きままに読書★
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カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2019.08.26 「月の影 影の海 (上) 十二国記 1」小野不由美 (新潮文庫)
- 2019.08.25 「黄昏の岸 暁の天 十二国記 8」小野不由美 (新潮文庫)
- 2019.08.24 「風の海 迷宮の岸 十二国記 2」小野不由美 (新潮文庫)
- 2019.08.24 「魔性の子 十二国記 0」小野不由美 (新潮文庫)
- 2019.08.21 「シェリ」コレット (岩波文庫)
- 2019.08.14 「夜哭烏 羽州ぼろ鳶組」今村翔吾 (祥伝社文庫)
- 2019.08.10 「毎日晴天!4 いそがないで」菅野彰 (キャラ文庫)
- 2019.08.07 「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」今村翔吾 (祥伝社文庫)
- 2019.08.03 「私の消滅」中村文則(文春文庫)
- 2019.07.30 「血涙・下」北方謙三 (PHP文庫)
「月の影 影の海 (上) 十二国記 1」小野不由美 (新潮文庫)
『風の海 迷宮の岸』を先に読んでいたせいもあって、
景麒の説明不足と無愛想さに失笑。
泰麒との逢瀬から何を学んだ?
とはいえ、慶という国の現状を考えれば、
景麒にも余裕がないのはわかる。
そして、彼は泰麒の次に若い麒麟。
そう考えれば、彼もまだ、成長途中なのかも。
現代社会で高校生として生きてきた陽子。
そんな彼女が突然連れてこられた世界。
ああ、ここから彼女の物語は始まったのだと。
なんだか感慨深い。
異世界でたった一人、闇と妖魔と対峙しながら生きねばならぬ彼女の孤独と恐怖、
故の荒みきった心が酷く痛々しい。
諦めないで。光は必ずあるから。
困った人に手を差し伸べるのが人なら、
その困った人を更に窮地に陥れるのも人。
騙したり裏切ったり。やだなー。
騙した人は騙される。
手を差し伸べた人には救いの手が伸べられる。
せめて、そんな因果を期待したい。
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「黄昏の岸 暁の天 十二国記 8」小野不由美 (新潮文庫)
一人一人にできることは極僅かでも。
力を合わせれば成し得ることがあるのだと。
知らされる。
そして、自らの行動は自らに跳ね返ることを痛切に実感する。
信ずるに足る人間だと信じてもらうためには
自らの行動で証明する必要があるのだと。
「人は自らを救うしかない」
厳しい言葉だけど、真理。
慶も戴もギリギリのところで踏みとどまっている国。
慶はこれから成長していこうとしている国。
戴は破滅に向かっているようにしか見えない国。
そんな戴を救おうと必死で立ち上がった満身創痍の二人。
気になって仕方のなかった国の行方が、今秋漸く知れる喜び。
7年の年月は人を成長させる。
稚さのなくなった泰麒が頼もしくもあり、ちょっと淋しくもある。
何度読んでも氾王と延王の漫才みたいな掛け合いがとても楽しい。
この二人、良いコンビだわ。
そして、王として懸命に在ろうとする陽子にはエールを。
甘えたことを言わない彼女は凄いと思う。
「風の海 迷宮の岸 十二国記 2」小野不由美 (新潮文庫)
何度読んでも泰麒のいとけなさと愛らしさと懸命さに涙。
子どもが頑張っている様は胸に刺さる。
10年間異世界で暮らし、漸く戻ってくることのできた故郷。
帰還したばかりの彼に課せられた重大な使命と周囲の期待。
そのことが彼に大きな重圧をかける。
この世界のしきたりを泰麒は知らない。
子どもらしく無邪気に振る舞っていた泰麒が、だんだんと萎れていく様が辛い。
己に自信と誇りを持ち、何事にもまっすぐに立ち向かっていく驍宗の様は潔いと思うけど、
苛烈すぎる覇気が眩しすぎて痛いのは伝わってくる。
そんな驍宗をも唸らせるほどの資質を持った泰麒。
胸を張って、自信を持って。
何度読んでも悪役ぶっている延王に惚れ惚れする。
