きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2017.09.23 「ガラスの獅子」北方謙三(光文社文庫)
- 2017.09.20 「遊戯」藤原伊織(講談社文庫)
- 2017.09.18 「機龍警察 狼眼殺手」月村了衛 (ハヤカワ・ミステリワールド)
- 2017.09.17 「楊令伝15 ~天穹の章~」北方謙三 (集英社文庫)
- 2017.09.06 「楊令伝14 ~星歳の章~」北方謙三(講談社文庫)
- 2017.08.29 「リバース」湊かなえ(講談社文庫)
- 2017.08.27 「楊令伝13 青冥の章」北方謙三(集英社文庫)
- 2017.08.18 「楊令伝12 九天の章」北方謙三(集英社文庫)
- 2017.08.05 「もしも、エリザベス女王のお茶会に招待されたら?」
- 2017.08.04 「明日の静かなる時」北方謙三(光文社文庫)
「ガラスの獅子」北方謙三(光文社文庫)
獅子とは、雄々しく誇り高いもの。
ガラスとは、砕け散るもの。
タイトルの意味を悟った時、覚悟が決まった。
彼はとっくに腹を括ってそこにいるのだということがわかったから。
関島と林。
二人の策士に巻き込まれた形になった野崎だけれども、
結局は自らの意思で首を突っ込んでいく。
事態は次第にキナ臭くなり、
探偵なのか傭兵なのかもはやわからない働きっぷりになっていくわけだけど、
だからこその野崎。
ガラスの獅子が貫き通したプライド。
孤高の獅子が零した本音は、何よりの手向けになるだろう。
そして、満身創痍の獅子は眠る。
明日また、立ち上がるために。
美雨と野崎のちょっとほのぼのしい感じの会話がやっぱり好き。
シリーズ三冊、読友さんからのプレゼント本。
ありがとうございます!
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「遊戯」藤原伊織(講談社文庫)
5編の短編連作は未完に終わる。
もっと彼の織り成す世界に浸っていたいという想いが込み上げる。
だが、彼はもう、どこにもいない。
だから、この物語は終わらない。
彼らの朝は永遠に繰り返される。
陽の光が射しこむ穏やかな朝で良かったと。
そう、思う。
拳銃の存在感が半端ないんだけど、意味するところを考えたところでそれこそ意味がない。
未完の物語の後に収められた短編「オルゴール」は
登場人物たちの悲哀の色を帯びた人生を描いた物語。
燃えるような赤い夕陽を鮮明に脳裏に思い描きながらの終幕。
その余韻は、夕陽の残光のように胸にチラつくのだ。
この、読後にジワジワと波紋のように広がる余韻は藤原伊織ならでは。
未完の『遊戯』とい遺作の『オルゴール』。
これを読んじゃったら、彼の作品は全部読み切ることになっちゃうのよね~、
と、なかなか手を出せなかった作品ではありますが。
今が読むタイミングだったようです。
始まりは『テロリストのパラソル』から。
出逢えて良かった作家さんです。
「機龍警察 狼眼殺手」月村了衛 (ハヤカワ・ミステリワールド)
派手さはない。
だが、果てしなく重い。
一字一句読み逃すまいと、相当の緊張を強いられながら最後まで項を捲った。
スルリとすり抜ける影。
歯ぎしりしたくなる想いを呑み込んだ直後に思いもよらないところから示された正義の言葉に
涙が滲んだ。
まだ大丈夫、と。
突入班の彼等は多くを語らない。
だが、巨大な陰謀を暴くための捜査をする過程において、
内部での彼らに対する理解と結束が深まった姿に安堵する。
語らぬ彼らのその在り様から学ぶところは多く在るはずだ。
「警察官だ」
その言葉に懸ける特捜部の面々の想い。
暴いて欲しい。
厚顔無恥な輩の罪を。
「本当の悲劇は、ほとんどの国民がそのことに無自覚であるという事実だ」
この言葉を心に刻む。
私には関係ない。
今が平穏ならそれでいい。
それじゃダメなんだよね。
何もできないにしろ、知ろうとすらしないことには何も変わらない。始まらない。
このシリーズは力いっぱいおススメしたい。
読む本に迷ったら『機龍警察』を。(笑)
「楊令伝15 ~天穹の章~」北方謙三 (集英社文庫)
斃れる筈がないと思っていた漢たちが散って行った。
そして、夢は、死んだ。
死んでいった。
いや、そうじゃない。
「死んだ」という言葉は正しくない。
「殺された」のだ。
途中から込み上げるのは、やるせなさと憤り。
最後は怒りに打ち震えながら読了。
卑怯者の国に。
裏切った者に。
でも、理不尽なのが人の世であり、戦場でもある。
潔さだけでは乗り切れない局面がある。
だけど、楊令は私みたいに憤ってはいないと思う。
多分、笑っていると思うんだ。
こんな気持ちで『楊令伝』は終わらない。終れない。
すべてを見届けるためには『岳飛伝』へ飛び込まねばなるまい。
どうしよう……全巻読み終わったのに、ちっともすっきりしない。
というよりも、ちっとも終わった気がしない。
これは、すぐさま『岳飛伝』へ行けってことですか!?
