きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2016.03.15 「夜が傷つけた」北方謙三(集英社文庫)
- 2016.03.14 「残り全部バケーション」伊坂幸太郎(集英社文庫)
- 2016.03.10 「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」佐々涼子(早川書房)
- 2016.03.06 「望郷」北方謙三(集英社文庫)
- 2016.03.02 「風葬」北方謙三(集英社文庫)
- 2016.03.01 「傷痕」北方謙三(集英社文庫)
- 2016.02.27 「眠りなき夜」北方謙三(集英社文庫)
- 2016.02.22 「ラストダンス」堂場瞬一(実業之日本社)
- 2016.02.07 「チームⅡ」堂場瞬一(実業之日本社文庫)
- 2016.02.04 「ヒート」堂場舜一(実業之日本社文庫)
「夜が傷つけた」北方謙三(集英社文庫)
血と情と欲。
全てが幾重にも絡み合い、一つの殺人事件が起きる。
兄の死に納得ができずに真相の解明を願った依頼人は、十五歳の少年だった。
必要なのは覚悟。
最後までやり通す決意。
前作に引き続いての谷と杉田の同級生コンビは、なんだかんだ、良いコンビだ。
彼らは戦いのプロじゃない。
だけど、身体を張って真実の糸を手繰り寄せる。
彼らの中にあるのは損得ではなく、
自分が納得できるか否か、だ。
だからこそ、高樹も彼らにそっと歩み寄るのだ。
解けてしまえば単純な動機。
どうしようもないなぁ、と思う。
和夫にはこのまままっすぐに育って行ってもらいたい。
物語を締めるラストの一文に痺れました。
さすが北方!
酒と車の描写にテンションが上がります。
飲みなれない強いお酒を飲みたくなるからたちが悪い。
そして、ズボンを穿いてベルトを締めるのを杉田に手伝ってもらっている谷を想像して
心の中で爆笑しました。←満身創痍で笑える場面ではないことを付け加えておきます。
内容(「BOOK」データベースより)
依頼人は若すぎた。義姉の行方を心配する和夫は中三だった。消えたのは、洋子。弁護士の谷道雄がかつて愛した女。兄を殺された和夫は謎の大人たちに殴りつけられた。抜け殻同然だった谷が動き出す。久しぶりの全開に暴れ馬のエンジンも吠える。男の生きた痕跡は躰に刻みついた傷だ。北方ハードボイルドの快作。
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「残り全部バケーション」伊坂幸太郎(集英社文庫)
【どうせいつかは死ぬけどな。生き方は大事なんだよ】
伊坂ワールド堪能しました!
一癖も二癖もありそうな登場人物のオンパレード。
このままじゃ終わらないよね、という第一章。
溝口と岡田。
この二人に魅力を感じた時点で物語に取り込まれている。
過去と現在を行き来する章を読み進めていくうちに、
章と章がつながっていく構成はお見事。
分担作業の殺人。
サラッと語られるアングラな仕組みも本当にありそうで不気味。
だけど、ジメッとしていない。
全体的な物語のイメージは溝口の性格によるところが大きいのかな?
