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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「女神」三島由紀夫(新潮文庫)





息を呑むほどの美しさと、思わず気持ちが落ち着かなくなる歪さが終始付きまとう表題作。
周伍の押し付けた価値観を借り物のように纏っていた依子と、
そこに自らの価値観も添加して己のものにした朝子。
「人形」で在り続けた依子と「女神」へと化身した朝子の違いはそこにあるのかな?
だけど、ラスト一文。
私は背筋がゾワリとしました。
そこには美しさだけではない、得体の知れない何かが身を隠しているような気がして。

表題+10篇。
めくるめく世界に誘われ、彼の描き出す濃密な雰囲気にどっぷりと浸かりました。
印象深すぎた『哲学』。え?何この人??と、余りにも独り善がりすぎる結末に唖然。
語れる程三島を読んでいるわけではないけれども、
ここに収められた中短編を読み進めるうちにふと思ったことがあったわけで。
それに対する答えは、彼の著作を読んでいけばわかるのかな?
とても印象的だった一文は以下。
「その場を立ち去ったのちも、香水の薫りのようにその女の雰囲気があとに漂う、
そういういいしれぬ雰囲気」
醸し出せるようなれたら、素敵だなーと思わずうっとりしてしまいました。(笑)
【憂国忌にて】

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「さよならを言う気はない」英田サキ(SHYノベルズ)



突き抜けた凶暴っぷりを発揮するヤクザ・天海と、その理不尽を許容するしがない探偵・陣内。
知り合って12年。
互いに傷となって残る過去を共有する二人。
付かず離れずの距離感がイイ感じだったり、もどかしかったりしているうちに
見えてくる二人の本音にだんだん切なくなってきて。
かつての事件に対する向き合い方の違いが明らかになった時、
天海の傷の深さに胸が軋んだ。
天海の苛烈な生き様は余りにも潔くて悲しいけど、
逞しくて眩しくもある。
なんだかんだ陣内はそんな天海に寄り添って生きてきたんだと思う。
腹を括った告白はとても良かった

受側のオラオラ言葉攻めは小気味よかった。
個人的には陣内の腕の中で眠る天海のあどけなさがいい……んだけど。
「いつかお前がまた俺を許せなくなる日がくるまで」のモノローグが切なかった。
そういう杞憂を全部払拭して、なにもかもを陣内に委ねて甘えられる日がくるのかな?
くるといいな。





内容(「BOOK」データベースより)

三年前に警察をやめ、現在、ひとり『陣内探偵事務所』を経営するしがない探偵、陣内拓朗。彼にはもっとも苦手とする男がいる。それは新宿歌舞伎町一帯をシマに暗躍する、美形だが凶暴なヤクザ、天海泰雅だ。見てくれの繊細さとは裏腹に、東日本最大の暴力団組織、紅龍会の直系二次団体周藤組の幹部であり、『周藤の虎』と呼ばれ、恐れられている。天海が依頼してくる仕事にはろくなものがない。陣内にとっては厄病神のような存在だ。そんな天海が、今日も厄介な依頼を持ち込んできて!?せつなく、胸あたたまるヤクザと探偵のラプソディ登場。

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「黒涙」月村了衛(浅い新聞出版)



前作に比べて沢渡がなんだかアホっぽくなった気がして。
あれ?こんな軽い話だった?と首を傾げ、
作戦展開中の彼らの危機感のなさに、ダイジョブ?と思いながら読んでたいたわけですが。
後半の怒涛の展開にやられました。
やるせなさいっぱいの読了で、なんかもう、気持ちの整理がつきません。
う、ホント切ない。
引き際って大事なんだよ、というのは、後になってから言えること。
裏切り者の見極めも、渦中にいる間は気付けない。
だからって「仕方ない」では済まされない命。
一人、現状を過たず把握していた沈。
けじめをつけにいった彼の無事をひたすら願う。

これは続編ありかな?なしかな?
スピンで『水獺公司』の暗躍を描いた話とか読んでみたい。
ジワジワ哀しくなってくる読後。
なんでだろう?
別な日の精神状態で読んだらちょっと違ってくるのかな?
とりあえず漫画を読んで癒されようと思います。






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「黄泉への風穴・前編 炎の蜃気楼13」桑原水菜 (コバルト文庫)