驍宗にはもう少しゆとりというか遊び心があってもいい気がする。
これから……かな。
「魔性の子 十二国記 0」小野不由美 (新潮文庫)
壮大な物語の壮大な序章。
序章の段階でここまでの世界観とプロットがしっかりと構成されていることを
再読することで実感する。
彼が忘れてしまった空白の時間。
今彼がここにいることで混乱に陥っている国の様相。
紡がれる異世界の言葉の意味。
目に浮かぶ事象に想いを馳せては、しみじみと思う。
ものすごい物語を手にしているのだと。
至福と感動が込み上げる。
居心地の悪さを感じながら漫然と過ごす世界から、
彼が本来の在るべき世界へと戻るまでの物語。
「あなたが死ねば、あの方も死にます」
そう。あの方の元へ。
そして、滞っていた時間が動き出す。
10月の新刊が待ち遠しい。
この作品に関しては、自分の抱く感想って何回読んでも変わってないんだなーと。
前回の自分のレビューを読んでみて改めて思う。
同じような事言ってる(笑)。
ので、今回の感想は敢えてそのままの部分と、あんまりにも同じすぎて書きなおした部分と。
『人間失格』はガラッと印象が変わった作品。
『星の王子様』も引用箇所がまったく同じだった。
初読の時には素通りした気づきがあるから、再読は面白い。
新刊発売の前には既刊の再読を。
これは読メで学びました。
「シェリ」コレット (岩波文庫)
彼らと同じ言葉で、私からも最高級の賛辞を。
レア、最高にいかす女。
凛とした潔い強さと、芯の通った女としての矜持を持ち続けた彼女。
そんな彼女が見せた最後の弱さが、だからこそ胸に迫る。
そして、彼女の示した見事な引き際。
本音を隠したままだといつまでも後を引く。
綺麗だった思い出に後生大事にしがみつく。
だから、本音を晒すことは必要だった。
現実を認識するために。
これからの一歩を踏み出すために。
そして私はレアとエドメの幸せを心から願うわ。
自らの老いを認識したレアも、きっと再び花開く。
年相応の艶と深みを帯びた花を。
タイトルのシェリどこ行った!?という感想になってしまった(笑)
結婚するならちゃんとけじめつけなよ!と言いたくなったからかな。
まぁ、彼が甘ちゃんになってしまったのは、
周囲の女たちにも責任はあると思うんだけど。
そしてこれ、続編があるんですね。
タイトルが『シェリの最後』。
内容をサラッと見た限り、
読みたいような、このまま読まずにそっとしておいた方がいいような。
積読の山が減ったら考えよう。
【ガーディアン必読 85/1000】
「夜哭烏 羽州ぼろ鳶組」今村翔吾 (祥伝社文庫)
公的な決まりごとは、時に火急の事態が起きた際には枷になる。
それを悪用した卑劣な者たちによる悪意に塗れた放火。
大切な家族の命か、市井の民の命か。
計るべきものではないはずのものを乗せられた天秤の狭間で苦悩する火消したち。
苦境を打破しようと立ち上がった男たちの漢気と覚悟に痺れ、
仲間を思う気持ちの深さに打たれる。
そして、火消しの家族の女たちの気概と覚悟もまたカッコいい。
才覚のある上に立つ者が慕われている組は、組織として立派に機能するし、とても魅力的。
ぼろ鳶に新しい仲間が加わって、これからの彼らの活躍が増々楽しみ。
「土左衛門」の言葉の由来。
知ってた気もするけど、改めて教えられて、なるほど!となりました。
今回も刺さったのは左門の言葉。
「惚れた男の命に張る。これのどこが安い」
こんなセリフを真顔で真摯に言い切ってしまう男たちの物語。
「毎日晴天!4 いそがないで」菅野彰 (キャラ文庫)
中編2篇。
前半は勇太と真弓。
今はどんなに好き合っていても先のことなんてわからない。
だけど、その未来を疑ってしまったら、一緒にいること自体が辛くなる。
だから信じるんだと思うんだよね。こうありたい未来を。
足りていなかった部分を言葉で補いあって手を繋いだ二人。
この子たちは揉めるたびに絆を深めていっている気がする。
後半は大河と秀……というよりも、大河の物語。
弟たちを守らなければ、親がいない分たくさんの愛情を分け与えねば、
と、必死で生きてきた大河が見失ってしまったもの。
皆が笑っていられるのは、彼らふんだんに与えたものがあるからなのだと。
伝わったよね?
