きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2018.09.09 「三国志 9~軍市の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
- 2018.09.07 「雪の花」吉村昭 (新潮文庫)
- 2018.09.05 「三国志 8~水府の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
- 2018.09.02 「三国志 7~諸王の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
- 2018.08.29 「死刑にいたる病」櫛木理宇 (ハヤカワ文庫JA)
- 2018.08.05 「浄夜」花村萬月 (双葉文庫)
- 2018.07.31 「金閣寺」三島由紀夫(新潮文庫)
- 2018.07.24 「アンフィニッシュト」古処誠二 (文春文庫)
- 2018.07.20 「UNKNOWN」古処誠二 (講談社ノベルス)
- 2018.07.16 「三国志 6 ~陣車の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
「三国志 9~軍市の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
どこまでも潔く真っ直ぐであったが故に、調略に掬われた星。
「帰還できず」
この言葉に号泣。
逢わせてあげたかった、と思うのは、私の感傷。
ああ、だけど。
一人で逝かせてほしくなかった。
張魯の呪縛からようやく解き放たれた張衛。
いっそ張魯を切ってしまえと何度も思ったけど、遅きに失したということはない。
張衛に対する張魯の言葉に私も切ってしまえという思いは失せた。
上立つ者はそれぞれの立場での苦悩がある。
漸く解放された力。
張衛と馬超は良いコンビだと思う。
雪原に散った血の花。
蜀にいる者たちの胸の内を思うと、心底やるせない。
馬超がスカールとイメージが被るんだよね。
必然的に馬綝とリー・ファ。
好きにならずにいられない。(笑)
基本的のは読了直後に感想打ち込む派だけど、
これ、直後に打ったら恐ろしく感情的な感想になりそうだったので、
ちょっとクールダウンしてみました。
響く本って、再読でも心乱されるんだよね。
わかってても涙出る。
で、わかっててもこんちくしょう!ってなる。
曹操が苛烈さを失ってしまったことがちょっと残念。
とはいえ、私は劉備にも曹操にも孫権にも。
魅力を感じているわけではないのよね。
孫権に至ってはこんちくしょう!って思ってるから。←冷静さ、どこ?
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「雪の花」吉村昭 (新潮文庫)
それはワクチンであり、冷凍という保存方法があり、
空輸や電車という移送手段がある。
だけど、それらが見出され、整備されるまでは、
祈りや眉唾の療法しかなく、保存の効かないそれを、
一か八かで運ぶか、人から人へと植え付けていかなければならなかった。
現在の私たちの生活は、
先人たちの努力や献身によってなりたっているのだと、
改めて噛みしめると共に、切り開くまでの道のりの余りの理不尽さに憤りで震えた。
天然痘予防のために生涯を捧げ、
石をぶつけられても、福井の為に、という思いを最後まで捨てなかった良策。
彼の想いの強さと純真さに敬意を。
保守的で利己的な者たちの妨害や嫌がらせはどの時代でもあるんだな、と、
妙に納得してしまえると同時にイラッとする。
深い積雪の峠越えは鬼気迫るものがあった。
援助なしであそこまでやりきった良作に対して、
藩はすぐにでも支援するべきだったんだよ。
読友さんたちと行った秋田で、
解体新書の挿絵を描いた「小野田直武」を知ったことを思い出し、
なんとなくニヤニヤ。
色々調べていたらさるぼぼが赤い色をしている由来に行き当たり、
おお!となりました。