あれから2年。
闇戦国の戦いに現代の国家権力が介入してきて、
物語の厚みが増した第二部スタート。
現代人の目だって節穴じゃない。
事情が分からないながらも、亡者の好きにはさせないという気持ちの現れのようで頼もしい。
大切な者を失って時間が止まったままの景虎の苦悩は続くけど、
直江が煩悶していないので、私はとっても心が穏やかです。
本能が知っている。
誰も「彼」の代わりになんてならないと。
だけど理性が拒絶する。
そんな「夢みたいな現実」を認めることを。
いい加減、現実を認識しないといけない。
まやかしの魔法はもう、解けかけているのだから。

12巻の読了後、13巻を待っていた間の精神のぐったり具合を思えば、
一気読みって素晴らしい☆
江の島は江ノ電のあまりの混雑ぶりに戦いて未訪問。
たくさんの場所が作中に出てきているので、いつか尋ねてみたい。
何故か神津島には上陸したことがあります。
「砂漠が見たい!」という一心で船に乗りました。
麓では濃霧に覆われていた天上山。
ここまできたからには!と、頑張って登った山頂からの見晴らしは思わず歓声が上がるほどの絶景でした。
あ、もちろん海でも泳ぎましたよ~。
そして横浜。
この街、私本当に大好きです。


内容(「BOOK」データベースより)

萩城の事件から、2度目の冬が訪れた。19歳になった高耶は、直江の『死』を記憶から消し去り、小太郎を直江だと思いこんだまま、怨霊調伏に奔走していた。一方、度重なる心霊事件の真相を究明するため、国家公安委員会・特務調査部が動きだし、重要参考人として高耶の調査を進めていた。不審な事件が続発する江の島に向かった高耶は、妙に懐かしさを感じさせる開崎という男に出会うが…。

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「約束の森」沢木冬吾(角川文庫)



監視付の塔の中で出会った三人。
たとえそれが仕組まれた出会いだったとしても。
各々の役割を演じながら次第に芽生えていく想いは、
間違いなく彼ら自身によって育まれたものだった。
最初は牽制しあっていた三人が次第に気持ちを寄せていく様子がとてもいい。
だが、天涯孤独の身だった彼らが得た安穏は、悪意と陰謀により瓦解する。
九死に一生を得るような戦いの中で光ったマクナイトの活躍。
彼もまた、孤独の中に在って侑也に救われたのだ。
マクナイトと三人の交流もとても良かった。
読後の余韻がとてもあたたかい作品。
マクナイトのモノローグには泣かされてしまった。

所々(主にスカベンヤーについて)突っ込みを入れつつ、大筋には関係ないか、と納得。(笑)
ここでくるの!?という場面での隼人の「特別な力」の披露は
突っ込むんじゃなくて感心しました。
襲撃に備えた万全の布陣を敷いても、上には上がいる怖さ。
「ほんとはいやだなぁ」「救って死のう」「これも因果と諦めな」
誰かを守るために戦おうとした彼らの想いがグサグサ伝わってきた。
魯智深は自分腕の丸焼き黙々と食べたよねぇ、と、まだちょっぴり水滸伝脳。
侑也の渋みもカッコイイけど、個人的に丹野がお気に入りなあたり、気持ちはまだ25歳(笑)。
殊勲賞はマクナイトとおまけでタイガーに。
楽しく一気読みでした。


内容(「BOOK」データベースより)

警視庁公安部の刑事だった奥野侑也は、殺人事件で妻を亡くし退職を決めた。孤独に暮らしていた侑也に、かつての上司を通じて潜入捜査の依頼が入る。北の果てに建うモウテルの管理人を務め、見知らぬ人物と暮らしながら疑似家族を演じろという。侑也が現地に赴くと、そこにいたのは若い男女と傷ついた1匹の番犬だった。やがて闇に隠れた謎の組織の存在と警察当局の狙いが明らかになり、侑也は眠っていた牙を再び甦らせる―。

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「わだつみの楊貴妃・後編 炎の蜃気楼12」桑原水菜(コバルト文庫)




