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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「悪と仮面のルール」中村文則(講談社文庫)



爽やかな恋愛小説。
と、言い切ったら語弊があるかな?
一つの愛の終わりと、新たな愛の始まり。
自己の内面と対峙し、運命と真っ向から向き合い、
逃げることなく生ききった、とある男の人生。
悪だ邪だと御託を並べた男たちは、結局は人生に倦み、無聊に呑まれ、身を滅ぼしていく。
自らを弄ぼうとする運命に巻き込まれるまいと、必死で抗った彼の生き様は、
結局は心から守りたかったものを守り通したとも言える。
かつての己の言葉通りに。
他人の顔が自らの顔として定着していく様は、多分、生命の証。
彼を見送った後、医師や探偵の歩んできた人生が妙に気になった。

悪党(であろう人)たちがペラペラしゃべる言葉がなんだか薄っぺらく感じられる。
内省する彼の言葉の方がよっぽど重くて悲痛だ。
とはいえ、とても読みやすい中村文則作品だと思います。


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「荒野のおおかみ」ヘルマン・ヘッセ (新潮文庫)



疎外感を感じながらも「市民的なわく」の片隅に留まりつづけたハリー。
孤高にはなりきれず、厭世的な方向にも振りきれず、
自殺願望を抱える50近いハリーが出会った少女、ヘルミーネ。
彼女と係わりはじめたことによって、
「市民的なわく」の内側にひっぱられていたことに、
彼は気付いていたのかな?
二面性なんて誰にでもあるし
良いことと悪いことをいったりきたりなんて当たり前。
人間はいつか必ず死ぬの。
終始彼に言いたかった言葉を
最後にモーツァルトがバッサリ言い放ってくれて、
デスヨネー、と大きく頷いて……ヘッセが導きたかったのもこっちだったんだよね?と、
自分なりに納得してみました。

ほぼ書かれた順番にヘッセの作品を読んできての11冊目。
『荒野のおおかみ』というタイトルから今までのヘッセの作風を連想して読み始めると、
その違いにちょっとびっくり。
この作者はこう書かないといけないっていうきまりなんてないからね。
いい意味での衝撃でした。【ガーディアン必読 59/1000冊】





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「死に向かうアダージョ」小池真理子(双葉文庫)



自己陶酔もしくは自己憐憫の果ての心中。
詰めが甘いから、その計画は破綻する。
そこから先の展開は、巻き込まれた久里子にとっては悲劇だっただろう。
奔走した彼らの知人にとっても、いい迷惑だ。
だが、彼ら二人に限ってはもはや滑稽としか言いようがない。
自分の運命を相手に委ねた責任は自分自身に在る。
思い描いた通りの結果にならなかったからと言って、
相手だけを詰るのは筋が違う。
「絶対」は在り得ない。
「私だったら、死ぬのも生きるのも、好きな男の人の傍を選びますよ」
青砥夫人の言葉がものっすごい健全に響いた。


「ばっかじゃないの」という言葉を胸の中で呟いて、消化不良のまま読了。
『恋』と同時期に書かれたことに対する私の勝手の期待感が大きかった。
やーん。すっきりしなーい!←そもそもすっきりする内容じゃないんですけど(笑)
心中モノは榊原姿保美さんの『雪うさぎ』が私の中では神作品。JUNE作品なんですけどね。




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「天使たちの探偵」原尞(ハヤカワ文庫JA)



天使たち。
即ち、子どもたちの係わる6篇が収録された短編集。
人と人。
その関わり方が、どれも少しずつ物悲しくて、胸が疼く。
天使たちの探偵はスーパーマンではないけれども。
誠実に彼らと、そして仕事と向き合い、
絡み合った糸を紐解いていく。
『少年の見た男』聡明さ故に、少年の背負ったもの。この先の彼の人生に影を落としませんように。
『歩道橋の男』人の弱さは他人が計るものではない。彼女はあんなにもしなやかだ。
『選ばれる男』清々しい政治家に久しぶりに出会った。少年の笑顔がただ嬉しい。
あとがきにかえての書き下ろし。
その短さで、その密度。
凄いわ!と、唸るしかなかった。原尞、全力でおススメします!


