きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2016.08.20 「流」東山彰良(講談社)
- 2016.08.19 「水滸伝3 輪舞の章」北方謙三(集英社文庫)
- 2016.08.16 「水滸伝2 替天の章」北方謙三(集英社文庫)
- 2016.08.14 「覇者の魔鏡(後編)炎の蜃気楼8」桑原水菜(コバルト文庫)
- 2016.08.11 「水滸伝1 曙光の章」北方謙三(集英社文庫)
- 2016.08.08 「覇者の魔鏡(中編)炎の蜃気楼7」桑原水菜(コバルト文庫)
- 2016.08.07 「新公安捜査Ⅲ」浜田文人(ハルキ文庫)
- 2016.08.04 「新公安捜査Ⅱ」浜田文人(ハルキ文庫)
- 2016.08.03 「光」三浦しをん(集英社文庫)
- 2016.08.01 「覇者の魔鏡(前編) 炎の蜃気楼6」桑原水菜(コバルト文庫)
「流」東山彰良(講談社)
家族。友達。恋人。近所の人。
人と人。
様々な係わりがあるけれども、どんな関係の中にあっても、情に篤い人たちの物語。
情と過去。
そして現在。
様々なものが絡み合い、物語に深みと面白さを醸し出す。
殺人事件の真相。
恋人との別れの理由。
無差別・無分別なものではなく、根底に情が絡んだもので在るが故にどうにもやるせない。
それは、秋生の祖父が己のしたことを深く悔いていたからこその行為であり、抱え続けた秘密。
それでも「自分が大事にされて育った」と噛みしめる秋生を愛したのは、
紛れもなく彼の両親であり、叔父叔母たちであり、祖父である。
人の人生は、死の瞬間まで滞ることなく流れていく。
私も流れの最期に「まぁ、いいか」と言えるべく生きていこうと思った。
水滸伝・武松・中森明菜。
自分が今タイムリーに読んだり聴いたりしていたものが順に並べられる偶然に嬉しくなります。
葉尊麟と宇文の胸の内を掘り下げて尋ねてみたかった気もするけど、
これは秋生の語る、秋生の人生の流れの物語。
彼の歩む人生の少し先が明確に示されつつも、その瞬間で幕を閉じた物語。
私はこの終り方、好きでした。
内容(「BOOK」データベースより)
1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能が、はじめて己の血を解き放つ!友情と初恋。流浪と決断。圧倒的物語。
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「水滸伝3 輪舞の章」北方謙三(集英社文庫)
それぞれの山寨でまとまりつつある男達。
盗賊から義賊へ。
変わりつつある彼らの成長は目覚ましい。
そして、個々の対話からも目が離せない。
蟠りの残る楊志と孔明の再会。
自らの存在意義を胸の内で問い続ける楊志に放たれた孔明の迷いのない言葉にぐっとくる。
安易に弱音を吐くことのできない立場になった晁蓋と呉用が二人きりで吐き出す本音。
袁明ら青蓮寺の者達もまた、役人の腐敗を憂いている。
それを正す方法を模索している。
だが、彼らが晁蓋や宋江たちとは決して相容れることはない。
思わぬ事態から追われる身となった宋江。
「梁山泊で会おう」
たまらなく魅力的な言葉だ。
「楊令と名乗れ」
楊志のこの言葉に、この子の成長ぶりを思い描いてちょっと震えました。
ああ、ここから、と。
そして、王進と王母の存在に心が安らぐ。
彼らの元で人として生き返り、或は成長する英雄のなんと多いことか。
「水滸伝2 替天の章」北方謙三(集英社文庫)
少しずつ近づいている夢。
だが、掴みとるにはまだ遠い。
だからこそ、「光は、必ずある」という
揺るぎのない晁蓋の言葉が、彼らを導く光となる。
各地に散らばる同志たち。
「時」が刻々と近づいてきていることを伺わせる描写に胸が弾む。
夢は語るだけではなく、実現させるに至る手段をきちんと描かなければならない。
この作品を読むたびに痛感させられる。
適材適所。
それぞれの役割の才能に長けた男たちの個性的な在り様がとてもおもしろい。
王倫が小さくなっていった理由はなんとなくわからなくはない。
だけど、それでは国は変えられない。
志を抱いた男たちの熱い想いが迸る。
そして、「志なんかくそくらえだ」といった白勝の熱い想いにもまた、心が揺さぶられるのだ。
武松にまったく寄り添えないのは私が女だからかな。
同情する余地どこにある?
