きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2019.05.31 『破獄』吉村昭(新潮文庫)
- 2019.05.28 「傷だらけのマセラッティ」北方謙三 (光文社文庫)
- 2019.05.25 「心に雹の降りしきる」香納諒一(双葉文庫)
- 2019.05.22 「火焔樹」北方謙三 (徳間文庫)
- 2019.05.11 「逆説の日本史7 中世王権編」井沢元彦(小学館文庫)
- 2019.05.06 「朽ちないサクラ」柚木裕子 (徳間文庫)
- 2019.05.06 「痣」伊岡瞬(徳間文庫)
- 2019.05.05 「サイメシスの迷宮 忘却の咎」アイダサキ (講談社タイガ)
- 2019.04.16 「重力ピエロ」伊坂幸太郎 (新潮文庫)
- 2019.04.13 「代償」伊岡瞬 (角川文庫)
『破獄』吉村昭(新潮文庫)
四度の脱獄を実行した佐久間、大戦下から戦後へと変遷した社会の在り様、そして戦争と刑務所の係わり方。
主に三つの視点から展開していく物語。
脱獄を成し遂げた手法は彼でなければ実行できないものだし、
戦争と刑務所の在り方は突き詰めて考えたことがなかったのでとても興味深かった。
だけど、陰の主役は看守の皆様。
お疲れ様です!と、思わず背筋が伸びてしまった。
時代性もあるんだろうけど、ものすごく大変なお仕事だわ。
全ての人に当てはまるわけじゃのはわかってるけど、
北風と太陽方式が功を奏したことが嬉しい。
人間ってそういうものだと思いたい。
黒部に行った時は『高熱隧道』を。(黒部は他著者だけど『黒部の太陽』も推奨)
大和ミュージアムに行った時は『戦艦武蔵』を。
そして、網走に行こうとしている今は『破獄』を。
事前に読んで予習はバッチリ。
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「傷だらけのマセラッティ」北方謙三 (光文社文庫)
転落。あるいは、暗転。
食い止めることのできなかった負の連鎖。
たとえ、巻き込まれて降りかかった火の粉だったとしても、
その連鎖を止めるつもりがなかったことが大いなる問題だ。
とても楽しく読んでいた前半に反して、
独りよがりに過ぎる後半は作品世界からスーーッと乖離しそうになってしまった。
前半の大村は好きだったんだけどなぁ。
『マセラッティ大迷惑』というタイトルでも遜色がないと思うわ。
箱入りで輝いていたマセラッティを傷だらけにしたのは貴方です。
こっそり整備しに戻った時に置いていく甲斐性があったら見直したかもね。
マシンのセッティング描写に
『頭文字D』『湾岸ミッドナイト』あたりにドハマリしていた頃の興奮再び。
わー、読み返したくなる~~~!
私が乗りたい外車は真っ赤なカマロ。
ドライバーズシートに座ってみて、技術以前に体格的に自分には運転できない車だということを悟ったので、のっけてもらえるだけでいい。
「心に雹の降りしきる」香納諒一(双葉文庫)
「この願いよ、天へと届け」
ああ、彼のその願いを叶えてほしい、と。
涙目になりながら一緒になって願ってしまった。
ロクデナシになりきれない、刑事が一人。
悪ぶっても非道を働いても、弱さと優しさと正義を捨てきれないが故の迷いと揺らぎ。
なんだかんだ、彼は被害者を放ってはおけない。
苛ついて他人を傷つけては、自分も傷ついている。
馬鹿だなぁ、と思いつつも、その在り様を受け入れてしまった。
ダメ人間な刑事は魅力的だし、
筋の通ったヤクザはカッコいいし。
何より失踪事件と殺人事件を巡るハイスピードな展開に呑み込まれる。
面白かった。
初読の作家さん。
こんなにワクワクしながら読める作家さんとの出逢いは久々。
こうなると、当然他の作品も気になるので、
追いかけてみようと思います♪
次に入手する本も決めてみました。楽しみー!