でも行かない。←行けない。
来年のお楽しみなのです。
鉄棒を日本刀に持ちかえた史進。
強さを探求する彼を越える若者は、そう簡単には現れないだろう。
「楊令伝14 ~星歳の章~」北方謙三(講談社文庫)
決戦を前に一枚岩になった梁山泊。
ここにきて「替天行道」を諳んじた楊令にぐっときた。
孤高の存在だった頭領が垣間見せた惑いと揺らぎ。
並んで駆けるとのできる同志が身近にいることに気付けて良かった。
楊令と秦容を指して「失敗」と評した王進の気持ちが痛い。
彼らの行く道の険しさが見えすぎる程、見えていたんだろうなぁ。
だけど、それも彼らの宿命。
逃げずに真っ向から受け止めて凛と立つ彼らが眩しい。
そして、見知った顔がいなくなることが寂しい。
「国を作らせろ」
そう言い続けた北方が見事に描こうとしている国がここにある。
次巻で完結。
心して手に取ります。
決して同格だと思っているわけではないけれども。
足元にも及ばないとも思っているんだけど。(贔屓目入ってるから許してね)
私にとっての至上の男、ロイエンタールを彷彿とさせられた李英。
格別な思い入れがあったキャラってわけじゃないんだけどね。
とてもやるせなかった。
戴宗には心の底からお疲れ様、と。
読み続けてきた『楊令伝』も残り一冊。
読む前からドキドキなのです。
「リバース」湊かなえ(講談社文庫)
進行する物語の一幕一幕を取り出せば、理解も共感もできる。
自分以外の人間を100%理解する事なんて不可能だし、
語る人間によって浮かび上がる印象が変わるのは当たり前。
大学時代の適度な距離感を持った人間関係。
心に秘めた劣等感と嫉妬心。
良かれと思ってやったことが、仇になってしまう事実。
流れとしてはスムーズ。
だけど、一つの作品として俯瞰すると、冷めた感じで眺めている自分がいて、
どうにものめり込めない。
結末に向かうためのプロットありきの物語だからかなぁ、と、
後書きを読んで自分なりに納得してみました。
というわけで、特に驚愕することもなくあっさり読了。
楽しみにしていただけに読後の残念感半端ない。
なんでだろう?
国の未来を思い描いて闘ったり、理不尽な暴力振るっちゃったりする
人たちの話ばっかり読んでいたから?←多分関係ない。
「書きたいから書いた」というより「技巧(プロット?)に寄りすぎた」感じがするからかなぁ。
「楊令伝13 青冥の章」北方謙三(集英社文庫)
自らの力で天下を取りに行く気概のない者が、天下を語るな、と。
ふとした瞬間に言いたくなる。
夢は共に見るものではあっても、押し付けるものではない。
一枚岩じゃないから、付け入られる隙が出てきてしまう。
とは言え。
時間は移ろうもの。
模索しながら進んでいくしかないのだ。
そんな中での漢たちの腹を割った話し合い。
呼延凌が宣賛に言い放った言葉がいい。
楊令と岳飛は同じ飯を食らうも、戦場で見えることを確信して場を離れる。
護国の剣を手にした男の最期の戦い。
「ひとりで立て。それが、男だ」
忘れられない言葉になった。
今回のことで侯真の気持ちの在り様に柔軟性が備われば、
より強い男へと成長できるだろう。
花飛燐と秦容のちょっと微笑ましいやりとりがとても好き。
王貴も顧大嫂に叩きなおされてしゃんとするのかな?
