむ三人の男。
結末がわかっているから、読み進めるのが嫌で嫌で……遅々として進みませんでした。
むーらーさーわーーー!!
これを読むと、北方は水滸伝を書くべくして書いたのだと、改めて思います。


内容(「BOOK」データベースより)

風吹きすさぶペルーの高山地帯。「狼」と呼ばれ、ゲリラの指導者となり、村の守護神として尊敬を集めている水野竜一を村沢がつけ狙う。彼は殺すべきではなかった男を射殺し、その心の傷をいやすべく傭兵となり、ペルーをさまよう元刑事だった。村沢は「狼」の村の攻撃を計画、あらゆる手段をつかって「狼」をおびき寄せようとするが…。

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「ブックマート金狼」杉井光(NOVEL0)



読み終わった瞬間「続編希望!」と、叫びたくなる面白さでした。
久々に血が湧いたというか、わくわくしてスカッと楽しかった。
三十路になった現在は、書店店長。
二十歳そこそこの若かりし頃は、伝説のチームを率いて裏社会に名を轟かせた男、宮内直人。
そんな彼の下に舞い込んできた奇妙な依頼。
調べれば調べるほど、陰惨な事実が明らかになる一方で、
並行して語られる直人の過去に魅了される。
そして、チームを解散し、別れたはずの仲間との、今尚続いている固い絆。
レイジとナオトの張り合ってる感と、認め合っている感が半端なく良い。
このノリ大好き。
繰り返すけど、続編希望!

たとえば、垣根涼介の『ヒートアイランド』たとえば、石田衣良の『IWGP』。
そんなノリがお好きな方には迷わずおススメ。
このレーベルの他の話も読んでみようかなぁ?
ああ、でもやっぱりこのお話の続編!もしくは過去編希望!
ってか、過去編!過去編読みたいです。
と、変なテンションの読後です(笑)


内容(「BOOK」データベースより)

東京・新宿のど真ん中に位置する『くじら堂書店』店長を務める男・宮内直人はかつて伝説的チームを率い、裏社会にまで名を轟かせた元トラブルシューターだった。そんな彼の元に、久々の“トラブル”が舞い込み…?

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