そして最終章。
結局私も『それらしい』話に乗せられる。
カチッとはまったピース。
唸りました。
おもしろかった。
3年ぶりに伊坂作品読みました。
伊坂さんの構築された世界に足を踏み入れて、ただいまー!って言いたくなりました。
うん。
この独特の世界観、やっぱり好き。
内容(「BOOK」データベースより)
当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに―。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。
「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」佐々涼子(早川書房)
未曽有の災害に直面した時に、
どんな備えをすればいいのか。どう行動すればいいのか。
あの地震を経験して実感したこと、学んだことはたくさんある。
だけど、それらを実践する日は二度と来なければいい。
正直、それが私の本音です。
でも、語り継がなければいけない。
あの時、何が起きたのか。その後、人々がどんな思いをして頑張ってきたのか。
本書は瓦礫の中から奇跡の復興を果たした人たちの物語。
あの日何が起こったのかを記録した物語。
そして、こうして手にする紙がどうやって作られているのかを知ることができる物語。
三重の意味での良書だと思います。
人と人。
同じ方向を向いて力を合わせれば、こんなにも素晴らしいことができる。
そして、何事かをやり遂げようと思った時の明確な目標と期日の提示の重要性を
改めて思い知らされました。
「命があるうちに好きなことをしないと」
本当にその通りだと、しみじみ思います。
全力で生ききりたい。
内容(「BOOK」データベースより)
「8号(出版用紙を製造する巨大マシン)が止まるときは、この国の出版が倒れる時です」―2011年3月11日、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に呑みこまれ、完全に機能停止した。製紙工場には「何があっても絶対に紙を供給し続ける」という出版社との約束がある。しかし状況は、従業員の誰もが「工場は死んだ」と口にするほど絶望的だった。にもかかわらず、工場長は半年での復興を宣言。その日から、従業員たちの闘いが始まった。食料を入手するのも容易ではなく、電気もガスも水道も復旧していない状態での作業は、困難を極めた。東京の本社営業部と石巻工場の間の意見の対立さえ生まれた。だが、従業員はみな、工場のため、石巻のため、そして、出版社と本を待つ読者のために力を尽くした。震災の絶望から、工場の復興までを徹底取材した傑作ノンフィクション。
「望郷」北方謙三(集英社文庫)
「あの焼け野原に帰りたい」
それは叶わぬ夢だけれども。
切に願った。
ふたり、共に生きたあの日々へ、と。
老犬トレー。ゴロワーズ。ロンソン。
きちんとしたスーツ。磨いた靴。そして刑事であり続けること。
日常の中に見え隠れする幸太の存在。
そして、因縁としか言いようのない邂逅。
獣の子は獣。
和也に出会った高樹は生き急いだのか、死に急いだのか。
事件解決の糸口を辿ったその手法は褒められたやり方ではない。
疑問だってある。
だけど、そう在ることしかできなかった。
獣を胸の内に飼いつづけたた高樹の人生には、
どこまでも幸太が寄り添っていた。
高樹の幸せはどこにあったのかな?と。
考えるとなんだかやるせない気持ちになってしまう。
『眠りなき夜』→『老犬シリーズ』ときたので『夜が傷つけた』で一段落に
しようと思っていたのですが。
ここまできたら『挑戦シリーズ』も読まないといけないような気がしてきました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
「因果な癖だ。臭いものには必ず首を突っ込む」高樹はつぶやく。平凡な事件だった。やくざの抗争、男が殺され、犯人は自首。だが、定年間近な『老いぼれ犬』高樹警視は、そこに不審な影を見る。大胆な捜査と周到な罠。やがて飛び込んで来る獲物を待つ…。老犬シリーズ3部作、堂々の完結。
「風葬」北方謙三(集英社文庫)
友との再会。
そして目覚めた獣。
決別した時に分かたれた道は、決して重なることはない。
それでも、彼らは覚えている。
老犬トレーのメロディを。
共に生きたあの日々を。
道は違えども、互いにかけがえのない友だった。
心の内をすべてわかりあえる友だった。
「会ってよかったのかどうか、俺にゃわからねぇ」
再会した時は、既に事は動き出していた。
どう足掻いても、運命は変えられなかっただろう。
だからこそ、彼らは出会えてよかったのだ。
「淋しければいつも一緒にふるえ合える相手を求める」
幸太と別れた後の高樹の孤独を象徴するような言葉。
二人で一緒に生きてこれたなら。
淋しければ一緒にあたため合える相手を求められたのかな?