とりあえず武松は自分を人間として生かしてくれた仲間の存在を
生涯忘れずに生きていくといいと思います。
「人間の想像力が及ぶかぎりの、壮大な物語を書きたい。私という創造者の矜持をかけて」
本の間からはらりと落ちてきた帯に書かれた北方の言葉に痺れました。
内容(「BOOK」データベースより)
梁山湖に浮かぶ天然の寨には、世直しを志す者たちが集まっていた。しかし頭領である王倫の堕落により、今は盗賊同然の集団となっている。宋江の命を受けた林冲は、安道全とともに寨に入りこんだが、そこには幾多の罠が待ち受けていた。一方、晁蓋は、巨額の税が賄賂として宰相に贈られることを知る。民の苦しみの結晶であるその荷を奪うための秘策とは。熱く血がたぎる「北方水滸伝」、第二巻。
「覇者の魔鏡(後編)炎の蜃気楼8」桑原水菜(コバルト文庫)
緊迫する戦いの連続。
渦中で対峙する謙信と家康の姿に、何故か私もハッとする。
そして氏照の示した肉親の情とやさしさに涙……。
「帰っておいで」
そうやって受け止めてくれる人は、もう、いない。
帰る故郷を失った景虎に突きつけられるのは、厳しい現実。
「私に甘えないでください」
なーおーえー。
誰もが、彼が恙鏡を壊すのではないかと危惧していた。
けれども、ギリギリの所で踏みとどまった直江。
その選択は間違ってはいない。
けれども、そうやって選択した道は、
高耶にとっても直江にとっても修羅の道であることには違いがないのだ。
日光!
日光に行かねば!という想いに駆られる巻。
何度も行ってますけどね(笑)
それよりも今は箱根に行きたいかな。
箱根神社をゆっくりまわりたい。
千秋の伊達最強説がなんだか嬉しく感じるのは、多分私の地元愛。
内容(「BOOK」データベースより)
「このひとを、鏡の中から解放してほしい」それが、直江が選んだ願いだった。北条氏康の化身した竜が持つ〓(つつが)鏡に呼応し、魔鏡から高耶の魂が放出された。意識を取り戻した高耶は風魔が支配する箱根を脱出し、譲が木縛されようとしている日光へ向かうのだった。天海僧正が徳川幕府守護のために、強力な呪法を行ったという『関東大三角』をめぐって北条と上杉夜叉衆の最終決戦が始まった。
「水滸伝1 曙光の章」北方謙三(集英社文庫)
不正の横行する政治。
暴利を貪る役人。
困窮を極める民。
そんな世の中を何とか作り変えようとする男たちがいた。
期待の持てぬ今の世の中のすべてを叩き壊して、新しい国を。
中心に立つのは、人を魅了して止まない二人の男、宋江と晁蓋。
彼らを軸に、志を同じくする男たちの輪が少しずつ広がっていく。
男達が顔を合わせるたびに心が躍り、
それぞれがとても魅力的でわくわくする。
決してぶれることのないしっかりとした芯を持つ男たちの生き様は、
たまらなく熱くて、目が離せなくなる。
彼らがどんな理想郷を作り上げていくのか。
壮大な物語の幕開け。
「別れるとき涙が出てしまう友を持てたのは、
あなたがきちんと生きたからですよ」
王進の母の言葉が胸に響きました。
獄中での凄惨な日々を生き延びた林冲。
故郷を追われた史進。
水場に強い阮三兄弟。
財源を一手に担う蘆俊儀。そんな彼に影のようにつきそう燕青。
あげていけばきりのない英雄たちの物語。
だけど、どこまでいってもベースに在るのは北方浪漫。
内容(「BOOK」データベースより)
十二世紀の中国、北宋末期。重税と暴政のために国は乱れ、民は困窮していた。その腐敗した政府を倒そうと、立ち上がった者たちがいた―。世直しへの強い志を胸に、漢たちは圧倒的な官軍に挑んでいく。地位を捨て、愛する者を失い、そして自らの命を懸けて闘う。彼らの熱き生きざまを刻む壮大な物語が、いま幕を開ける。第九回司馬遼太郎賞を受賞した世紀の傑作、待望の文庫版刊行開始。
「覇者の魔鏡(中編)炎の蜃気楼7」桑原水菜(コバルト文庫)
伸ばした指の先にある理想郷。
