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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「猛き箱舟 下巻」船戸与一(集英社文庫)



裏切りと復讐の連鎖。そして、殺戮。
修羅の只中に突き落とされた一人の男が
冷酷な戦士に成り変っていく様にゾクゾクする。
一度狂いだした歯車は、どこまでも噛み合わないまま軋んだ悲鳴をあげつづける。
男を変貌させたのは周囲の男たち自身。
己に刃を向ける獣を育てたのは自分達だという自覚はどこまであったのか?
優位な立場から追われる立場へと変貌を遂げた男の転落は、
家族のことに関しては、狭量になりすぎたせい。
くつろぎややすらぎを求める資格のない男が、それに甘んじようとしたせい。
血と硝煙の匂いのたち込める戦場こそが、彼の生きるべき場所だった。
雪山で男は、何を思っていたのだろう?

そしてやっぱり言いたい。
おじいちゃーーん!と。
ラストがあそこで終わりって言うのがものすごく納得がいかない。
これは、誰の物語だ?
誰が夢で見た箱舟だ?
面白かっただけに、そこだけが残念。
とはいえ、さすがの船戸与一。面白かった。





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「猛き箱舟 上巻」船戸与一(集英社文庫)



望んで飛び込んだ、血と暴力の世界。
その男には思想も矜持も守るべき者もなく、
男をその場所に駆り立てたものは、享楽的な野心だった。
革命のために命がけで戦った人たちには意味不明すぎただろうね。
灼熱の砂漠での作戦行動。
そこで受けた手酷い裏切り。
彼が裏切った相手をただ恨み、逆恨み的な復讐心に燃え滾ったのなら、
ちょっと興ざめだったかもしれない。
頼まれもしないのに危険に足を踏み入れたのは彼自身の意思だから。
だが、自らの行動の結果と、辿るべき運命を受け入れた上での
「血の匂いのぷんぷんする大きな貸し」
この台詞はぐっとくる。
次巻で男がどう化けるのか。気になる!


「何年かして僕が死んだら、おじさんを僕が天国から見守っててやるよ」
逃れられない運命を受け入れた子供の言葉に泣きたくなった。
だからこそ、シャリフの叫びが重く刺さる。
「どんなことがあったって生きなきゃなんねぇ!」
その通りだよね。



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「去年の冬、きみと別れ」中村文則(幻冬舎文庫)



「去年の冬、きみと別れ」
タイトルの言葉が作中で出てきた瞬間、走った鳥肌。
あくまでも主観ですが、私の中に巡った単語は「逆転」。
深沼にはまり込む様に一気に読み切って、
誰ひとりの狂気にも寄り添えなかった自分に安堵する。
彼らの愛情や執着はあまりにも一方的で、あまりにも押しつけがましく、
あまりにも自分本位なんだけど、どこか一途。
そして彼らの憎悪はある意味正しくて、だけど激しく間違っている。
どこに進むかを選択できる側はいいだろうけれども、
巻き込まれる側に選択肢がないことに感じる引っ掛かり。
ラストの男の言葉に「気取ってんじゃないわよ」と、
小さく胸の内で呟いてみたところで、その引っ掛かりは飲み下せそうにもない。

個人的な事情により、本読んでる場合じゃないのに!
最初の一ページ目をチラッと見たら、そのままつかまってしまった。
わーー、明日後悔……しないな。これも私の選択(笑)




内容(「BOOK」データベースより)

ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は二人の女性を殺した罪で死刑判決を受けていた。だが、動機は不可解。事件の関係者も全員どこか歪んでいる。この異様さは何なのか?それは本当に殺人だったのか?「僕」が真相に辿り着けないのは必然だった。なぜなら、この事件は実は―。話題騒然のベストセラー、遂に文庫化!

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「王国」中村文則(河出文庫)



神を気取っていた男が人間に成り下がった様を見た気がした『王国』。
踏み越えたかったのは、本当におまえだったのか?
歯噛みするしかなかった理不尽はどこにいった?
とは言え、木崎に絶対的な悪であってほしかったわけではなく、
絶対悪のまま、運命に翻弄された者達の手による鉄槌が下ってほしかった。
それこそが、抗いの証。決められた運命に対する反逆。
そうはならないのが、世の中……なのかな。
つまりはやっぱり理不尽。
月は最後まで傍観者であってほしかった。
蒼く怜悧に高みから地上を見下ろして、
決して人間の事象には介入しないままでいてほしかった。
描写が美しかった故に、孤高の存在であってほしかった。

とりあえず、もう一度『掏摸』を読みたくなりました。(笑)
『掏摸』と同じものとして捉えたら、多分ダメなんだね。
そっちはそっち、こっちはこっち。
著者の言う通り、独立した物語。
わー、悔しい!