物語のラストとタイトルのはまり具合がたまりません。
涙の出ない高樹のかわりに、私が号泣でした。
そしてものすごーーく久しぶりに口笛を吹こうとしてスカスカッぷりにがっかり。
大人しくピアノの鍵盤叩くことにします。
内容(「BOOK」データベースより)
刑事となった良文は、抜群の検挙率をあげた。ある夜、連続殺人事件の捜査で、少年時代の親友・幸太に会い、彼が事件に関係していることを知った。いつものように走り、獲物を追う。その結果手に入れた真実の味は?昭和35年、高度成長前夜の東京。27歳の『老いぼれ犬』高樹良文は悲しみで一杯の獣だった。
「傷痕」北方謙三(集英社文庫)
爪を研ぎ、牙を磨く。
武器を手にし、沈黙の中で鋭く周囲を探る。
自らが、生き延びるために。
戦後直後の混乱の中にある東京。
家もなく、親もいない子供たち。
それでも彼らは、生きていかなければならなかった。
子供達の集団の中にあって、子供のままではいられなかった良夫と幸太。
男になりたいと、小さな身体で必死で頑張った和也。
理不尽には抗い、結束し、どんなにうまく立ち回ったかに見えても。
大人の狡さと汚さには抗いきれなかった。
どうしても報いなければならない一矢がある。
そして、決別。
ああ、と。
理不尽さに天を仰ぎたくなるけれども。
幸太の選択はとても正しい。
何故なら、彼らは何よりも強い絆で結びついていたから。
岡本の存在が鮮烈に印象に残っている。
命を捨てたも同然の男が浮かべる狂気を孕んだ微笑。
彼が何を考え、何故そうしたのか。
推し量る術はない。
そして、小さな和也の姿にただただ涙を零し続けました。
内容(「BOOK」データベースより)
孔雀城―無頼の少年たちは、自分たちの寝ぐらをそう呼んだ。戦争直後の東京、焼けくずれた工場の跡地である。隠匿物資を盗み出し、闇市で売りさばくことを覚えた良文とその仲間にとって、最大の敵は浮浪児狩りと暴力団だった。幼い良文は野獣のように生き抜いてゆく。「老いぼれ犬」高樹刑事の壮絶な小年時代。
「眠りなき夜」北方謙三(集英社文庫)
【「つまんない意地を張るのね、男って」
「大事なことさ。男にはな」】
友が死んだ。
それも、理不尽な死を強要された。
闘う理由はそれだけで十分だった。
そして、いつしか袋小路に追い込まれた男の戦いが始まった。
昼行燈かと思った男が身体を張って彼を助けてくれた。
一時の安らぎを与えてくれた女は何も語らずに彼の行動を見守っていた。
静かに隣に立った友軍は、彼が血まみれになることも辞さない、冷徹な男だった。
そうやって一つ一つ積み重ねたことが、敵を追い詰めていく。
一介の弁護士が巨悪に立ち向かっていく様に拳を握る物語。
「つまんない意地を張るのね、男って」
そう言った順子こそが、女にだって張る意地があることを証明している。
好いた女が望むことを。
好いた女が信じることを。
斎藤のスタンスは女としてぐっときました。
さて。
次は老犬シリーズですか。
北方祭への片足だけ参加から本腰への参加へ。
内容(「BOOK」データベースより)
弁護士・谷の同僚、戸部が失踪、つづいて彼と関わりのあった小山民子が殺された。彼女が書き残したメモを手がかりに、谷は山形県S市に飛んだ。事件の深奥を探る中、早速、3人組に襲われる。黒幕とみられる大物政治家・室井などの名が浮かぶが、事件の謎は深まるばかり。そして戸部の惨殺体発見……。民子との間に何があったのか?室井との関連は?友の死を追って、谷は深い闇を解明すべく、熱い怒りを雪の街に爆発させる。第4回吉川英治文学新人賞、第1回日本冒険小説協会大賞受賞作。
「ラストダンス」堂場瞬一(実業之日本社)
それがどんなに稀有な事かわかっている。
思い描いたところで現実には起こりえない。
そのまま9回までなんて進むわけがない。
だけど、いや、だからこそ願ってしまう。
今回だけは、と。
どうか、今回だけは、彼らの望み通りの試合を、と。
一体となった球場と一緒に息を呑む。
その臨場感と緊張感。
それを味わうことができただけでも、一読の価値はある。
