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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「世界の果て」中村文則 (文春文庫)



短編5編。
破綻や崩壊を匂わせておいて、彼の世界は決して崩れない。
とうとう壊れたか、と思って息を呑んでも、やはり壊れてはいない。
どんなに息苦しいと思っても歪んでいても、我々はこの世界で生きていく。
「生きる」ことをつづけていく。
それは執着というよりも、ま、仕方ない。生きてくか、というスタンス。
だけど、セックスに対しては異様な執着をみせる彼らには正直うんざり。
本を読むときは暗いとか明るいとか。ハピエンとかバッドエンドとか。
ぶっちゃけそこには興味がなくて、面白いか、面白くないか。響くか響かないか。
ただそれだけ。
彼の作品は響く。だから読み続ける。

読後のモヤッと感は犬!犬どうした!と叫びたいこと(笑)
まぁ、読み手の想像力に委ねられるんだろうけど。
夜の間に解決しなかったことで白日の下に晒される「僕の犬」。
前足を握る描写が妙に印象に残った。


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「教団X」中村文則(集英社)



人生に惑い、生き様を模索する人たちがここにはいた。
癒えずに抱えた過去の傷が膿んで痛んで仕方なくて、
知らず、拠り所を求める人たちが。
「生きる」ということはどういうことなのか。
問いかけられ、思考する端々にぶっこまれてくる国家の在り様。
なるほど、と思い、或は反発する。
考えること。
是と非を見極めること。
多分それは、生きている限り、停滞してはいけない。
文章が俗っぽくなった?と思って読み進めたけど、
著者が常々語りかけてきた言葉に作中で行き当たって泣きたくなった。
彼の伝えたいことは変わってはいない。

カルトに突出した作品かと思って読み始め、方向性が違っていてちょっと戸惑う。
初期作品に比べるとよっぽどエンタメに寄っているのでとっつきやすいとは思うけど、
エロ描写がしつこいので気軽くおススメしにくい。
読書はどこからとりかかってもいいものだけど、
中村作品はここから読み始めるのではなく、やはり順番に追っていってもらいたい気がする。
これは私の我儘。
文庫版でのあとがきがとてもとても気になるので、そのうちそちらも読んでみるつもり。



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「翳りゆく夏」赤井三尋 (講談社文庫)



事件は解決している。
事の顛末もわかった。
だから、もやっとしているわけではない。
ただ、心底気になって、そして知りたくて仕方がない。
その後彼らがどんな人生を選択したのか、を。
「余韻」という言葉とは全然違う。
ただ気になって気になって仕方のない読後。
自分だったら?のifは
「目の見えない人の不自由さは目を閉じただけではわからない」
という千代の言葉通りでしかない。
だから提示してもらいたい、という思い共に
これはこれで完成形なのだと納得できる部分もある。
ものすごい吸引力のある作品だった。

金額あわせのためにポチッとした作品だけど、
とても良い引きだった。
Amazonのカートの中に300冊近く入っていて、
ブックオフでオーダーする時に送料無料まで金額が足りていないと
そこから見合った金額の本を引っ張ってくる……という買い方をします。
だから、ブックオフではコレが欲しい!と明確に意図して買うものの、
Amazonの方は何でカートに入っているのかもはや分からない作品が多数(笑)

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「逆説の日本史 14 近世爛熟編」井沢元彦 (小学館文庫)




「忠臣蔵」との最初の出逢いは年末時代劇。
吉良=悪者というイメージがインプットされること数十年。
アレは史実じゃないんだよ、と教えられた数年前の衝撃はなかなかだった。
え?ってことは吉良が討たれたのはとばっちり!?
と思った当時の私は間違ってなかったと、頷きながら読み進めた第一章。
第二章以降もほぼ知ることのなかった綱吉の治世について等、興味深い話が続く。
というか私、江戸時代を殆どよく知らない。
この時代に頑張った商人の功績が、現代につながっていることを痛感。
竹島問題のルーツもデパート・スーパーの元祖もここから。
情報を消化しきれていないので再読必須。


秋に酒田に行った時に北前船見てきた!と復習気分。
百聞は一見に如かずだね。
本間美術館にも行ってきたけど、これを読んでから行ったら、
感じることはもっと違ったかも。
ま、酒田は何度か行っているので、また行く機会があるはず。
サンファンバウティスタ号。
老朽化の前に乗船できてよかった。
そして、去年、お友達と楽しく遊びに行けてよかった。
■行きたい場所:備中松山城・別子銅山

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「誓約」薬丸岳 (幻冬舎文庫)



過去は現在へと間違いなく続いている。
断ち切ることも、都合よく全てを無かったことにすることもできない。
そして、社会の中で生活をしていくかぎり、
私たちは法を順守して行かなければならない。
だけど、感情は別だというのも納得はできる。
復讐をする権利はない。
だけど、感情はそれを望む。
狭間に陥った精神の苦痛はいかほどのものなのか。
そして、過去の自分が犯した罪と命を繋ぐために下した苦渋の末の約束が、
現在の彼を苦しめる。
命を奪うことを回避するため、そして大切な人を守るために奔走した彼には
待っていてくれる人がいる。
全力で頑張る方向を間違えていたことに気付いた真犯人は絶望から這い上がれるのだろうか?


