きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「BL小説」の記事一覧
- 2019.04.18 「キス」一穂ミチ(ディアプラス文庫)
- 2019.04.09 「神さまに言っとけ」榎田尤利 (SHY NOVELS)
- 2019.03.30 「サクラ咲ク」夜光花 (リンクスロマンス)
- 2019.03.26 「忘れないでいてくれ」夜光花(リンクスロマンス)
- 2019.03.23 「菫の騎士」榎田尤利 (SHY NOVELS)
- 2019.03.18 「君だけが僕の奇跡」千地イチ (ラヴァーズ文庫)
- 2019.03.11 「華の闇」榎田尤利 (SHYノベルズ)
- 2019.03.08 「愛に跪く時」英田サキ (ビーボーイノベルズ)
- 2019.03.03 「貴公子司書の溺愛ライブラリー」伊勢原ささら (幻冬舎ルチル文庫)
- 2019.02.27 「弁護士は恋を自白する」榎田尤利 (SHY NOVELS)
「キス」一穂ミチ(ディアプラス文庫)
どうしたって噛み合わない二人の想い。
傍に在りながら決して距離を縮めようとしない
苑に対する明渡の想いが切ないなぁ、と思っていた矢先の苑の叫び。
垣間見えた苑の想いに安堵したのも束の間。
まさかの展開に驚愕と涙……ガッツリ抉られました。
言葉で語らずとも、その目線が、皮膚の緊張が、
彼らの想いを伝えてしまうことがやるせない。
そして私は細胞レベルででもいいから覚えていて欲しいと切望していたので、
時間をかけての彼らの着地点に再び安堵。
「何故?」の説明ができなくとも、溢れてくる想いがある。
人の感情って不思議で尊い。
故人がそこに込めた想いの真意は永遠にわからない。
そしてこちらから働きかけることも決してできない。
だから、この世を旅立つ人は、残された人が惑わされるようなものを残しちゃいけないんだと、
個人的には思います。
私は後から聞かされた父親の言葉に悔恨しかなく、
知人は「お前の父親は実は……」というところで息を引き取った母親の言葉に悶々としていました。
生きている彼らの物語を、まだ読めることに胸を弾ませつつ、続編に手を伸ばします。
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「神さまに言っとけ」榎田尤利 (SHY NOVELS)
花屋にヤクザに天使。
命の炎が消えかかった男が、その命をかけて神から課された試練に挑む。
これ、どんなふうに着地するの?と首を傾げながら読みはじめ、
結果的には大納得のエンディング。
この辺のまとめ方はさすが榎田さん。
愛をせせら笑っていた男が愛に涙するまでに至った心境の変化と、
愛を知らず、孤独に生きてきた彼がぬくもりに包まれる様がとても良かった。
大切な人の為に咄嗟になしてしまう行為は損得なんかでは計れない。
だからこそ、尊い。
本能が知っている。ただ、求めている。
ラスト、一緒になって涙ぐんでしまったわ。
内容はまったく関知しないまま未読の榎田さんの作品を適当に引き抜いて読み始めたら
予想以上に良くて、お得な気分になれた一冊。
荒んだ気持ちが吹っ飛ぶ気がする。(荒んでるときに読んだわけじゃないけど・笑)
「サクラ咲ク」夜光花 (リンクスロマンス)
中学の先輩だった櫻木に、15年近くも想いを抱き続けた怜士。
だけど、好きになった相手が同じように自分を想ってくれるとは限らない。
誰に対しても心が動くことのなかった櫻木は、
そのことををきちんと伝えた上で怜士との距離を縮め、
取引を持ちかけられて怜士を抱いた。
その先を勝手に期待してしまった怜士の気持ちもわからなくないけど、
手の内を全部晒した櫻木のことは責めるのは筋が違う。
どうなることかと思ったけど、
「恋が分からなかった男が、好きだって言ってるんだ」
この言葉にすべてが集約されている気がして。
なんかもう、胸が熱くなった。
導入のインパクト。
事件の謎解き。
櫻木と怜士の気持ちの変化。
前作の大輝・秦野・塚本もうまく絡んで、最初から最後までグイグイ読まされました。
「忘れないでいてくれ」夜光花(リンクスロマンス)
殺害された両親の復讐を誓って生きてきた清涼と、
父親から受けた虐待の記憶を抱えて生きてきた秦野。
苦しんでもがきながらの人生を歩んできた二人救済の物語。
「結局は自分なんだ」というラストに零れた秦野の台詞が
