きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2018.07.07 「三国志 5 ~八魁の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
- 2018.07.01 「ハンサムは嫌い」榎田尤利(SHY NOVELS)
- 2018.06.28 「もしも俺たちが天使なら」伊岡瞬 (幻冬舎文庫)
- 2018.06.26 「調律師」熊谷達也(文春文庫)
- 2018.06.20 「機龍警察 自爆条項〔完全版〕」月村了衛 (ハヤカワ・ミステリワールド)
- 2018.06.20 「サイメシスの迷宮 逃亡の代償」アイダサキ (講談社タイガ)
- 2018.06.11 「なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日」門田隆将(新潮文庫)
- 2018.06.05 「三国志 4 列肆の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
- 2018.05.28 「凶犬の眼」柚月裕子(角川書店)
- 2018.05.19 「三国志 3 玄戈の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
「三国志 5 ~八魁の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
帰趨の決していない乱世に生きる男たち。
戦いの最中にありながら、きっちりと描かれる人間模様に魅せられる。
妻を得、子を成し、時に友と語らい、或は己の未熟に嘆く。
乱世に生まれた男が描く夢。
即ち、天下。
そこに至る道は数多あれども、手にすることができる者はただ一人。
数年後を見据えての、駆け引き。
自分に在るものと欠けているもの。
自覚しているからこその強さが確かにある。
曹操が計略を巡らせなかったら、劉備と彼の人との出逢いは果たしてあったのか?
ゾワっとするところで次巻へ。
本当の始まりはここから……って、言い過ぎ?(笑)
失敗を人のせいにはしない彼らの潔さがとても好き。
北方三国志における張飛の在り方は、本当にかっこいいと思う。←イチオシは違う人だけど。
ここで初めて見せた孫権の無謀さ。
無事だったから言えることだけど、周瑜と同じく、好ましいものだと思う。
周瑜と孔明。
こうして名前を並べるとこどうしても私設が読みたくて仕方なくなる。
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「もしも俺たちが天使なら」伊岡瞬 (幻冬舎文庫)
スマートな詐欺師、探偵稼業の元刑事、腕っ節の強いヒモ男。
「神様のいたずら」によって引き合わされた三人が織り成す三重奏。
バラバラに奏でられていた音が
少しずつまとまり、反発して不協和音を奏で、一つの目的の為にまとまっていく。
水面下で進行する不穏な事態を阻止しようと大きな絵図を描き、
綺麗にまとめあげたコンダクターの手腕はお見事。
それぞれ過去に事情を抱えた三人が
苦境に陥りかけた人たちのために(一部自分のメンツのために・笑)
現状をどうにかしようと奔走する姿に前のめりになり、
何かを乗り越えたであろう彼らの姿に清々しく読了。
スワンボートを漕いでいるイケメン二人を想像して思わず笑顔。
映画「俺たちは天使じゃない」は楽しく聴済み……
なんだけど、ハンフリー・ボガート版だったのか、ロバート・デ・ニーロ版だったのか
イマイチはっきりしないポンコツな記憶。
「調律師」熊谷達也(文春文庫)
亡くなった妻・絵梨子を想い続ける鳴瀬に対して
「私をお姉ちゃんだと思って」と言った
由梨子の言葉に「何言ってるんだろう?この人」と漲った反発。
姉に対しても鳴瀬に対しても、そして自分に対しても失礼だ。
イラッとしながら読み続けたわけですが。
心の枷を解くのは、その枷の原因となった当人。
鳴瀬の立ち直りの様を描いた描写は見事だった。
鍵盤から立ち昇る香りから想起させられる弾む音・濁る音・嬉しい音等々。
脳内で溢れる音の世界に浸るのは心地よかった。
章ごとに綴られる、ピアノの音と鳴瀬と弾き手の関係がとてもやさしい作品だった。
ノンフィクションやドキュメントとしての震災関連本は
積極的に読んでいきたい。
だけど、物語世界に差し挟まれると、楽しく読んでいる作中から
グラグラ揺れた現実世界に引き戻されるから個人的にはまだ触れたくない。
トラウマっているわけではないけど、そんな気分になるんだなぁ、と改めて思った。
でも「書く」というスキルや感性を持っている作家さんには
是非描いていってもらいたい。というのも本音。
「機龍警察 自爆条項〔完全版〕」月村了衛 (ハヤカワ・ミステリワールド)
近頃の梅雨空と同じどんよりとした鈍色に覆われた、
ライザの過去と現在の虚無と共に進行する物語。
自分で選んだテロリストとしての生き方。
そこからの逸脱。
選びはしたが、望んだ道ではない。
過去の呪わしい出来事を現在を生きる者が贖わなければいけない
理不尽がやるせない。
暗鬱とした想いに呑み込まれたまま迎えた最終章。
世界が一気に震撼する。
色のない世界を染めたのは、
あまりにも鮮烈な殺戮と破壊。
ここで生きる「ジャム」のジンクス。
度重なる不運はこの日の為。
プロットのうまさに震えが走る。
そして、彼らの負った責務の重さに。
一度読み始めたら、頁を捲る手が止まらなくなる作品。
情報操作による事件の誘導。
リアルにどこかで起こっていそうで薄ら寒い。
「サイメシスの迷宮 逃亡の代償」アイダサキ (講談社タイガ)
鳥肌が立つような得体のしれなさと粘ついた悪意が、
心の底から気味が悪い。
一巻を読み終わった時よりも薄気味悪さがグレードアップしているのは、
ヤツの影がより近く、より濃くなったせい。
羽吹が再び悪意に絡め取られることがありませんように。
と、願いたいところだけど、そうはいかないんだろうなぁ。
今作で起こった事件は、本当にやりきれない。
被害者や周囲がより深く傷ついたり後悔したりする環境(社会?)は、
どうにかしていかないといけない問題なんだと思う。
頑なだった羽吹が神尾の意見に耳をかたむけ始めたのは良い兆候。
この先に待ち受けるであろう事件に立ち向かうためにも、
信頼できるバディの存在は絶対に必要。
「もしも気づかないうちに、偽物の記憶が紛れ込んでいたら?」
これ、羽吹じゃなくてもぞっとする。
錯覚することは誰だってあるだろう。
間違えて覚えていることもある。
だけど、意図的に偽の記憶を刷り込まれたら?