「火焔樹」北方謙三 (徳間文庫)
身体を張って戦うことのできる男には、それなりの素地がある。
ただのエリート商社マンだった男にはあんなふうにナイフもランクルも扱えない。
戦える男だったが故に、満身創痍になり、友のために手にしたナイフ。
友のための熱い想いの他に、
罪悪感に打ちひしがれた過去も彼の行動を後押しした気がする。
山の中で空疎に生きていた彼に火をつけたもの。
それは、彼を取り巻く他人。
人を変えるのは、やはり人だ。
男に引き上げられるように、少年も加速度的に成長していく。
本来であれば知る必要のなかった痛みと強さを糧にした
ちょっと悲しい成長。
それでこそ、北方。
「何でこの表紙?」と読み始めて思うわけだけど、
読み続けていくと、すごいシーンを表紙に持ってきたなぁ、と、しみじみと思ってしまった。
「逆説の日本史7 中世王権編」井沢元彦(小学館文庫)
大混乱の南北朝時代。
戦ってる朝廷がなんだかすごい。←語彙……。
裏切りの横行。
でも、すぐばれる裏切りにびっくり。
簡単に約束事を反故にする人たちの大人げなさが満載で、
僧兵を現代ヤクザに例えたのが上手いと思った。
絶対的権力不在の治世の不安定さは想像に難くない。
そうなるべくして後の戦国時代に突入していったのだと納得。
そして徳川の時代が何故安定していたのかに、改めて納得。
「足利義教」
今まで知らなかった彼の名前は、絶対に忘れられない名前としてインプット。
井沢さんの論旨の展開は相変わらず興味深い。
時代は大混乱でも、混乱することなく読めたのは『北方南北朝』を読んでいたおかげ。
私の南北朝の歴史知識はほぼほぼ北方から授かっています。
徳川生徒会の『日野太平記』と北方の『破軍の星』のおかげで、
そして私が東北人であることも相まって
私の歴史上でもっとも思い入れがある人物は北畠顕家なのでありました。
■行った場所:金閣寺
■行きたい場所:石清水八幡宮
■もう一度行きたい場所:三井寺(予備知識なしに行く場所じゃなかった)興福寺
■再読必須:『武王の門』
「朽ちないサクラ」柚木裕子 (徳間文庫)
限りなく真相に近い推論での終幕。
その内容のあまりの理不尽に
は?それって許されるの?
というやりきれなさと怒りでモヤモヤモヤ……。
犠牲になって良い命なんてない。
罪のない人の命を奪ってまで守らなければならないものって何?
っつか、アンタたち何様?
そもそも「俺、正義。だから何をしてもいい」的な言い分が気に食わない。
その組織が信じられなくとも、自分の中に確固たる核があれば戦える。
そのために必要な力を得て
立ち上がった彼女が何らかの形で彼らに鉄槌を下してくれることを期待しつつ、
シリーズ化を待つ。このままじゃ終わらないよね?→
うわーん。
悔しくて寝れない。いや、寝るけど。
Amazonの評価はキレイに割れてるけど、私はとても面白かった。
後味悪いけどね。
「痣」伊岡瞬(徳間文庫)
平和な分署管内で起きた殺人事件。
犯人が示唆する過去との連鎖。
それらの事件は多くの人の命を奪い、係わる人たちの人生を破壊し、
哀しみを撒き散らした。
そして、事件に係った刑事たちの在り方も変えていく。
次第に鋭さを取り戻していった真壁だけど、
その要因を思えば痛ましさしかない。
真壁と行動を共にした宮下の急成長が唯一の癒し。
コミュ力もスペックも高いから、
揉まれて磨かれて良い刑事になってくれるはず。
殺人の理由に共感できるモノなんて何一つないけど、
彼の言い分の何もかもがクズだった。
事件に救いは欠片もないんだけど、読後の印象がマイナスじゃないのが伊岡さんだな、と。
彼らのその後の文庫化はいつ?