逃げ込んだ先に在るのは、終らない狂気と妄執との決別。
他者の介在しない、二人だけの楽園で、永遠に、貴方と……
それは、独りよがりの身勝手な苦悩。
だが、景虎は直江に決断を委ねる。
そう思えてならないからこそ、直江と一緒に苦しくなる。
ほんの一瞬、鏡を抱いて水底へ沈むことを夢想する。
高耶が景虎と高耶の狭間で揺れるように、
直江もまた、景虎と高耶の狭間で揺れている。
高耶をないがしろにしない彼の想いが嬉しい。
ただの「男」でいいんだよ、と言いたいけど、
直江はそれじゃ、納得できないんだろうね。
氏康公がまさかの姿を現したところで、次巻へ。
箱根に改めて行きたくなります。
でも、今行ったら泣きそう(苦笑)
伊達、といえば政宗を連想するように、
私的には、北条と言えば氏照なんだけど、これはミラージュの影響大?
一般的にはどなたを連想するものなのかしら?
内容紹介
魔鏡に魂を封じられ、北条氏照(うじてる)の手におちた高耶(たかや)。思念波(しねんは)によって送られた映像を頼りに箱根に駆けつけた直江(なおえ)が見たのは、生きる屍(しかばね)と化した高耶の姿だった。《闇戦国(やみせんごく)》制覇を目論む北条一族は、景虎(かげとら)の魂を神木(しんぼく)に木縛(こばく)し、霊的な兵器にしようとしているのだ。一方、伊達小次郎(だて こじろう)に拉致(らち)された譲(ゆずる)は、森蘭丸(もり らんまる)の催眠術によって、封印されていた強大な《力(りょく)》を、徐々に発現させようとしていた…!!
「新公安捜査Ⅲ」浜田文人(ハルキ文庫)
再読なのに、うっそー!と叫んで読了。
「犯罪者を逮捕する。それだけのことです」
と、きっぱり言い切る要のような刑事がいる一方で、
警察がなんだか悪者集団になっています。
ちょっとちょっと!
警察は警察の仕事を。
企業人は企業人の仕事を。
政界は政界の仕事を。
欲に溺れず、金に目を眩ませず。
己のテリトリーで職務を全うすればこんなことにはならない気がする……
と思う私は甘いのかな?
警察が警察の仕事をしないから、結局、鹿取たちが汚れ仕事に手を染めるしかなく、
あんなやり方でしか真相が暴けない。
やっぱりなんだか釈然としない。
さて。
次からは公安事案からは離れて、要たち、強行犯三係の面々の物語へ。
内容(「BOOK」データベースより)
公安刑事・螢橋政嗣の宿敵である東和地所の中村八念は、元公安の桃山を子飼いにし、警察組織に接近して東京の支配を目論んでいた。一方、金融ブローカーの転落死事件を追う警視庁の鹿取信介はその裏に中村八念の存在をかぎつけ、単なる殺人事件以上の何かを感じていた…。金と権力と野望が渦巻く中での苛烈なる闘いを制するものは一体誰なのか?大好評「都庁シリーズ」、堂々の完結篇。
「新公安捜査Ⅱ」浜田文人(ハルキ文庫)
巨大な利権。
動く巨額の金。
縁も興味もない自分にはそれが人を殺してでもどうにかしたいものなのかどうかが
さっぱり理解できないが、それらを動かせる者たちは、
得られる甘い汁に手を伸ばさずにはいられないのだろう。
秘匿される情報。
歪められる真実。
それらに屈しないためのスタンドプレー。
公安の蛍橋。捜査一課の鹿取と要。そしてやくざの三好。
男たちの見事な連携によって暴かれる真相。
絶対的な信頼と、揺るぎない絆。
彼らの係わり方がとても好き。
やくざに匿われてふて腐れる要の幼さに「幾つだよ」と突っ込みつつ、
要を守る為に奔走した彼らに「お疲れ様」と囁きかけた読了後。
東京オリンピック。
豊洲への移転問題。
リアルな話題を散りばめつつ、物語は展開します。
「名誉でも地位でもカネでもない。
己をピカピカに磨くたえい生きてるような女や」
という蛍橋の言葉を受け、「男はみんなクレンザーか」と返した鹿取。
夜の世界を強いくしたたかに生き抜く女の生き様を表した言葉がとても印象的でした。
内容(「BOOK」データベースより)