怖いわ~
「なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日」門田隆将(新潮文庫)
私には何も言う権利はないなぁ、と。
本書を読みながら思うところは色々色々色々あったけれども。
公の場で語れるような言葉は何一つ持ち得なかった。
ただ、彼らが絶望の中で闘い抜いた九年という長い歳月を知ること、そして考えること。
この本を手にした者の責務として、それは心に刻まないといけないと思った。
支えあって、人は強くなれる。
立ち上がることができる。
一人では太刀打ちできない理不尽に、立ち向かうことができる。
その手で人を殺めることは絶対に許されないこと。
そして、その人間を裁く側の人間が、真実を捻じ曲げようとしてはいけない。
読後にジワジワ込み上げてくる想いを吐き出したくてたまらない。
でも、毒にしかならないから飲み下す。
かわりに溢れる涙。
泣きたくなんてないのに。
「三国志 4 列肆の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
時代が動きつつある。
だが、まだ大きな流れには至らない。
誰にでも手が届き得るものであり、蜃気楼に等しいものでもある。
それが天下。
それぞれの戦。
それぞれの駆け引き。
その在り様が魅力的な男たち。
戦の采配や情勢の読み方、そして自らの在り方。
それらをみていれば、戦場で勝つべきものは勝ち、
負けるべきものは負けることに合点がいく。
そして、将来がとても楽しみだった輝ける星が、
戦場に立つ前に夭逝してしまったことが残念でならない。
三国志でも「志」が語られていたことはすっかり記憶から抜け落ちていて、
おぉ!となりました。
「しっかりしろ。あとわずかでいい。しっかりしていろ」
あの状況でのこの言い回し、北方だなぁ、と思う。
わかっていても、胸に響く。
「会いたかった」の言葉に、何故かロイエンタールの死の場面が頭を過ったわ。
「遅いじゃないか、ミッターマイヤー」うっっ、泣ける……
「凶犬の眼」柚月裕子(角川書店)
読了後、嘘でしょ?と叫び、
ぶわっと胸を侵食したやるせなさ。
暴力に美談はない、
ということを、思い知らされた瞬間。
だから、警察がいる。法律がある。
決められたルールを逸脱することは許されない。
だけど。
だーけーどー!
と、ジタバタしながら叫ぶほど、肩入れしてしまった魅力的な男たちだった。
「正義ではなく仁義」
この言葉には納得。
前作からの日岡の成長ぶりが頼もしい。
そして、ちょっとだけ痛々しい。
でも、彼自身、その在り方に後悔はないんだろうな。
同じく国光も。
プロローグの位置づけが相変わらず秀逸。
おもしろかった!
続編『暴虎の牙』。タイトルで既にそそられる。
手に取る日が楽しみ。
映画を観た後だったので、脳内映像は役柄の彼らでした。
「三国志 3 玄戈の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
戦いを回避する策はいくつかあった筈。
だが、彼らはそれを選択しない。
天下を獲るものはただ一人。
自らの力量を天に計り、
この男とはいずれ戦場で相まみえる。
そう確信する相手と言葉を交わす心境は如何ほどのものなのか。
稀代の英雄になれたはずの男が散った。
いや、彼は間違いなく英雄だった。
立ちはだかった男の影を、
この先を生きる男たちは永遠に踏み越えることはできないのだから。
曹操、劉備、呂布。ついでに袁紹。
彼らの戦とは別のところで繰り広げられた、孫策と周瑜の男の夢を賭けた一世一代の戦。
あの作戦は若くないと無理!
もしも馬が語れるのなら?
馬鹿げた問いかけではあるものの、赤兎の想いを聞いてみたい。
叶うなら、百里風の想いも。
北方の描く馬は、意思を持って彼らの主と対話している。
海辺での赤兎の行為には涙しかなかった。
そして、劉備に欠けているもの。わかっているからじれったくなる。
早く~~!