身バレしちゃったけど、ヤクザ方面からの追求は大丈夫なの?とふと心配になった読後。
後半は綺麗にまとまった感じだったけど、前半のドキドキ感は凄かった。






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「Aではない君と」薬丸岳 (講談社文庫)



誰に助けを求めることもできないまま、
無限に続くかと思われる苦しみから逃れるために、
14歳の子どもに何ができるのか。
正直、大きな何かが出来るわけではないと思う。
そもそも、
大人が子どもときちんと向き合って寄り添うことができていたなら、
多分、こんなことにはならなかった。
だが、それは理想論。
事件は起きてしまった。
「何故?」の理由が見えてくるにつれ、心が重くなる。
そもそもの発端はどこにある?と問われたのなら、
「ここ」と一点を示すことは決してできない事件。
親や友だちや世間に。
追い詰められる子どもがいなくなることを願ってやまない。


「心とからだと、どっちを殺した方が悪いの?」
修羅の渦中にある子どもに問われたら、答えることに窮する問い。
理屈では吉永の言うことは正しいとは思っても、
いじめに耐え続けた子どもに対して断言することは難しい。

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「淡雪記」馳星周 (集英社文庫)



それが、場当たり的、或いは衝動的な行為だったなら、冷めた目で見て終わっただろう。
だか、彼が胸の奥に秘めた覚悟もしくは諦念、いや、言うならば虚無が、
やるせなさを滲ませる。
地に堕ち、闇の中を彷徨っていた天使が出会ったのは、
凌辱に塗れた妖精。
哀しい程に純粋無垢な魂を抱え、息苦しい世界でもがく彼女。
森の中で出会った二人の辿る道は、多分最初から分かっていた。
そもそもが、彼自身、もはや後戻りできないところに立っていたのだから。
だけど、出会えたことで彼らの人生に添えられた彩りがある。
だから彼らは幸いの中で眠りにつく。
雪のゆりかごと月の光に抱かれて。

600項越えてるわりには、サラッとしてるなーという読後。
馳星周の『不夜城』『虚の王』のツートップは揺るがず。
花村萬月も『ブルース』と『皆月』のツートップは揺るがず。






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「逆説の日本史 13 近世展開編」井沢元彦 (小学館文庫)



仇討ち。
弟が兄の敵を討つのは認められるけど、
兄が弟の敵を討つのは仇討とは認められない。
なんか不公平だ。
と思うけど、法制化されるのには何らかの決まりごとは必要なわけで
誰も彼もが敵討ちをしてオッケーだったらそれはハンムラビ?と、ぐるぐる。
鎖国は幕府の政策ではなく、後付けで使われるようになった言葉だということには目から鱗。
結果的に閉じこもること200年強。
他国の侵略を受けなかったのはものすごいことなのだと改めて思う。
その間に構築された徳川の支配と熟成された文化。
私、江戸時代には本当に興味なかったんだなーと思いつつの読了。


北方の『岳飛伝』未読なのですが、ここでネタバレを拾ってしまったようで
とりあえず忘れることにしました。びっくりしたわ(笑)
海底や地中に電話線を引く作業に従事した方の話を聞く機会があり
驚愕の嵐だったことを思い出しました。
■行った場所:島原・天草・神津島。
なかなか行く機会がなさそうだけど、よく行ったな、神津島。
歴史を学びに行こうと思ったわけでも、泳ぎに行ったわけでもなく、
砂漠が見たい!というのが私の動機でした。

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「白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記」小野不由美 (新潮文庫)



手が届くかと思った光。
一度抱いた希望が叩き折られた瞬間の絶望は、
苦難に耐えていた時以上に堪えることを知っている。
次々に失われていく命。
それでも。
それでも彼らは、諦めなかった。
覚悟の決意を口にする彼らの想いが刺さる。
たとえ血路であろうとも、それがどれほどの負荷になろうとも、
主につながる道を自らの手で切り開いた泰麒。
決して他者を頼ろうとしなかった彼の気持ちに感服。
阿選。
覚悟を持って事を成すってそういうことなんだよ。
誰も責めることのなかった驍宗。
満身創痍の王と麒麟の築く未来に想いを馳せての読了。→


頁を閉じても、まだその先を読みたい想いに囚われたまま、気持ちは戴を漂っている。
全四巻。これだけ読んでもまだ読みたい。
早く先が知りたいと思って読み進めたけど、
終わりが近づくにつれてまだ足りない、もっと、と。
空白の6年を丁寧に描写してくれたからこそ、李斎らと共に旅をしている気持になり、この先も国を建てなおすであろう彼らと共に歩みたいと思ってしまう。
至福の読書時間でした。

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「白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記」小野不由美 (新潮文庫)



繋がり、そして実を結んでいく点と点。
「いつか来るべき時」を諦めなかった人たちが、確かにいた。
理不尽な暴力に晒された人々を見過ごせない人たちがいた。
「やるべきこと」を為しつづけた人々が集まれば、
国を動かす力になる。
方々に散った人たちを結びつけることになった李斎の旅。
一方で独りよがりの逆恨みを抱き、或は興味本位で人々の運命を弄んだ輩に感じる憤り。
何より腹立たしいのは、その後すべてを放棄したことだ。
泰麒も目的のためにはその手で暴力をふるうことを厭わない。
そして、彼こそが諦めてはいなかった。
白雉が落ちていないこと。
それこそが天意。

軍が軍として機能するためには何が必要なのか。
北方の梁山泊で学んだことを思い出す。
感謝の意を後世まで伝え続けるその姿勢に、エルトゥールル号(『海の翼』参照)のことを思い出す。
最大の振り返りは『魔性の子』のエピソード。
あの時の出来事がここで繋がる壮大さ。
心躍らせながら最終巻へ。

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