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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞」門田隆将 (角川書店)



東日本大震災から九年目を迎えようという今この時期にも、
本書で記された各地域で、様々な建物を建てる工事が行われている。
それだけ甚大な被害だった。
あの震災を経験した今、
あのタイミングで海に向かう人も、海辺に留まる人もいないだろう。
津波の恐ろしさは骨身に沁みている。
自身が被災しても尚、新聞を発行しようとした人たち。
配達をするために瓦礫の間を縫って販売店に集った配達員の人たち。
未曽有の災害に遭遇しながらも、
己の職務を全うしようと全力で奔走していた人たちがいたことに胸が熱くなる。
多くの人たちの行動と言葉を取材して綴った本書。
涙の読了。

登録1500冊目。
身が引き締まるような思いで読了。
2011年3月11日。
頁を捲りながら、当時の情景がリアルに浮かんでくる。
振り返りって大事だなぁ、と改めて思ったので、
3月に震災関連本を読むことは、今後も続けていきたい。

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「アウト & アウト」木内一裕 (講談社文庫)



やられたなぁ、と思いつつ。
ラスト、涙ぐんでしまった。
くっそー。←褒めてる。
「やらせてみたかった」
そんな理由で一人の青年の未来を奪った男は万死に値する。
ふざけんな!←憤っている。
あとは、これぞエンタメ!と突っ込み不要で楽しく読了。
客に「帰れ」と言う不遜な探偵・矢能を取り巻く問題を抱えた男たち。
殺人事件に巻き込まれた矢能と彼らとのやりとりがとても愉快。
危機回避のためにはここが正念場!というタイミングで
畳み掛けるように矢能に降りかかるトラブル。
「最悪だ……」からの逆転劇がお見事。
栞ちゃんの存在が癒し。

始めましての作家さんは久しぶりの背表紙買い。
(棚をスラ~~っと眺めて、気になったタイトルで手に取る)
前作『水の中の犬』があるようなのでそちらも読んでみよう。
個人的に一番インパクトが強かった人は
「工藤でございます」の工藤さん。
イメージ映像は何故かキツネ目。何故?(笑)



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「屍蝋の街」我孫子武丸 (双葉文庫)



前作よりもSF色が強く、サイバーシティでの賞金首が
現実世界でゲーム参加者にリアルに命を狙われるという展開に。
バーチャルが介するせいか、
個々のキャラの魅力や立ち回りは前作が上回る。
だが、溝口とシンバに焦点をあてれば、
既に他人の領域を脱し、親子のような、相棒のような、
運命共同体のような、何とも言えない
離れがたい関係性を築いている様から目が離せない。
性的な関係を疑われてぎゃんぎゃん否定するのも
思わせぶりに嘯くのももはやデフォ。
そして脳内での溝口vsドクの戦い。ヒヤリとする余韻を残しつつ、
これの融合がベスト!と思わせてくれる続編希望!無理かな?

結局ラスボスは健在だから続編は書けると思うのよね。
で、溝口とシンバの関係ももっと美味しい展開になるはず!
(くっつくとかくっつかないとかいう意味ではなく)
ついでに片山女史が愉快に絡んでくれると嬉しい。
妄想はメッチャ膨らむんだけどなー。
まぁ、ないだろうな、続編。




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「腐蝕の街」我孫子武丸 (双葉文庫)



イカれてるけど、惹きつけられる。
突っ込みどころはあるけど、面白いから無問題!
多くは読んでいないけど、我孫子作品の中で一番好きな話。
正規ルートから外れた思考の警察官・溝口と、
触れたら切れそうな危うさを孕んだ少年・シンバ。
漢気のある女刑事・片山女史。
個性的過ぎる面々がとても魅力的。
死んだはずのシリアルキラーの影を随所に孕ませながら
進行する極々近未来のザ・ハードボイルド。
初読の時は呑み込まれたかと思ったラストだけど、
彼は現在進行形で戦っている。
守りたいものは守りきった。
わくわくしながら続刊へ。


新宿の表の顔・裏の顔と言われると、
どうしたって『魔界都市新宿』が思い浮かぶ。
『魔王伝』バイブル!
いや、私が次に読むのは続刊の『屍蝋の街』。
我孫子作品は私的には当たり外れがありすぎて、うかつに作家買いが出来ないのが残念。

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「わたしの美しい庭」ポプラ社(凪良ゆう)



やさしくてあたたかな物語。
飾らないありのままの自分でそこにいていいのだと語りかけてくれている。
何かの枠に嵌ることも、誰かの期待に応えることもしなくていい。
ただそこで楽に呼吸をすることを受け入れてもらえる空間と空気感が終始漂っている。
彼らの抱えた過去がチクリと刺さるけれども、
彼らの織り成す空間がとても心地良い。
生きていれば、色々な事態に直面する。
走り続けることはできないし、笑ってばかりもいられない。
どうしても耐え難い何かを抱えてしまった時には、
私もその形代にわずらわしいモノを託そう。
そしてまた明日、前に進む。

それぞれが抱えた傷が痛くて、だけどみんな優しくて。
特に百音の優しさと率直さがジワリと沁みた。
凪良さんの一般書はすべてお友だちが貸してくれました!
どれもまた読みたいと思える作品ばかりでとても良かった。








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「抱影」北方謙三 (講談社文庫)



