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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「ホリデー・イン」坂木司(文春文庫)



前2作のシリーズに登場する人々の、それぞれの視点から描かれた6編の物語。
これを読むことによって、シリーズに対する深みがぐっと増す。
はじめてヤマトに対面した時の進の緊張と葛藤。
本編では見えなかったその時の由希子の姿。
ナナの大切な何かが足りていなかった過去。
お気楽なバイトだと思っていた大東の知られざる苦労。
雪夜の抱えた底のない闇。
彼は夜の世界でしか生きられない住人なんだと。
改めて思わされる。
ナナが彼の闇に巻き込まれなくて良かった。
そして、この物語はジャスミンありきなんだなぁ、と改めて思う。
だから彼女にも、幸せになってほしい。

「不幸になるのは簡単だ」
まったくもってその通り。
受け止め方次第でどうにでもなるなら、
「ゆるふわでいいじゃん」という大東に大いに賛成。
「泣いても笑っても同じ人生。だったらずっと笑っていよう」
これは私の人生訓。
別な言い方をすれば泣いたって笑ったて現状は変わらない。
同じところにたどり着くなら笑っていた方がいい。
ずっと笑っていたら、2年生存率の壁をぶっちぎっていました。(笑)




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「ウインター・ホリデー」坂木司(文春文庫)



父親がいて、母親がいて、子どもがいる。
それが家族。
だけど、そのどれかが欠けている家庭だってある。
「ホストだから」と謗られることがあると雪夜は言っていたけれども、
「父親がいないから」という色眼鏡だってある。
でも、進はそれを言わせない子どもなんだろうな、と、思った。
大和と進。進と由希子。
進を真ん中にして、三人で手を繋いで出掛けることのできる日が来るといいね。
親子の物語。
と同時に、拗らせた大人の何人かが
前向きに頑張って人生の一歩を踏み出そうとしている姿にもエールを送りたくなる。
悩みながらも一生懸命な人たちは、輝いている。


雪夜の話が読みたいな、と、切実に思った。
個人的に、激烈に雪夜押し(笑)。
読後は迷わず『ホリデー・イン』をポチッと。
楽しみ!

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「土の中の子供」中村文則(新潮文庫)



空を自由に飛ぶ想像なら何度もした。
でも、こんなにも苦しい跳躍を想像したことはなかった。
取り返しがつかない瞬間の後悔がとてもリアルに流れ込んできて、押しつぶされそうになる。
世界はキミに、こんなにもやさしくない。
息苦しい世界の中で、耐えて、耐えて、耐え抜いての転換。
踵を返したのはキミの意思。
たぶん、それは間違ってはいない。
ようやく土の中から一歩を踏み出すことができたキミ。
背負わされていたものをすべて地中に埋め、
いま、初めて世界の中へと踏み出していける。
だけど、忘れないで。
キミは決して一人ではなかったということを。

再読。
そして、私が読んだ唯一の芥川賞受賞作。
(大江健三郎の『飼育』は既読みたいだけど、内容覚えていないのでノーカン)
積読中の芥川賞受賞作が森敦の『月山』と平野啓一郎の『日蝕』。
『日蝕』に至っては、10年以上積んでる気がする(笑)。
そして今回調べて私的に意外だったのが花村萬月。
芥川賞受賞しているんですね~。
……と、イロイロあげてみたけど、まずは中村文則のコンプリかな。
残り6作品。
ちなみに、既読の中での中村作品トップ3は『遮光』『あなたが消えた夜に』『掏摸』なのです。

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「アルモニカ・ディアボリカ」皆川博子(ハヤカワ文庫JA)