子どもたちの成長が頼もしい半面、
かつての同志の元へ旅立って逝く者がいる。
李英はどう動くのかな?
チラリと脳裏を過った彼のようであってほしいと思うのは……期待しすぎかな?
「楊令伝12 九天の章」北方謙三(集英社文庫)
今、自分が二本の脚で立つ現を夢となぞらえる彼の言葉が、
なんだか淋しい。
彼が願ったものは、今在る現の継続。
憂慮を断つために、彼は夢に想いを託して逝ってしまった。
北でも南でも燻る火種。そして暗躍。
真の安寧は遠い。
かねてからの同志が一人、また一人と旅立っていく。
この戦乱の世を全力で生ききったのだと、自らに胸を張って。
抱えきれないほどの想いを託され、
その想いに過分に応えつづける器の大きさと力量を備えていたことが、
楊令にとってどんな意味を持っているのか。
それを決めるのは、もう少し後の時代を生きる者たちなのだろう。
食事の作り方、トイレ事情、そういったところまで語られるから、
彼らがより身近に感じられてならない。
物語は終盤。
読み終えることが淋しいような気持ちを抱きつつ、
彼らの物語を見届けます。
「もしも、エリザベス女王のお茶会に招待されたら?」
タイトルに惹かれて手に取り、表紙の可愛さに目を奪われ、
中味の優雅で美味しそうな写真の数々にお持ち帰り。
さながら、英国のサロンに迷い込んだかのような気持を味わえます。
マナーに関しては、知っていること、知らなかったこと、知っているけど実践できていないこと。
各種様々。
最近はお友達をお迎えしても「手間なし簡単!」に偏りがちだったことを、
心の底から反省しました。
次回、頑張るね。
気を抜くと姿勢がダラッとしがちなのも反省。
うん。これも頑張る。
……と、各所で反省しつつも、数々の素敵な写真に目の保養な一冊でした。
アフタヌーンティしに行ってこないと☆
応募券が入っている光GENJIのCDを買っているのに、
「当選者には好きなメンバーから電話がかかってくる」企画に応募しなかった友だち。
「せっかくなんだから申し込んだら?」と言った周囲に対して、彼女曰く。
「何言ってンの!応募できるわけないじゃん。樹生から電話かかってきたら、
挙動不審になって変な対応しかできなくなっちゃう!そんな自分見せられない!」
誰もがダメもとで、と思っていた中、彼女一人が当たったことを想定して行動していたわけで……
目から鱗で感心した20年くらい前(笑)
このタイトルからそんなことを思い出しました。
「明日の静かなる時」北方謙三(光文社文庫)
黙々と身体を鍛え続ける吉野。
60を超えた身で見据えるのは男の矜持。
一矢報いたい男がいる。
どんなハードボイルドな展開かと思ったら……
還暦を越えたオジサマ方の傍迷惑な大ゲンカ。
巻き添え喰らった多田の腹の据え方が好き。
奥様への遺言が予想外すぎてちょっとよろめいてみた。(死んでません)
どんな状況でも野崎のスタンスは変わらず、
自分の身体を鍛え上げることに対してストイック……というよりもM?。(違います)
「安静とは医者が言うことで、探偵が言うことではなかった」
渋い。とても渋い。
この先、関島がどう係ってくるのか。
わくわくしながら次巻へ。
真理子は吉野に好意を持っていそうだし、だったら
養女が愛人でも血がつながってないんだから別にそこまで大きな問題ないんじゃない?
と、思ったわけですが。
読み進めていって、あ、問題アリだ、と思った吉野の倫理観。都合良すぎ。
好意を持っていそう、というよりも、持っていた、なんだね。
吉野の行動に共感できなかった分だけ、物語とちょっと隙間ができてしまった気がする。
そしてつくづく思った。
北方の料理描写は梁山泊につながる。(笑)