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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「重力ピエロ」伊坂幸太郎 (新潮文庫)



洒落た会話の繰り返し。
だけど、語られる内容はとてつもなく重い。
忌まわしい事件の後に生まれた春。
父も母も泉水も。
誰もが春のことを家族以外の何物でもないと思っていて、
春自身もそのことは疑っていない。
だけど、春の中にはどうしても拭えない怒りと影がある。
泉水と春の兄弟関係がとても好き。
泉水の示した落としどころが最高。
そして、二人の父の懐の広さがあたたかく沁みる。
絆の深さは血縁ではなく、過ごした時間と愛情の深さによるものだ。
とても素敵な家族像がここにある。
紙一重だけど、夏子さんもナイスサポートだった。

登録1300冊目。
キリの良いことに気付いたので、馴染のある場所がふんだんに出てくる伊坂作品を。
一つ一つの間に時間は空くものの、
小説→映画→小説の順に廻ったおかげか、
今回の再読にあたって映画のイメージが大きすぎたのがちょっと残念。
純粋に伊坂さんの小説世界だけに浸りたかった。
まぁ、それだけ映画の印象も悪くなかったってことなんだけど。
地元名物のカスタード菓子。私も好きー!

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「代償」伊岡瞬 (角川文庫)



理解の範疇の外にある悪意に晒された時、
一体どうすればいいのか。
身を守る術、もしくは戦うツールを身に着けておくことって
大事だよなぁ、とは思うけど、じゃあ、何を?となる。
そもそもが謂れのない悪意だから、気づいたときには逃げ場がなくなってしまう。
悪意の連鎖を断ち切るためには
たった一人でも味方がいることって、とてつもなく大事。
一人きりだったらその悪意に呑み込まれ、沈んでしまっただろう。
犯罪を犯すのに年齢って関係ないんだなぁ、と
納得できてしまうところが怖い。
話し合えば理解できる。
諭せばわかってもらえる。
世の中にはそんな相手ばかりではない、と警戒して構えることが自己防衛の一歩?
それはそれで寂しいね。

馳星周の『虚の王』
櫛木李宇の『死刑に至る病』
そして『凶悪―ある死刑囚の告発』
あたりを想起させられる。
「達也」も含めた上で考えると、一番気持ち悪いのはやっぱり「先生」。
絶対に近づいてはいけないのは「栄司」。
「榛村」には気付いたら丸め込まれてる気がする。←ダメじゃんww

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「十角館の殺人 <新装改訂版>」(綾辻行人) (講談社文庫)



引き金になったのは一人の学生の死。
ひとり。そしてまたひとり。
孤島でジワジワと殺されていく学生たち。
彼らの個性がとても魅力的で惹きつけられる半面、
犯人の動機にまったく共感できないので、やるせなさしかない。
挙句は「審判」?何自分に都合の良いこと言ってるのよ?と、
揺さぶってやりたい思いがチラリと。
完全犯罪を目論んでくれた方がまだ納得できた気がするけど、
それだと逆に犯人の動機がブレるのか。
そのモヤッと感も含めて作品としての完成度の高さは文句なし。
頁を捲ったあの一行のインパクトは、何度読んでもガツンとくる。

私の読書記録によると、初読は1995年。
うん。記憶も薄れてなくなってるから、色々新鮮に読めるわ(笑)。
興味深いのは同じ時期に読んだ『占星術殺人事件』の感想で金田一はじめに対して憤っていること。
そっちでネタバレあったのかな?……という気もするんだけど、謎(笑)
以前は色々つまんで読んでたけど、最近ではミステリーはめっきり読まなくなったなぁ。

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「逆説の日本史6 中世神風編」井沢元彦(小学館文庫)



鎌倉新仏教に関する記述がとても面白かった。
基礎知識が薄い分、読むのに時間がかかったけど、
釈迦の仏教と現代日本で認知されている仏教との違いが
分かりやすく説明されているので内容がスッと入ってくる。
仏教を日本独自のものとして発展させた日本人のフレキシブルさが好き。
そもそもが八百万の神の国であり、言霊の国であるんだなぁ、と改めて思う反面、
「空想的平和主義」に危機感を抱いてみる。
そして記述は鎌倉時代を経て南北朝へ。
過去の出来事が現代にまで脈々と影響を与え続けるのも日本独特なのかな?
ものすごい読み応えのあった一冊。