「残念ながら、探偵は無口なのです」
この台詞でなぜか「おしゃべりな殺し屋」を連想した。
原尞と北方。ハードボイルドつながりの、佐賀つながり。

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「交渉人は休めない~榎田尤利100冊記念特別版~」 榎田尤利(SHYノベルス)



今回は『夏のリング』のみ再読。
久留米と魚住のその後を書いてくれて、本当にありがとう!
シリーズ一作目から再読をはじめて、
ここまで読み切って改めて幸せに泣けました。
長い長い遠距離恋愛の終焉が
まさかあんな形での着地になるなんて、思ってもいなくて。
びっくりして、嬉しくて。
ジワッと泣けました。
作中で彼らは38歳。
全く変わっていないと思っていた彼らの在り方だけど、
久留米の想いも、魚住の想いも、更に確固たる方向へ変わっていて。
一歩踏み出した魚住の変化が、私とても嬉しかった。
サヤカと良樹のカップルも可愛らしくて素敵。
みんなお幸せに☆

記念本らしく様々なカップルが登場しますが、
私やっぱり轡田さんとユキが大好きです。
この流れだったら次は『ラブ&トラストシリーズ』か?って感じですが。
次は未読で積んである『nez【ネ】』にいきます。(笑)

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「黒龍の柩 下巻」北方謙三(幻冬舎文庫)



時代の波に乗り切れなかった近藤勇。
滲む彼の諦念が、とても哀しい。
そして土方は、時代と共に駆け抜けたのか、
或は、時代に抗ったのか。
いや、彼は最後の瞬間まで彼の人生を駆けていた。
夢のかけらをその胸に抱いて。
かけらが砕けて散った時、彼は別な男へと生まれ変わる。
男たちは掲げた夢のために一丸となって戦っていた。
一刻を争う激動の時代において、
時を待とうとしたことが夢を壊した。
これは、時代の波に乗り切れなかった男たちの物語。
そして、移り変わる時代を精一杯生きた男たちの物語。
ハードボイルドな幕末小説。
北方浪漫、ここにあり!


「戦に、限界があると思っているのか。
あるのは、勝つか負けるか。
生きるか死ぬか。
それだけだ」
彼を迎え入れるためにそこまでの覚悟で戦っている男たちがいるのに。
「待つ」ことを是とした彼。
だったら何故北を目指した!?と、言いたくなったけど。
彼にはほかの誰もが担えない責任と思いがあった。
ならば、「無念」という言葉は彼にだけは口にしてほしくなかった。
こうなることを選んだのはあなたなのだから。

そんな時「BAKUFUって統べろう!」を思い浮かべてみたら、憤りも消えました。←色々台無し(笑)

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「黒龍の柩 上」北方謙三 (幻冬舎文庫)



史実と虚構の見事な融合。
もう、これが史実でいいんじゃない?と言いたくなる、北方流新選組。
己の描いた通りの死に様を見事に貫いた男。
切ないまでに散り際を模索し続ける男。
そして、変革する時代の先を見極めようとする男。
決してまみえるはずのなかった男が語った国の在り様が、彼を北の大地へと誘うのだ。
「誠」の旗の元に集った男たち。
肩で風を切って闊歩していた時代も、確かにあった。
だが、自らの意思ではどうにもならない時勢に流されながら、
何時しか彼らの道は分かたれていく。
大局のその先を見据えた男の行く末はどうなるのか。
下巻、読むしかないよね。