内容(「BOOK」データベースより)

組織によって選ばれた「社会的要人」の弱みを人工的に作ること、それがユリカの仕事だった。ある日、彼女は見知らぬ男から忠告を受ける。「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」男の名は木崎。不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から語りかける男の声―圧倒的に美しく輝く「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。世界中で翻訳&絶賛されたベストセラー『掏摸』の兄妹篇が待望の文庫化!

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「掏摸」中村文則(河出



立ちはだかるのは、「木崎」という、圧倒的な理不尽。
抗う隙間がないことに苛立ちとやるせなさと諦めとを噛みしめながら、
暗雲の中に呑まれようとした瞬間に生じた誤差。
浮草のように漂っていた彼が示した、この世界への執着。
その先を想像することを許されてはいるけれども。
私は何も考えまい。
姉妹編、『王国』を読むまでは。
この世界観、この描写。
ジワジワと押し迫ってくる感じがたまらない。
一気に読み切って、溜息。
自らの手で切り開くことができるのが、運命なのだと。
神を気取った男に、どうしたって抗いたい。

読友さんのレビューで『王国』につながることを知ったわけですが。
慌てない、慌てない。ちゃんと積んでました。(笑)
彼と子供とのやりとりがとても好きだった。
ちゃんとした服を着て、お菓子を食べて。
まっすぐに育ってほしい。

内容(「BOOK」データベースより)

東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎―かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは…。大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラーが文庫化。

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「楊令伝 6  徂征の章」北方謙三 (集英社文庫)



嵐の前。
来るべき決戦の時に備え、それぞれに見合った場所で力を蓄え、
或は、増強させていく梁山泊。
編成替えの配置の仕方が興味深い。
決して変わらないと思っていた致死軍の指揮官の交代に、
寂寞感がひとしおだった。
だけど、彼なら間違いなく新しい致死軍を作り上げてくれると。
確信できる期待感が嬉しい。
梁山泊の豪傑達を育ててきた子午山は、
殺戮に倦んだ童貫の心をすら晴らす。
王進の存在は誰にとっても平等だ。
幻王軍を解散し、純然たる梁山泊の頭領として一皮むけた楊令。
いよいよ梁山泊に合流する呉用。
静寂な時の終わりは近い。
いざ、決戦へ。

今を生きる者達がかつて散って行った者達を語る言葉が優しく沁みる。
『水滸伝』があってこその『楊令伝』。
実感できることが嬉しい。
初読の時に聞煥章に腹を立ててキリキリしすぎたせいか、
今回はその辺りは感情的にならずに読了。
北方の「さらば」の台詞の使い方は本当に絶妙すぎてぐっとくる。

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「楊令伝 5 猩紅の章」北方謙三 (集英社文庫)



一つの大きな山場を迎えた巻。
全ての責は己にある、と言い切れる
童貫の器の大きさを改めて突きつけられる。
冷静であり、公平であり、勇敢である男の言葉は、
何一つ、間違ってはいない。
そんな男が最後の戦いの相手と見定めた敵、
即ち、梁山泊。
その梁山泊のために禁軍の兵力を削ぐと同時に、
呉用の再生でもあった方臘たちの戦い。
たらればを言ったらキリがないけれども。
もしもあのとき、と、違った局面を思い描きたくなる戦いぶりだった。
虎延灼と史進の会話は相変わらず好き。
方臘の軍の最精鋭を迎え入れた梁山泊の戦いぶりがとても気になる。

現代社会で童貫みたいな上司の下で働けたら、
ものすごくやりがいがあるんだろうなぁ、仕事楽しいだろうなぁ、と、
改めて思う。
再読のはずなのに、この巻の内容全部ぶっとんでいたのは、
多分、この巻ラストからの奴のおかげで次巻でカッカしすぎたせいかと(憎)
改めてこの巻を読めて良かった。
色々ありすぎて、感想欄ではとても言い足りない。
唐昇とか花飛麟とか簫珪材とか。
個人的に劉光世がとても気になる。
呉用はみんなに愛されてるなぁ。
「誰もが、自分がいたい場所にいる、というわけにはいかないのだ」
宣賛の言葉が刺さった。



内容(「BOOK」データベースより)

推戴した帝が暗殺され、聞煥章の燕建国の野望は半ばにして潰えた。燕軍は瓦解し、北の戦線は終熄する。梁山泊軍は、楊令の作戦によって河水沿いの地域を一気に制圧した。一方、江南では宋軍による方臘信徒の殺戮が凄惨を極めている。しかし度人の声はなお熄まず、呉用は決死の覚悟で勝利のための秘策を練る。方臘自らが前線に立ち、ついに童貫軍との最後の決戦が始まった。楊令伝、狂瀾の第五巻。