ああ、どうしてこんなことに?
声にならない悲鳴を呑み込んで、いったん本を閉じてしまった。
だけど、見届けなければならない。
その真相を。
彼の願った通り、彼はその場所を目指した。
見えない糸に手繰り寄せられるように。
あまりにも見事な誘導。
誰も彼もがその場所を目指した。
唯一の誤算は、彼自身がそこにいなかったこと。
それが、どうしようもなく哀しい。
綴られる彼自身の過去。
たくさんの愛情を注がれて育った彼には、決定的なものが欠けていた。
多分それが、悲劇の要因。
だけどそれは、彼自身の咎ではない。
だからこそ、余計にやるせない。
ストイック過ぎた彼が、せめて微笑む日が来ればいいと。
願わずにはいられない読後。

forget-me-not。
この言葉は、今でも私の胸に刺さる。
若くして亡くなった彼の歌声と重なるから。
あまりにもお気楽な未来を想像(妄想?)していただけに
衝撃が大きすぎて大変でした。
でも、読めて良かったと、心から思える作品です。



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「開かせていただき光栄です」皆川博子 (ハヤカワ文庫 JA)



ねぇ、キミは誰?
どうしてそんな姿に?
遺体は何も語らない。
だから生者が事実を検証し、隠された真実を推測する。
18世紀のロンドン。
ヒラヒラと揺らめく彼らの幻惑的な姿に翻弄されながら、
盲目の判事と共に混迷のなかに迷い混んでいく。
めくるめく浮遊感。
示される事実と、少しばかりの沈黙。
そして、嘘。
けれどもすべては真実へと導くため。
折り重なり、絡みあい、縺れあった糸がほどけていく様は圧巻。
人が人を裁くとはどういうことなのか。
真摯に受け止めなければならない。
そして心に残された喪失感。彼らはどこへ?
何故か、エドガーとアランの姿が重なった。


チャーリー(犬)の存在がひたすら可愛かった。
続編は手元にあるけど、彼らのその後に思いを巡らせる時間が少しだけ欲しいかな?
という気持ちにさせられたのよね。
皆川女史の描き出すとても素敵な世界。どっぷり浸らせていただき、光栄です(笑)。

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「34丁目の奇跡」ヴァレンタイン・デイヴィス(あすなろ書房)



あたたかくて優しい気持ちを抱きしめて、
汗だくのトナカイを愛しく思いながら、ちょっとした奇跡に心を躍らせる。
サンタの存在を証明することはできないけれども、
存在しないことも証明できない。
だったら、信じていたい。
少なくとも、わくわくした気持ちや豊かな想像力を育むことができるから。
現実的に生活を見据えることは大事だけど、
だからこそ、心のゆとりというか遊び心はいつでも抱えていたい。
イマジネーションは自由。
どこまでも羽ばたいていける。
幸せな想いは笑顔の源。明日への活力。
メリークリスマス♪


奇しくも『評決のとき』を読んだあとだったので、
アメリカの裁判の様子がイメージしやすかった。
これは映像で見てみたいなぁ。
私もサンタに手紙を書いたことがあります。
手作りケーキも作りました。
朝起きて、空になったお皿を見て、
ちゃんと食べてくれた!と大喜びした無邪気な子供時代。

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「空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― 」(新潮文庫)



吐き出された想いは「言葉」という形を持つことで、
誰かの心に届く。
或は、自らの心を解き放つ。
奈良少年刑務所の受刑者たちが「社会性涵養プログラム」の授業の中で綴った詩集。
彼らがどういう経緯でそこにいるのかは、ここでは論じられることはない。
今、ここにいる彼らによって紡がれた、まっすぐな言葉に耳を傾ける。
胸の内を綴った飾らない言葉がストンと響く。
とりわけ、母親に対する情愛の深さと、悔恨、
そして、愛に渇望したあまりにも寂しい訴えに、抉られる。
なかなか伝えることのない「ありがとう」の言葉を
心の中で母につぶやいて、本を閉じました。

明治41年(1908 年)に竣工した奈良少年刑務所。
今年の3月に閉鎖されたんですね。
改装後、2020年に監獄ホテルとして展開されるとのこと。
建物写真がとても興味深いものだったので、行ってみたいなぁ。





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「愚か者死すべし」原尞 (ハヤカワ文庫 JA)