それを弱さと詰ることはできないけれども。
共に歩んできた400年をなかったことにされるのはとても辛い。
彼は現実を直視しきれず、夢の中に逃避した。
現実の中に置き去りにされた私は、彼の名で呼ばれて振り返る男に、
「アナタじゃない」と、とても言いたい。
そして、亡者たちは見果てぬ夢を見る。
誰かの犠牲の上に成り立つ夢の成就なんて、絶対に認めない。
友姫と漁姫の悲痛な決意。
そして、偉大なる父、北条氏康と上杉謙信の力をかりて、
どうにかこの戦いには終止符を打つ。
逃げ込んだ夢の中から彼が目覚めることを願いながら、第二部へ。
あなただけは目を背けてはいけないと思うの。

悪夢のクリスマス。
何らかの救済があるはずと信じて買ってすぐに読み始め、
絶望のどん底に叩きつけられたあの日の記憶。
同じく読了して呆然としていた友達と泣きながら電話してた気がする(苦笑)。
おかげで、内容が色々吹っ飛んじゃってて、
あとから読みかえして、え?ここで?ええ??ってなってた。
友人たちと最後まであんなに大騒ぎしながら読みつづけた本って、
後にも先にもこのシリーズだけな気がする。
実際に弥山に登った時の感動は、ちょっと忘れられない。



内容(「BOOK」データベースより)

輝元が放った銃弾は、直江の心臓を撃ち抜いていた。駆け寄った高耶とたった一瞬、視線が結ばれ、それが直江の最期だった。「直江、早くオレを助けてくれ。早く、おまえがいる世界に帰りたい…。」その瞬間、毛利の本拠・萩城一帯を激しい地震が襲い、巨大な火炎の渦が夜空に燃え昇った。高耶の魂の絶叫が、地上に大崩壊を招こうとしていたのだ。衝撃の第一部完結編。


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「わだつみの楊貴妃・中編 炎の蜃気楼11」桑原水菜 (コバルト文庫)



いっそ手放してしまえと、叫びたくなる。
それができないことがわかっているから、彼らと一緒にもがき苦しむ。
「腹心」としての直江は引く手数多。
こんなにも有能な男が、絶対君主の前ではただの雄に成り下がる。
だけど、そうじゃない。
そう、決めつけているだけ。直江自身も、そして高耶も。
「目が見えないのか?」ではなく「オレが見えないのか?」と叫んだ高耶。
その言葉に色々な想いが凝縮されているのに。
力を封じられても尚、戦う気概を抱き続けた景虎の起死回生の一撃。
燃え盛る炎の中で告げられた直江からの訣別。
迸った叫びこそが、景虎の本心。
『最上』の在り方……この言葉には涙しかない。

「元春様。小早川隆景様から電話が入っております」
戦国武将のもしもし電話。なんだろう?この気の抜けるようなやりとり(笑)
唯一和んだ瞬間だった。
ミラージュは読んで泣く。わかってても泣く、の繰り返し。
一緒にこの物語を読んできた友人達とは
「うちら、10代20代、ホントダメな男(=直江)に振り回されたよね」と
笑いながら言い合っていますが。
いまだって振り回されてます。←自慢できない。
吉川元春が好印象なのは、この巻があるから。
萩城址はとても素敵なところでした。


内容(「BOOK」データベースより)

大破した船から投げ出された高耶、直江、風魔小太郎は、瀬戸内海の小島に漂着していた。身を呈して高耶を守った直江だったが、その目は光を失ってしまっていた。信長を討つため、毛利、一向宗と手を組もうとする小太郎に、高耶は激しく抵抗するが、直江を人質に取られ、毛利の本拠地へと連れ去られてしまう。一方、大和の謎を追っていた綾子たちは〈楊貴妃〉に会うため、秋芳洞へ向かうが。

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「犬、拾うオレ、噛まれる」野原滋 (ラルーナ文庫)



紺の抱えてきたものがとても重くて。
あまりにも淡々とした生活の在り様に胸が軋む。
だけど、そのどれもこれにも理由があって。
決して投げやりになっているわけではない様がいじらしい。
幾重にも纏った殻の中に閉じこもって、だけど、気持ちは決して内側に向いていたわけではない。
若干間違った外界への対峙の仕方でも、彼は彼なりに懸命に生きていた。
そんな時に出会ったテツロー。
出逢い方はどうであれ、彼の明るさと人の良さは、紺が視点を変える良い転機になった。
大切なものを得たが故に臆病になってしまった紺。
「死んでもいいか?」
「いいよ、死んでいい」
物騒な言葉なのに甘く切なく響く愛の言葉。面白かった!