そもそもが「兼定」がきっかけで再読しようと思った私の動機は
どうなの?って感じではありますが。
動機はさておき、きっかけがあったおかげで再読できているわけで、結果オーライ?
五稜郭にもう一度行きたいな。
水滸伝シリーズありきの見方になっちゃうけど、
ここから水滸伝……というより、楊令伝の方に通じるものがあっちこっちで感じられて
なんだか感慨深い。
大河をまともに見ていたわけではないのに、
沖田総司のビジュアルは藤原竜也以外の何者でもなくて
よっぽど印象深かったのね、としみじみ思ってみました。

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「チャイルド・オブ・ゴッド」コーマック・マッカーシー(早川書房)



大きな感情の起伏はなく、明確な理由も示されぬまま、
どこまでも「人」としての営みから外れ、転落していくバラード。
自分と同じ人間の括りだと思えないのか、思いたくないのか、
「人間に慣れている類人猿」という比喩がストンと落ちる。
もはや「犯罪」という言葉では形容しきれない彼の所業。
その根底にはあるのは、原始的、或は本能的な何か。
洞窟の腐臭すら漂ってきそうな緻密な描写。
感情が一切排除されたその描写には、想像の付け入る余地はない。
どこまでも淡々と綴られる渇いた言葉に牽引され、
彼の蠢く深い闇の中に引きずり込まれる。
そして、指先で削り出した光に、自分が人間であることに、安堵する。


鬱々とした感情が振り切れるように揺れたのは、バラードが泣いた時。
美しい自然の光景を目にして泣く資格はあなたにはないと。
そんな言葉を突きつけたくなった。
というわけで、読メ登録1000冊目はマッカーシーで。
どんな本?と尋ねられたら、形容がとても難しい。


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「空飛ぶ広報室」有川浩(幻冬舎文庫)



頑張って楽しく感想書こうと思ったけど、
頑張るものではないので率直に(笑)
リアルを知るためにはこの上ない構成だと思うし、
リアルを知ってもらうことってとても大事。
でも、リアルに震災を体験した身としては、最後に加えられている
「あの日の松島」に全部持っていかれて、どよーん、となっています。
できれば、違う出版物として出していただけたらありがたかった。
震災を語りたくないわけじゃないんだけどね。
この作品自体は震災を語るものじゃなくて、彼らの再生と成長をわくわくしながら追っていく物語。
だから、この作品は幸せに読み終わりたかった。
Finマークついたところまでは、本当に楽しかったから。


全く感想になってないけど、たまにはアリだよね。
ブルーインパルスは機会があったらリアルに飛行しているところを是非見ていただきたい。
はじめて見たのって、インディー観戦に行ったツインリンク茂木。
サーキット場でブルーインパルスジュニア(改造バイク)の地上でくるくるする可愛い走行(?)を見て喜んでいたら、轟音と共に空を駆け抜けた機体。そのまま披露されたど迫力の展示飛行。
震える程感動しました。
結局、松島基地まで航空祭を見に行くほどハマった思い出。

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「サイメシスの迷宮 完璧な死体」アイダサキ (講談社タイガ)



思い出を大切に抱えていくことと、事象を寸分違わず記憶していくことは意味合いが違う。
思い出と共にその時感じたあらゆる感情がリアルに押し寄せるとしたら?
しかもそれが負の感情だったら?
それはとてもしんどい。
超記憶症候群の羽吹とそんな彼とバディを組むことになった神尾の物語。
異常犯罪の真相を紐解いていくと共に、随所で語られる彼らの過去。
この物語そのものが、この巻だけには留まらない、
綿密に練られたプロットで構成されているのだということに気付かされ、興奮マックス。
彼等はこれからもバディとしての距離感を模索しながら、
良いコンビになっていくんだろうなぁ。
続刊、期待します♪


とりあえず自分が女性警察官の身体条件を満たしていないことは理解しました。
宇宙飛行士もダメなんだよね。いや。そもそもお呼びじゃないんですけど(笑)
父親の死の瞬間に立ち会えなかった神尾の悔恨。
イロイロ事情があって、父親の葬儀の時は絶対に泣くまいと意地を通した私。
素直に泣けるまで一年かかったことをちょっと思い出してみました。

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