スケッチブックを抱えて街を自転車で走る。
経営する店を自転車で巡回する。
ムスタングは雨の日に転がし、数日かけて煮込み料理をする。
そして、一人の女を想い、絵を描く。
男の日常が繰り返し描写される。
そこに少しずつ入り込んでくる、いつもと違った出来事。
そのイレギュラーに男の日常が、侵食されていく。
いや、違うか。
男は自ら望んで引き寄せた。
だから、誰にも止めることはできなかった。
女を失ったことがその契機か?と問えば、鼻先で笑われただろう。
男はすべてを全うした。
傍らには彼の絵を心酔するヤクザ。
光りのない世界への水先案内人。

久しぶりの北方は、相変わらずな北方ワールドでした。
そしてこれ、ホントに最近、映画で公開されていたのね~。
『抱影』の映画タイトルが『影に抱かれて眠れ』になっているのは納得。
そしてキャストを見て……公式HPをそっと閉じました。←私の脳内と映像と違った(笑)








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「ガリバー旅行記」スウィフト (角川文庫)



無尽蔵に湧き上がる想像力と創造力。
現実社会に対する不平と不満。
純真な遊び心。
隠しきれない上から目線。
混ぜてシェイクして出来上がったのが本書。←私見。
読みながら書かれた年代を再確認してしまったほど、
300年近く前に書かれた作品だということにまったく思い至らない。
もちろん原書ありきだけど、翻訳もうまいんだなぁ。
児童書等で馴染んだ小人の国、巨人の国。そしてラピュタ、と語られて、
最後が予備知識なくぶち当たったフウイヌム国。
個人的にはこれが一番興味深くて面白かった。全く共感はできなかったけど。
私は人間であることを謳歌する。


小人さんたち良い人。
……と思ったけど、ガリバーを生かそうとした理由にびっくりして納得。
巨人さんたち良い人。
……と思ったけど、ああ、そういう計算があったのね、と。
ラピュタがあっさり終わっちゃったけど、他人に興味がない種族の話は進展しない。
フウイヌムで余生を全うすることがガリバーの幸せだったかもなぁ、とは思うけど、
帰国後の奥さんに対する態度はひどいと思った。
身重の奥さんを置いて航海に出た自分を顧みよう。
【ガーディアン必読 91/1000】

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「R帝国」中村文則(中央公論新社)



読みながらいくつかの作品名が頭を過るが、
これは、現代を生きる人たちへの警鐘も踏まえた中村文則なりのディストピア。
作中で語られる事象に対して何を思い、をどう受け止めるかは私たち次第。
第一部は震えるほど面白かった。
そのまま突入した第二部。
同じような温度で最後まで作品世界に没頭できたら良かったんだけど。
ここ最近の彼の作品での女性に対する描写に辟易していた私は、
ここでもその壁にぶち当たり、我慢の限界を突破したみたい(笑)
ふざけんな、と、蟠りが燻りまくっての残念な読了。
もったいなーい。
数年後に読み返したら違ってくるのかしら?

手持ちの中村作品はあと3冊。
とりあえず買ってしまっているので、
全部を読みきった時点で彼と決別するか読み続けるか判断することにしよう。
彼の描く作品世界は本当に好きなだけにこんな決断を迫られるなんて残念!
あ、でも過去作品に対する愛は変わらない。

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「流浪の月」凪良ゆう(東京創元社)



「うちにくる?」と問われ、「いく」と答えた。
終わりにしたかったから。
行き場がなかったから。
二人の間に何があったのか。
どんな感情が芽生えたのか。
それは、当人にしかわからない。
きみのため、あなたのため。
つらかったね、怖かったね。
変質者。病気。
外から囁かれた言葉の数は数多あれども、真実を知る彼らの声は届かない。
閉塞感に押しつぶされそうになりながら読みつづけ、
だけど、彼らのたどり着いた答えに安堵する。
一人で孤独の淵に沈められなかったことに。
誰にも言えない悩みを抱えた時、人はどこに、そして誰に救いを求めればいいのか?

圧倒的な読み応えのお借り本。
そのうち買うつもりだったから貸してもらえ良かったー!
でも欲しくなるね(笑)
途中途中であれ?ってひっかかったことが全部回収されて、あ、すごいわー、って唸った。
会社に行かないといけない現実があって、読むのを途中で区切らざるを得なかったけど、
ひたすらこの作品世界に没頭して一気に読み切りたかった。


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「始まりのエデン 新たなる神話へ」榎田尤利 (講談社X文庫 ホワイトハート)




それは不可避だとわかっていたから。
ずっとずっと胸が苦しかったけど。
その瞬間には悲しみと、そして安堵で落涙。
彼がひとりではなかったから。
孤独ではなかったから。
そのことがとてもうれしくて哀しい。
人の強さ、弱さ、ずるさ、愛情深さ。
色々な想いが詰め込まれていて、彼らの一言や行為が胸に刺さった。
全巻を通して教えられたのは「世界を変えたいのなら、まず変わるのは自分」ということ。
他者に責任と行動を委ねるのではなく、自らの手で未来を勝ち取るべきなのだと。
彼らは行動で示してくれた。
一つの戦いの終りは、新しい困難の始まり。
だけど、彼らは乗り越えていくだろう。


クリスマスや誕生日に「何が欲しい?」と聞くと必ず「本!」と答える姪っ子ちゃん。
この作品はいつか、彼女にも読んでもらいたい。
私の本棚は中学時代から集め続けた本がどっさりみっしり詰まっているので、
(何度も整理しているから残っているのはお気に入りばっかり)
彼女の年代に応じてその本たちを読んでいってもらいたいなーと思っているのです。

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