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「ライオンの冬」沢木冬吾(角川文庫)



ハードボイルドに特化しきらないところが、この著者の持ち味なのかな?と。
最後まで読み終えて思ってみる。
ジーンとくる余韻がとても素敵。
山で静かに暮らす老人二人と女子高校生。
そんな彼らを護ろうとした者、奪おうとした者。
どちらにしても、彼らの生活に土足で踏み込んできたことには変わりない。
……と思ったら、日本政府、何やってんの?
身を守る術を知っていた、老兵二人の戦いっぷりが、カッコいいんだけど、哀しい。
老兵の血を引く女子高校生も、半端なくカッコよかった。
「誰かのために」戦った人たちの物語。
ラストシーンの続き、見てみたかった!

虎が山に残った理由が哀しかった。
と同時に、吾郎がいて、そしてあとから結も加わって。
そんな時間を過ごすことができて良かったね、とも思ってみる。
虎と結の会話が、本当に楽しそうだったから。
「生前贈与なんてするもんじゃない」
ちょっと前にリアルにそんな話を聞かされたばっかりで、胸が痛かった。


内容(「BOOK」データベースより)

伊沢吾郎、82歳。かつて日本陸軍の狙撃手としてフィリピン戦線で戦った男は、軍人恩給をもらいながら、孫娘の結と山奥でひっそり暮らしていた。しかし、ひとりの少年の失踪事件をきっかけに、雪山は緊迫感に包まれる。伊沢の動向を監視する謎の男たち。複雑に絡み合う思惑…。囚われた過去を背負いながら、老兵は愛する人を守るため、再び立ち上がった。ベストセラー『償いの椅子』の著者が描く、強く優しい絆の物語。

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「あひるの空 47」日向武史(マガジンコミックス)



積み重ねてきたクズ高メンバーの努力が実り、花開いていく。
ひ弱さの感じられない茂吉。
相手に合わせられる行太。
戦力として機能する鍋島。
ここまで読みつづけてきたからこそ実感できる彼らの成長に、こみあげる思いがある。
だけど、忘れてはいけない。
彼らがそこにいたせいで、バスケを諦めた人間もいることを。
空が頑張ったから、今の彼らがある。
ここであのシーンをぶっ混んできた作者は凄いなーと思う。
だからこそ、百春のプレーに重みが増す。
「ただ、信じてください」
千秋の言葉を胸に、次巻へ。
あ!トビとヤスの名前がない!これも次巻へ?→


「また一からはじめりゃいいじゃん」
そう言えるのは、若さゆえの特権……と、思いかけて、思いとどまる。
どの時点からだってスタートできるはず。
物事の捉え方、向き合い方。
ちょっとやさぐれかけていたので、これは心強いエール。
と、勝手に思うことにする。
緊迫した場面での坂田さんのアップは、ほにゃっと力が抜ける(笑)


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「あなたが消えた夜に」中村文則(毎日新聞社出版)




書物が醸し出す、圧倒的な存在感。
紛れもなく「中村文則」が生み出した作品なのだと、訴えかけてくる。
そこここで鳥肌が立った。
寂しい人たちが。
悪意に絡め取られた人たちが。
愛に迷子になった人たちが。
少しずつ道を踏み外し、後戻りできなくなっていく。
追っていたはずの犯人の意識の中に、気づけば取り込まれ、
その狂気の狭間に透ける哀しみに塗り込められる。
読み終わるまでは緩まなかった涙腺。
反芻しながら感想を打ってたら、何故かホロリと泣けてしまった。
寂しさと絶望の中に在る光。
それが見えるから、彼の作品は胸を打つのだ。

文庫を待とうと思ったけど、待ちきれずに単行本を買って正解。
冒頭部分から鷲掴みにされてしまった。
この本の凄さをなんて表現したらいいんだろう?
分からないからとにかく読んでみて!と、言いたくなる本。
やっぱり中村さんの作品、好きです。



内容(「BOOK」データベースより)

ある町で突如発生した連続通り魔殺人事件。所轄の刑事・中島と捜査一課の女刑事・小橋は“コートの男”を追う。しかし事件は、さらなる悲劇の序章に過ぎなかった。“コートの男”とは何者か。誰が、何のために人を殺すのか。翻弄される男女の運命。神にも愛にも見捨てられた人間を、人は救うことができるのか。人間存在を揺るがす驚愕のミステリー!

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