銀座中央市場の移転予定地で死体が発見された。被害者は銀座中央市場の仲卸業者の矢口和也。だが、一見、普通の殺しに見えた裏には、市場移転にからむ、巨大な利権問題があったのだ。児島要警部補は再び都知事の石橋太郎に相対する。一方、神奈川県警公安二課の螢橋政嗣は、ある任務のために、仮出所した関東誠和会組長の三好義人を訪ねるのだが…。書き下ろしでおくる、都庁シリーズ第二弾。
「光」三浦しをん(集英社文庫)
自分は悪くない。
あれは仕方がなかった。
心の奥底に抱いていた想いがあるが故に、彼らの歩み続けた歪んだ道。
手を伸ばせば、そこにささやかな幸せがあったかもしれないのに。
それが必然であるかのように、暗く淀んだ闇へと誘われていった彼ら。
罪人は何事もなかったかのように日常へと舞い戻り、
彼女はすべての真実に蓋をする。
神経を逆なでする不快感。
だけど、それもまた、人の業。
ありえない話ではないと思えるからこそ、苦い想いを飲み下したかのような読後感に、
暫し呆然となった。
タイトルの「光」。
いくつもの「光」の解釈が頭を過った後、
いつか、すべての出来事を白日の下に晒すための光であってほしいと、私は思いました。
「幸せ」という言葉とは程遠い物語。
だけど、一気に最後まで読ませる何かを孕んでいる。
すべてを覚悟したうえで運命に身を委ねた輔。
家族や恋人を守る手段をどこかで間違えた信之。
どうにかならなかったのか?と思うけれども、
どうにもならなかったからこそ、この結末なのだろう。
内容(「BOOK」データベースより)
島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と美花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は美花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。それから二十年。妻子とともに暮らしている信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は、美花を再び守ろうとするが―。渾身の長編小説。
「覇者の魔鏡(前編) 炎の蜃気楼6」桑原水菜(コバルト文庫)
400年間抱え続けた直江の想いをまともにぶつけられ、困惑する高耶。
17年しか生きていない彼に、逃げるなと迫る千秋は身勝手だ。
上杉の夜叉衆の面々が自らの内なる想いと対峙して混乱と苦悩に陥る中、
高耶に向けられた氏照の言葉が胸に刺さる。
大戦からの復興の回想。
計り知れないダメージを被っても、人は立ち上がる術を知っている。
諦めない限り先に進むことができる。
今の直江は袋小路にの中に在る。
凶器にしかならない想いを抱えた己に下した悲観的な結論が痛い。
そして、彼の手の届かない所で高耶の身に起こった出来事に呆然となるのだ。
この巻からリアルタイムで追いかけたので、
次巻を手にするまでの間の悶々としたことといったら。
ドキドキしながら続きを待つのも読書の醍醐味だけど、
続きが手元にある安心感も素敵。
氏照と高耶の対話のシーン。
高耶の台詞はすべて関さんの声で脳内再生。
先に台詞が出てきて文字を後から目で追いかけるような感じになっちゃって……
「鳥の翼」で色々気持ちが揺さぶられた結果、うっかり泣きそうになりました。
内容(「BOOK」データベースより)
日光東照宮から、何者かに盗まれた秘宝、『〓鏡(つつがきょう)』は、人間の魂を封じこめる魔鏡だった。一方、由比子とともにプールに出かけた紗織は、謎の白い腕が次々と若い女性を水の中に引きずりこむのを目撃する。〈闇戦国〉の北条の動きをめぐって、霊が活性化しているのだ。紗織の連絡を受けて〈調伏〉に向かった高耶たちだが、彼らを待っていたのは、練馬城の悲劇の姫・伊都と豊島一族の怨霊群だった。