事の発端は一つの事件……というよりも、成立しなかった仕事の依頼だった。
依頼主を警察署に送り届けて、沢崎のできることは終わるはずだった。
だが、そこで起こった新たな事件が、彼を渦中に巻き込んでいく。
新シリーズになっても、沢崎の在り様は変わらない。
彼はただ、自らの信念に基づいて行動している。
誰にも日和らず、何にも眩まない彼の平静さがとても好ましい。
そして、プロットの緻密さと登場人物の魅力で
最後まで読ませる作者の作風も変わらない。
糸の絡まり具合とその解き方が絶妙。そして読後に残るやるせなさ。
とても充実した読書時間だった。

今作が現状では彼の最後の作品である事実が残念でならない。
ラストの啓子の台詞が今後の彼の著作との決別を暗示していたと思えてしまったことが寂しい。
まだ読みたい。
そんな想いが沸々と滾る。
あとがきに代えての「帰ってきた男」
これがまた、最高だった。
彼が彼の依頼人になったら?想像して大笑いしちゃいました。
シリーズを譲ってくださった読友さんに感謝。
本当にありがとうございます!

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「「がん」では死なない「がん患者」 栄養障害が寿命を縮める」東口高志 (光文社新書)



インパクトのあるタイトルだけど、
著者の言いたいことは、がんに限らず
「いきいきと生きるためには、食べることが大切」
この言葉に尽きる。
日々の口から摂取する食事がいかに大切かということがとてもよくわかる。
そして、病院での栄養管理は確かに充実しているとは言えないなぁ、と、
自分が抗がん剤を投与されていた時のことを振り返って思ってみる。
あの時は若くて体力もあったから、ひたすら食べずに吐き気を乗り切る方法を選択したけど、
それじゃダメ。
とにかく口からちゃんと食事をとること。
それができない場合は、どうすれば食べられるようになるかを指導してもらうこと。
かなり参考になる本でした。


乳がんの手術を受けて退院した後に色々調べてみたら、
乳がんには「こういう食事はよくない」「こういう食事の方がいい」というのが
皆様主張していることも、統計データが示していることも概ね一緒で。
でも、それって病院ではまったく触れられることもなく(学術的に根拠がないから?)
なんで教えてくれないのかな?と思ったことがありました。
とりあえず、日々美味しくお食事をできることの幸せを噛みしめつつ。
最後まで美味しく食べ続けたいと思いつつ。
症例であげられた「奇跡のヒンズースクワット」のおじいちゃんにあやかりたいわ。
そうそう。バランスの良い食事の他に、刺激を受けることも大事だそうです。
読書をしていると色々な刺激がありますよねー。





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「さらば長き眠り」原尞 (ハヤカワ文庫JA)



シリーズ第一期完結に相応しい集大成。
前巻から経過した400日の時間の分だけ、
沢崎の、そして周囲の人たちの歩んだ人生の軌跡がある。
それが垣間見れたことが、彼をより身近に感じられて嬉しい。
再び事務所に戻った戻った沢崎に持ち込まれた依頼。
彼はただ、真実を追求しようとしただけ。
本当のことを知ろうとした彼は、たとえ、それを暴くことによって
傷ついた人がいても、重荷に感じる必要はない。
それは、彼の咎ではないのだから。
だけど、どうしても振り払えない寂寞。
最後まで気を抜くことを許さない面白さ。
そして、添えられた僅か十数頁の短編が相変わらず絶妙だった。


警察、そこちゃんと確認するよね?
と、突っ込みたい部分がひとつだけあったけど、
それが些細な事と思えるくらい、読み応えのある作品でした。
淡々と己の仕事に取り組む沢崎が渋くてかっこいい。
ヤクザの橋爪たちとの関係は、相変わらずどこか愉快。
まぁ、そんなこと言ったらどちらからも嫌な顔されるんだろうけど(笑)
時間は淀みなく流れている。
短編までを読み、改めて、そう思わせてくれた終幕。
たゆたう流れの先で、また会おう。
そんな期待を込めて、頁を閉じる。








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