「三国志 8~水府の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
周瑜の死を惜しんだ曹操の株が私の中で一瞬上がり、
荀彧の死に纏わる思いの吐露で、あ、気のせいだった、と思った8巻。
荀彧に裏切られたと思うのは、都合がいいんじゃないかな。
信じてもらえないような扱いをしてきた結果なのだから。
多くの者が戦いで命を落としていく中、
ひたひたと迫る病と向き合わざるをえなかった周瑜。
緩慢に近づいてくる死。
彼の心にゆらめきつづけた切なさがやるせない。
俺は俺。おまえはおまえ。
出自は関係ないと、いいきれる馬超がカッコいい。
戦を繰り返し、時代は移り変わっていく。
頼もしい軍師の元、いよいよ天下三分へ。
劉備の……というよりも、北方の孫夫人に対する扱いが、ものすごーく嫌だわ。
一方で、張飛と薫香の関係はとても微笑ましい。
張飛の野戦料理。とてもとてもおいしそう。
李逵の料理を思い出す。
そうすると、解珍の秘伝のタレ……と続々出てくる食べたいもの。
読んでるのは『三国志』だけど、やっぱり『水滸伝』好きだわーと、改めて思った。
「三国志 7~諸王の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
赤壁だから、ではなく。
周瑜だから。
この巻はとても思入れ深い。
そして、孔明。
二人の出逢いのシーンは、何度読んでも震える。
側近である生き様を貫いてきた周瑜に、
覇者たる想いを想起させる漣を起こした孔明。
「あなたが私のそばにいれば」
絶対に在り得ない現実に想いを馳せては、泣きそうになる私。
大軍で敗北を喫した曹操。
勢いを増す孫権。
着々と地盤を固めていく劉備。
安息とは程遠い日々の中でも、時折差し挟まれる日常の場面にどこかほっとする。
それぞれの陣営の特徴がはっきりわかって面白い。
そして、彼らは再び戦場へ。
周瑜の病を案じた曹操に、イイヤツじゃん、と呟きたくなったあたり、
私、以前より周瑜の好き度が増している気がする。
次巻、絶対泣く……読みたくないなぁ。読むけど。
馬超の飄々とした雰囲気が好き。
赤兎の子も赤兎。
紛らわしいわ(笑)
「死刑にいたる病」櫛木理宇 (ハヤカワ文庫JA)
依存している自覚があるならまだいい。
影響されているとわかっていれば、自分が見えている。
自分の意志で行動しているつもりが、実は相手の意のままだったとしたら?
迫られた選択の回答ですら、決められたものだったら?
無意識のコントロールが一番怖い。
植え付けられた選民意識の件がぞっとした。
シリアルキラーと対話を重ね、目に見える変化を遂げた彼。
明らかになる真実。塗り込められた嘘。そして、悪意。
絡みつく鎖を断ち切ったことは、今後彼の人生において大きく作用するだろう。
「おれは、おれの話をしてるんです」
キミは大丈夫。
雅也と母親との関係が好転することを願って読了のお借り本。
天性の「人タラシ」な人っているけど、
そこに「悪意」が加わったら手に負えない。
「あなただけが特別」と囁く言葉は自尊心をくすぐり、
囁いた相手には好意を向けるようになる。
騙されたくないわ~、と思うけど、何が嘘で何が本当か。
瞬時に見抜くことは難しい。
「浄夜」花村萬月 (双葉文庫)
なんだろう、この吸引力。
汚物や汚泥に塗れた据えた臭いが充満する世界を
息苦しさを感じながら浮遊している気分になるわけだけど。
どうしたって目が離せない。
嫌悪感を抱く汚物の中にハッとさせられるものがあったり。
時折キラリと光る綺麗な言葉に胸を付かれたり。
結局、彼らの流れ着くところが気になって、読み続けてしまう。
過食嘔吐にもサドマゾにもネクロフィリアにも同調できない私は、
どこまでも編集者だった桐島の視点に安堵する。
桐島が置き捨てられた山の中で、寿命に想いを馳せる場面がとても印象的。
いつかは尽きる命。
どう生きるかは結局は自分次第だ。
感覚が麻痺したのか、笑ってる場合ではない場面で
何故か笑ってしまった不謹慎さ。
私だけかな?