殻ごとカレーに突き刺さるサザエの壺焼き……
見た目想像して大笑いしたけど、サザエって殻の中に閉じこもってた自己投影?
それを引っ張り出すテツロー?と私の思考が飛躍して、いや、そこまで考えてないか、
と、思い直してみました(笑)
修二の話、読んでみたいなーと、こっそりで主張しておきます(笑)

内容(「BOOK」データベースより)

別れた恋人である予備校教師、貴史へのストーカー行為が止まらない紺。そんな紺のもとに宅配業者を装った怪しい男が現れる。飄々としたその男テツローは紺のストーキングを阻止するために貴史が雇った便利屋だった。鳳凰の刺青を背負った、どこか憎めない男―テツローとの三日間に及ぶゆるゆる監禁&お仕置き生活の中、今まで誰とも深く関わらず、投げやりに生きてきた紺の秘密が次第に明らかになっていき…。

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「わだつみの楊貴妃・前編 炎の蜃気楼10」桑原水菜(コバルト文庫)



失いかけた≪力≫。疲弊しきった精神。
限界に達しかけている直江の想いをねじ伏せるように否定しながら、
離れることを許さない矛盾。
傷つけながら、傷ついている。
それを認めたくない景虎と、諦めてしまった直江。
笑うことすらできなくなってしまった彼らがとても哀しい。
それでも戦いつづけなければならない彼らの業が胸に刺さる。
「限界がきているんだよ」
400年抱き続けた愛憎を越えた想いは、あまりにも重い。
戦国武将に戦艦大和を違和感なく絡めてくる著者の筆力は、改めてすごいなーと。
信長のぶっ飛んだ破壊力にガツン、とやられて次巻へ。

ガッツリ入り込んで読んでしまったら自分が消耗することがわかっているので、
なるべく俯瞰して、感情を切り離して切り離して、が再読の心得。
そこまでして読むの?と、自分を嗤いつつ、読むのです(笑)
宮島、弥山、広島、呉、因島。
自分の脚で歩いた場所はリアルに脳裏に浮かんでくる。
そう言えば私、毛利の墓所・東光寺にも行ったんだわ。
吉川元春、山中鹿之助、村上水軍はこの巻で覚えたかつての私。
戦艦大和のシーンのBGMは長淵剛。
ん?どこまでも心が安らぐ要素がない。
癒し本一冊挟んでから次巻へいこう。←つまり、感情を切り離すことに失敗している(笑)

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「秋の牢獄」恒川光太郎(角川ホラー文庫)



今私が知覚するすべては幻。
本物の私は夢を見ている。目覚める日を待ちながら、夢の中を生きている。
そんなふうに夢想していた少女時代を思い出しました。
ここではないどこかへ。
一度は思い描いたことがあるはず。
だけど、踏み出してしまった「どこか」は、儚くて、恐ろしくて、淋しい世界。
多分幸せは「ここ」にある。今、自分自身が在るこの世界に。
短編三篇。
様相の全く違う幻想世界を、眩暈がするような感覚を抱きながら浮遊しました。
著者の描く独特の世界観が好き。
「幻は夜に成長する」
この後に展開される狂気めいた世界を垣間見たいと、惜しみながらの読了。

11月7日に読むつもりで楽しみに温存していたけど、
その日接待で夜中まで拘束されること確定な気がするのでフライング。
私の半年越しの計画台無し!キーーッ!!←落ち着こう。
それはさておき。
「秋の牢獄」途中、泣きたくなるほど切なくなって、最後、なんとなく安堵した。
その安堵は「やっと終わり」なのか「これで次へ」なのか。
読んだ時の自分の状況で変わってきそう。



内容(「BOOK」データベースより)

十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。何をしても、どこに行っても、朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。悪夢のような日々の中、藍は自分と同じ「リプレイヤー」の隆一に出会うが…。世界は確実に変質した。この繰り返しに終わりは来るのか。表題作他二編を収録。名作『夜市』の著者が新たに紡ぐ、圧倒的に美しく切なく恐ろしい物語。

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