「二週間に刑事を辞職する」というカバーの文言から、
勝手に還暦を迎えた主人公かと思っていたら、全然違ってて、
私より全然若くて、ちょっと戸惑った読み始め。
まぁ、すぐに脳内情報書き換えたけど、思い込み、よろしくないわねー。
ランエボと言えば京一!(@頭文字D)カッコよかった。
愛人になりたい!と意味不明なことを叫んでいた若かりし頃(笑)
「サイメシスの迷宮 忘却の咎」アイダサキ (講談社タイガ)
あっさりとした頁数なのに、かなりヘビーな読み応え。
一人の人間に対して、あれだけの時間と労力を使って
あんな接し方をしてくる犯人の意図と狙いが不明確にもかかわらず、
粘質的なことだけは嫌ってほど伝わってくるので気持ち悪い。
神尾は羽吹に対して口やかましく世話を焼きつつ、
時々子どもっぽい感情を垣間見せるところが可愛い。
事件を通して語られる、それぞれの人間模様。
バックグランドが垣間見える程、やるせない気持ちになる。
幸せに塗れて生きていければいいけど、そうはいかない。
そして、衝撃的なラスト。
咎を負うべきは羽吹ではない。
諦めても、絶望してもダメだよ。
あっちもこっちも疑わしすぎて、どこまでが悪意によって仕組まれたもので
どこからが自然のなりゆきでそうなったのか、
突き詰めて考えていくと人間不信になりそう。
なので、真っ白な気持で続刊を待ちます。
「重力ピエロ」伊坂幸太郎 (新潮文庫)
洒落た会話の繰り返し。
だけど、語られる内容はとてつもなく重い。
忌まわしい事件の後に生まれた春。
父も母も泉水も。
誰もが春のことを家族以外の何物でもないと思っていて、
春自身もそのことは疑っていない。
だけど、春の中にはどうしても拭えない怒りと影がある。
泉水と春の兄弟関係がとても好き。
泉水の示した落としどころが最高。
そして、二人の父の懐の広さがあたたかく沁みる。
絆の深さは血縁ではなく、過ごした時間と愛情の深さによるものだ。
とても素敵な家族像がここにある。
紙一重だけど、夏子さんもナイスサポートだった。
登録1300冊目。
キリの良いことに気付いたので、馴染のある場所がふんだんに出てくる伊坂作品を。
一つ一つの間に時間は空くものの、
小説→映画→小説の順に廻ったおかげか、
今回の再読にあたって映画のイメージが大きすぎたのがちょっと残念。
純粋に伊坂さんの小説世界だけに浸りたかった。
まぁ、それだけ映画の印象も悪くなかったってことなんだけど。
地元名物のカスタード菓子。私も好きー!
「代償」伊岡瞬 (角川文庫)
理解の範疇の外にある悪意に晒された時、
一体どうすればいいのか。
身を守る術、もしくは戦うツールを身に着けておくことって
大事だよなぁ、とは思うけど、じゃあ、何を?となる。
そもそもが謂れのない悪意だから、気づいたときには逃げ場がなくなってしまう。
悪意の連鎖を断ち切るためには
たった一人でも味方がいることって、とてつもなく大事。
一人きりだったらその悪意に呑み込まれ、沈んでしまっただろう。
犯罪を犯すのに年齢って関係ないんだなぁ、と
納得できてしまうところが怖い。
話し合えば理解できる。
諭せばわかってもらえる。
世の中にはそんな相手ばかりではない、と警戒して構えることが自己防衛の一歩?
それはそれで寂しいね。
馳星周の『虚の王』
櫛木李宇の『死刑に至る病』
そして『凶悪―ある死刑囚の告発』
あたりを想起させられる。
「達也」も含めた上で考えると、一番気持ち悪いのはやっぱり「先生」。
絶対に近づいてはいけないのは「栄司」。
「榛村」には気付いたら丸め込まれてる気がする。←ダメじゃんww