加えて、野球の舞台裏を垣間見ることもできる物語。
その部分も興味深く楽しめる。
最後はスマートさのカケラモない、あまりにも泥臭い幕切れ。
彼らの気迫と根性の成せる業。
だけど、それでいい。
だって彼らは笑っているのだから。
極めて個人的な感想ですが。
作中で「イーグルス」が多発されていたのがとてもうれしかった(笑)
あ、地元球団とはまったく関係ないのはわかっていますよ。
ユニフォーム羽織ってメガホン持って。
わくわくしながら野球場に行きたくなりました。
内容(「BOOK」データベースより)
プロ野球チーム「スターズ」の同期、真田誠と樋口孝明。ドラフト5位からスター投手にのし上がった真田に対し、即戦力と期待された捕手・樋口は準レギュラーに甘んじていた。そして今季、40歳のふたりに引き際が訪れる。優勝争いにからむシーズン終盤、真田と樋口は17年ぶりにバッテリーを組むことになるが―予想外の展開を見せる引退ドラマを濃密に描く感動作。
「チームⅡ」堂場瞬一(実業之日本社文庫)
自分の力ではどうしても成し遂げられないことがある。
夢は、所詮夢。
ならば、託そう。
かつての仲間に。
彼ならできる、と。
いや、成し遂げてほしいと。
願ったからこその「チーム山城」。
相変わらず自己中心的なマイペースさで日々を過ごす山城だけれども。
浦たちの想いは確実に届いている。
そう確信できる、山城の内面の変化が伝わってきたのが嬉しい。
孤高で在り続けようとした山城だけど、独りでは何も成し得なかった。
なんだかんだ恵まれた男だなぁ、と思います。
取り戻すことのできないかつての走り。
それでも、走る。
勝ちに行くために必要なものは、技術、駆け引き、そして、自分を支えてくれる仲間の存在。
山城から引き継がれた浦の言葉がとても素敵。
『チーム』で山城と青木の会話に大笑いした私ですが。
今回も彼ら二人の、それも同じ場所での会話に大爆笑でした。
何かが私のツボに、ガツッとはまるみたいです。
内容(「BOOK」データベースより)
マラソン日本記録を持ち「陸上界の至宝」といわれる山城悟は、怪我と所属チームの解散危機で、引退の瀬戸際にいた。傲慢な山城に、かつて箱根駅伝を学連選抜チームとして共に走った仲間がサポートを申し出るが、彼は再起できるのか?熱き男たちの友情、葛藤、そして手に汗握る駅伝レースの行方は?スポーツ小説の金字塔『チーム』7年後の物語。
「ヒート」堂場舜一(実業之日本社文庫)
完璧にお膳立てのなされた舞台での、望まれた通りのレース。
結果を出せるだけの実力がありながら、思惑に乗ることを由としなかった山城は、
職業人ではなく、やはり競技者だ。
(天邪鬼という言葉はこの際置いておく)
「自分のためだけに走ればいい」という
山城の言葉はある意味正論で、何かが欠けている。
その欠けている部分を埋めてくれるのが浦なのだと思う。
迷いながらも職業人として自分の役割を全うしようとした甲本。
「最後まで走ればいい」という吉池の言葉で、彼もまた、競技者となる。
最後の最後まで競い合った二人。
彼らと一緒に私も「東海道マラソン」を駆け抜けました。
最後の一行。
そこからさらに物語が続くことを期待して捲った頁には解説が綴られていて、
ちょっと待って!私、『チームⅡ』買ってない!と、本気で思った私は
続が気になって相当錯乱しいたようで、
『ヒート』と一緒に購入した『チームⅡ』は手の届くところにありました(笑)
コースを作り上げていく過程が垣間見れたのが良かった。
たくさんの人がいろいろな努力を積み重ねて、素晴らしいレースが展開されるんですね。
内容(「BOOK」データベースより)
日本男子マラソンの長期低迷傾向に歯止めをかけるべく、神奈川県知事の号令のもと新設された「東海道マラソン」。県庁職員の音無は日本陸上界の至宝・山城悟のペースメーカー役に、孤独なランナー・甲本剛を起用する。果たして世界最高記録達成はなるか。数多の人間の欲望と情熱を乗せたレースは、まさかの展開に―。箱根駅伝を描いた『チーム』の続編。