そのうち北方の『岳飛伝』を読む気満々だったわけだけど、
彼の最期がどどーん、と記載されてて、ええ~~!ネタバレ~~!となってみました。
北方はそこのところをどんなふうに書いてるんだろう?興味津々。
一度見ているからこそ、「え、そうだったんだ!」という気づきがある。
薬師寺の三尊像は本書の内容を踏まえてもう一度見に行きたい。

■行った場所:薬師寺(三尊像は再見必須)・永平寺・佐渡■行きたい場所:四天王寺・千早城(大阪)湊川神社(神戸)

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「楠木正成 下巻」北方謙三(中公文庫)



わかってる。
わかってるけど悔し泣き。←顕家が都に駆けてきたところで。
朝廷と新田の馬鹿さ加減には怒りしかない。
諦念しかなかった正成。
父に裏切られた大塔宮。
彼らが追い求めたものが、そして築こうとしたものが
幻だったと気づいたときの無力感が半端ない。
自分のことだけを考えていたのなら、もっと穏やかに暮らせただろう。
だが、彼らは考えた。
この国の在り様を。
未来を。
その結果がこれ!?と理不尽に震える。
すべてを俯瞰していた尊氏。
今回初めて尊氏の人となりをかっこいいと思った。
最後の尊氏と正成の邂逅がとても好き。
そして読後には虚しいため息。


馬鹿だなぁ、私。と思いつつ、顕家を思って号泣。
そして正成と大塔宮の諦念を思ってまた涙。
地図があったら良かったなーと、関西方面の土地勘が全くない私は思いました。
尋ねてみたい場所がいくつか。特に千早城。
それは今後の旅のお楽しみに。

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「暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出」綾瀬まる 新潮社



どんな災害に見舞われたとしても。
命ある限りその過酷な状況下で人は生活していかなければならない。
当たり前のものが当たり前でなくなった瞬間は、ただ必死だ。
明日に命を繋ぐために。
当時の状況を著者が見たまま、体験したままに綴られるノンフィクション。
自分のことで手一杯な時にでも、持てるものを誰かと分かち合おうとする人の優しさがあたたかく染み入ってくる。
その一方で、情報を隠蔽したり、差別をしたりといった行為も後を絶たないことがやるせない。
人は「自分の身に降りかからないとわからない」。
だからこそ、語り伝えていかなければならないことがある。
知ろうとしなければいけないことがある。

今年の震災関連本はこの本をチョイス。
そのタイミングで「あの日の星空」というドキュメンタリー番組を放送していて、
引き合うものってあるんだなぁ、と表紙を眺めながら思ってみました。
震災後しばらくはガソリンは1/3を切ったら給油していたんだけど、
最近はもうちょっと減らしちゃうこともあるので、そこはちゃんとしようと思った。
いざって時のガソリンの有無は生死を分けるくらい重要。
ウチはタイミングよく満タン近く入ってたから必要な時に車が使えて助かった。
そうやってちゃんと備えはする。
だけど、もう二度と、遭遇したくはないよね。




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「楠木正成 上巻」北方謙三(中公文庫)




北方フレーム(命名・私)ってあるよなーと思う。
国が潤い、人が生活をしていくために必要な物は何なのか。
戦うためにどんな準備をすればいいのか。
どんな想いをその胸の内に秘めているのか。
こういうテンプレがぶれないから、どの国どの時代の作品を読んでいても、
ああ、北方だわ~~、というホーム感がある。
鎌倉末期から南北朝へ時代が動く。
自らの在り様を見据え、どうすれば生き延びることができるのかを考察する悪党たち。
その在り様がたまらなくカッコいい。
熟考を重ね、市井に混じり、時代を読み続けた楠木正成の決意が明確になったところで次巻へ。