カルチャースクールの小説教室が舞台の一つになっていて、
小説って習って書くモノなの?と終始思っていたわけですが。
「習うもんじゃない」というのが著者の見解でちょっと安心した。
「金閣寺」三島由紀夫(新潮文庫)
自己完結した世界の中で、ひたすら妄想の中に生き、
都合の悪い現実からは目を逸らし続けた溝口。
内に内に向けられた、肥大化する自意識。
金閣寺に対するあまりにも一方的な偏愛。
金閣寺にしてみれば、ただの迷惑だ。
美しく荘厳にそこに佇む金閣寺は、移ろいゆく時代と共に在るものであり、
彼の美意識の為にあるものでも、彼の自己愛の為にあるものでもない。
金閣寺はあなたなんて眼中になかった。
人間と、いや、自分とすらまともに向き合うことができなかった彼の選んだ愚行。
それは狂気ですらない。
果たして、これで彼は解放されたのだろうか?
生きることを選んだ彼のこの先の人生が気になる。
情緒もへったくれもない今風な言葉で言ってしまえばこじらせすぎた中二病。
やることもやらないで求めるばかり。
挙句は自らやるべきことを全放棄した甘ったれの妄想のとばっちりを受けて
燃やされてしまった金閣寺。
ああ、やっぱり金閣寺的には大迷惑だと思うの。
「アンフィニッシュト」古処誠二 (文春文庫)
今回の事件は自衛隊内での小銃紛失事件。
前作に引き続き、朝香二尉と野上三曹が事件解決の任を受け、いざ、伊栗島へ。
二人の相変わらずな軽妙な会話の合間合間に浮かび上がってくるのは、
島の在り方、そして自衛隊の在り方に関する問題点。
そして、島民たちの憂いと隊員たちの危機感。
最後はそれらについて考え込んでしまった。
やり方は間違っていても、彼らの言い分は間違っているとは言い難い。
意見を具申したところで容易には通らない。
じゃあ、正しいやり方って?
答えを導き出すことは難しい。
彼らの乗った未完の船。完成する日はくるのかな?
何かが起こってから講じられる対策。
それでもいい場合もあるし、それしかない場合もあるし、それじゃあダメな場合もある。
「安全神話なんかではありません。それは安全願望です」
震災後に耳にした言葉がどうしても忘れられない。
「UNKNOWN」古処誠二 (講談社ノベルス)
自衛隊の基地内で起こった盗聴事件。
二人の自衛隊員が、基地の中をひたすら歩きまわりながら、
隊員たちにヒヤリングを行っていく物語。
会話が軽妙で面白い。
そして、登場人物たちの言動がなんだか愉快。
とはいえ、同時に語られる自衛隊に対する周囲の認識と、内部の問題が重い。
今の時代は、自衛隊の評価はもっと高い。
特に、震災を経験した後であるから、尚更。
その職に就いているだけで色眼鏡で見られてしまうことは残念だ。
事の顛末はあまりにも阿保らしくて「馬鹿ですか!?」と言いたくなるわけですが。
朝香二尉の残した言葉に心から頷き、成長著しい野上三曹に清々しい思いで読了。
サラッと楽しく読める本は結局積読棚ではなく、既読棚から発掘☆
ひたすらコーヒーを飲んでいる朝香二尉の姿から、何故か姿(@機龍警察)のことを思ってみました。
似てはいないんだけどなぁ。
「三国志 6 ~陣車の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
何故劉備は人材に恵まれる?
羨んだところで、曹操は劉備には成りえない。
己のやり方で道を究めるしかない。
「覇業」という言葉が相応しい男の辿る道は、孤独が付き物だ。
漸く軍師を得た劉備。
ここにきて明確に発せられた「力が欲しい」という言葉。
雌伏の時は終わったのだと、震えが走る。
旧き者たちは去り、新しい力が頭角を現し始める時流の中で、
守るべきものを守りきり、
未来ある若者が命を落としたことがやるせない。
そして、足場を固め、現状を見極め、慎重に時を計る孫権。
天下三分に向けて本格的に動き始めた乱世から目が離せない。
孔明が劉備たちの陣に加わったことで、
これからの蜀の動きがとても楽しみ。
孔明好きの友だちはこの巻から買いそろえていました。
おかげで私は北方三国志は6巻まで!という
誤った認識を植え付けられたことがあります。
正しくは、彼女が買った北方三国志は6巻から!
本棚を見て「なんで北方三国志、ウチにはこんなにあるのかしら?(13巻完結)」と
ビックリした記憶があります(笑)