兄離れも弟離れもまだまだだなぁ、と思うけど。
秀と勇太が加わることによって
帯刀家の兄弟たちも、そして秀と勇太も、
人として成長して行っている様が見て取れるのが嬉しい。
総勢6人一つ屋根の下。
このままずっと一緒にはいられない。
いずれ彼らはバラバラになっていく。だからこそ、今を大切に。
「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」今村翔吾 (祥伝社文庫)
弱さと強さを併せ持つのが人。
故に、一度気持ちが折れてしまっても、そこからもう一度立ち上がることができる。
一章ごとに増えていく仲間たち。
垣間見える彼らの人生。
岐路に立たされていたり、何かを抱えていたりする彼らは、
源吾に出会うことによって変わり、彼らに出会うことによって
火消しとして致命的な傷を負った源吾もまた変わる。
「人は何度でも立ち直れる」と叫んだ左門の言葉と、
源吾を支え続けた妻・深雪の情の深さにホロリとした。
業火に立ち向かう江戸の火消したちの物語。
ヤバイね。おもしろすぎ。
そして加賀鳶の勘九郎がが気になる私。
構成がとても親切。
江戸の火消しがなんたるものか、全く分からずに読み始めてもすんなりと理解できるように
しかも説明くさくなく示されている。
それにしても……あんなに燃えた町を再建するのにどのくらいの時間がかかるのかしら?
建材は必要な分、すぐに集められるものなの?
と抱いたクエスチョンはチラ見した次巻冒頭でしっかり記されていました。
はい。
既刊全部そろう日は遠くないかと……(笑)
「私の消滅」中村文則(文春文庫)
「あなたはここにいていいの。ここにいれば怖いことはなにもないの」
抱きしめて、そんなふうに囁きかけたい。
この世界が、すべての幼い子どもたちが安心して過ごすことができる環境ならいいのに。
だけど、現実はそうじゃない。
「これまで経験することのできなかった、この世界の何かの平穏を」
この一文に抉られる。
「経験することのなかった」ではなく「できなかった」。
涙が零れた。
そして大人は己のしでかした愚かしい行為について、容赦なく断罪されるがいい。
だけど、その行為が意識下で操られたものだったら?
戦慄するしかない。
私は私。
迷いなく言える自分でありたい。
文庫化待ってた!
久々の中村文則作品読了後に深いため息。
感覚的に馴染んだ彼の作り出した世界に浸れる幸せ。
「血涙・下」北方謙三 (PHP文庫)
何のための戦いか?
と、己の中で問いかけながら読み続け、
最重要な局面での、味方のはずの軍からのあんまりな仕打ちに
「またかよ!」とギリギリとした思いを噛みしめる。
なんなの、この理不尽。
使い捨てられるとわかっていながらも
全力で戦いに挑んだ楊家の者たちが痛々しい。
これが「国家」という柵に縛られるということ。
やりきれない。
国の在り様を真摯に論じる次世代を担う若者たちの姿が唯一の救い。
二人の偉大な父を持った彼の苦悩と再生が
個人的にはクライマックス。
誰も彼もが結局は父の遺志に殉じた。
滅びの美学。
そんなものはいらない。
生きて欲しかった。
個人的には白き英雄を見送ったところで「完」で良かったわ。
ああ、でもそうすると副題が『新楊家将』ではなくなってしまうかしら?
楊家の男たちの死が理不尽すぎて、憤りとやるせなさしかない。
この作品で北方登録数100冊!
記念すべき節目(?)の作品で何故か憤っている私(^^;