北方中国史は予備知識ゼロでものめり込めるけど、
本書は日本史に関する予備知識があった方が断然入り込める。
この本、積みっぱなしのまま何年も放置しちゃったけど、
『逆説の日本史』を鎌倉時代まで読み進めたらどうしても読みたくなって手に取りました。
うん。
言葉は関係性や背景が理解できるようになっていたので、そのタイミングで正解。
この勢いで『悪党の裔』と『道誉なり』も読みたくなる。
そして、公家が顕家にやらかしてくれたことを反芻して憤り……私、どんだけ顕家が好きなんだろう(笑)

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「逆説の日本史5 中世動乱編」井沢元彦(小学館文庫):



鎌倉幕府の成立から滅亡まで。
何故源氏と平家は戦うことになったのか。
それは「源平の争乱ではなく独立戦争である」とする論拠を
展開していく著者の考察がとても興味深いし、頷いてしまう。
戦略に重きを置いた頼朝と、
戦術に長けた軍事の天才の義経。
共闘からの離反。
東北人だから義経贔屓になるのは致し方ない。
それを差し引いても頼朝にイラッとしながら読み続けたけど、
最終的には彼の在り様に納得してしまった。
時代の先読みができた北条氏。
そして、承久の乱を経ても朝幕が併存してきた要因は、
日本人であるが故に理解できてしまう。

情報量が膨大過ぎて、知識を定着させるためにすぐさま再読したくなる。
著者曰く・義経は日本史上初のアイドル。
私曰く・義経イメージは滝沢秀明。
著者曰く・頼朝と秀吉は「バカツキ男」(ツキがある男)。
友だち曰く・頼朝と秀吉は大っ嫌いな歴史上の人物。
友だちが二人の名前を出した直後に読んでいる箇所に二人の名前が出てきて、
更に別な友だちが修善寺温泉の話をした直後に読んでいる箇所に修善寺が出てきた不思議。
引きあうものってあるんですね~。
■行った場所:鶴岡八幡宮/中尊寺
■行きたい場所:屋島寺(香川)
■読みたい本:『義経』司馬遼太郎

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「親不孝通りディテクティブ」北森鴻 (講談社文庫)



まさか読後にこんなにやるせない気分になるとは思わなかったわ。
中洲の屋台を起点とした6編の短編連作。
本職は屋台のバーの経営者・テッキと結婚相談所の調査員・キュータが
事件に係り、その事件に纏わる人と係り、
最終的には自らの人生が大きく変わってしまう物語。
や、一方的に悪意を向けてきた過去と一本につながった必然……
と言ってしまうのはやっぱりやるせないし理不尽。
悪徳刑事もいい味出してたよ。
人間の弱さ、ずるさ、やさしさ。
人生のままならなさ。
コミカルな展開の中からじわっと滲んでくる。
「帰りたい」の言葉に抉られて読了。
うん。みんな待ってる。
でもキミはそこから動けないんだろうなぁ。



「これメニューね」とカクテルブックを渡されたバーが印象的。
「ここに載ってるのは何でも作れるから」とにこやかに笑う店主。
出てきたお酒は予想外にちゃんとしてて(ごめん・笑)美味しかった。
或は。
「XYZ」というオーダーに対して「すみません。作り方がわかりません」と
頭を下げたバイトの子。
このお店も好印象。
あー、バーに行きたくなったわ。




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「風の中の女」北方謙三 (集英社文庫)



作者の作り出した世界の中で、間違いなく彼らは生きている。
あれから二年半。
過ごした時間の中で成長した彼ら、相変わらずな彼ら、
そして何かを失ってしまった彼に出会った。
ここから先の時間を彼女と共にしていく男にも。
カッコイイじゃないか、野崎。
小さくても一国一城の主となった美有。
順調に仕事を手掛けていく中で、降りかかる不穏な火の粉。
戦うために立ち向かう彼女の姿は前作同様カッコイイ。
と同時に彼女が戦わなければならない理不尽が許し難い。
だけど、彼女は理不尽を誰かのせいにしない。
男たちも然り。
だから心が震える。


前作に輪をかけて面白かった。
そして、リンク作の面白みを存分に味わった。
もう少し先の彼らを知っているから。
だからこそ、また野崎シリーズを読みたくなる罠(笑)
やっぱり北方好きだわ~。





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