ものすごく刺さった。
そうだよなぁ、と、そう在りたい、と、両方の意味で。
泥臭くぶつかり合った二人だからこそ、築くことのできた関係。
本音と弱さを晒せる存在がそこに在ることはとても心強い。
朝南さんのイラストのおかげでスパダリか!?と思った秦野が
実はそうじゃなかったところが個人的にギャップ萌え。
終り方がとても良かった。
謎だらけで強烈な印象を醸し出す清涼の友人、
塚本がとってもとっても気になった。
この人はどんな恋愛をするんだろう?と。
スピンがなさそうなのは残念だけど、別の方のスピンが控えているので、
そちらを楽しみに♪
「菫の騎士」榎田尤利 (SHY NOVELS)
誤解は言葉を尽くせば解消できるが、
身勝手な悪意はどうしたって振り払えない。
人と人。
信じた分と同じだけの信頼が返ってくるわけではないけれども、
信じることによって良質な変化を来すことは少なからずある。
裏切られるリスクがあるとしても、
アルヴィンは「信じる事」を貫いていいと思う。
理想論だけを述べているわけではなく、
経験から導かれた言葉だからこそ重みがある。
降りかかった火の粉は頼もしい騎士たちがきっと振り払ってくれる。
何より、精霊たちの加護もある。
人は「強い」のではなくて「強くあろうとしているから強くいられる」のだと
改めて噛みしめる。
良質なファンタジーと安定のBLの融合。
ダンテが己を守るために身につけざるを得なかった「強さ」が、
これからはアルヴィンを守るための「強さ」になることが嬉しい。
「君だけが僕の奇跡」千地イチ (ラヴァーズ文庫)
白黒のモノトーンしか認識できない視界の中で生きてきた慎吾の眼に飛び込んできた極彩色。
それは世界がひっくり返るだろう。
その色を与えてくれた武にすがるように執着するのも理解できる。
そんな色を慎吾に与えた武は、過去の出来事に囚われたまま、
世間から身を隠すように生きてきた。
慎吾の歌声はそんな武の閉ざされた世界を解き放っていく。
ミュージシャンと画家。
二人が出会った瞬間から織り成される奇跡の物語。
子どもたちや仕事仲間、友人知人。
彼らが多くの人との接点を持ちながら成長や変化を遂げていく様が良かった。
とても綺麗なおとぎ話。
なんだけど!→
基本的にはあるがままを受け入れる派だし、
リバも気にしない。むしろウェルカム。
でもどういうわけか、この作品に限っては読み進めるうちに右左勝手に固定化されちゃって、
ああ、私の中では逆だったの~~!と、呆然。
うっっっ、私が悪い。
「華の闇」榎田尤利 (SHYノベルズ)
「幸福になる勇気」という言葉が刺さる。権利ではなく勇気。
吉原で暮らす遊女たちの生き様はあまりにもやるせない。
男遊女として吉原に身を置く華嵐とかつて想いを寄せた貴師との再会から始まる物語。
離れ離れになってもそれぞれの心に熾火のように残っていた想い。
立場の違いも相俟って、
歪にゆがみ、素直になりきれず、露悪的に振る舞って強情を張る。
そんな二人の想いが次第に浄化されて濁りのないものになっていき、
ただ純粋に愛しさ吐露して永遠の愛を誓う。
そこに至るまでの二人の在り様が見事に描かれていた。
雪の中での貴師の告白、良かったなぁ。
ああいった形での男の弱音の吐露。
胸キュン以外の何物でもない。
一度読んで手放して、買い直しての再読。
内容全く覚えてなくて、どんな読み方してたんだ?自分?とガッカリというか、びっくりというか(苦笑)
おかげで楽しく読めたのは……いいことってことにしておこう。
宮木さんの『花宵道中』が読みたくなる。
「愛に跪く時」英田サキ (ビーボーイノベルズ)
素晴らしい筋肉!素晴らしい肉体美!
そのふくらはぎ……触りたい。
と、特別に筋肉フェチでもなかったはずの私にも眼福のイラストにうっとり。
古代ローマを模した時代に生きる剣闘士・ドミナトスと貴族・ルキアノスの物語。
そもそもが意地の張り合いから本心を押し隠して始まった関係は
なかなか甘い雰囲気に至らずにやきもき。
言葉足らずで自己内省ばかりの二人は過酷な環境下での擦れ違いから
今生の別れかっ!という危機に瀕するけど、
いろいろと間に合ってよかった。
死を覚悟したドミナトスがルキアノスの寝所に忍んでくるシーンが好き。
北方脳な私は、過酷の旅での馬の大切さは良くわかってる。
馬が倒れたらその先には思うように進めない。
だから馬と自分を比べる必要なんてないんだよー!
と、声を大にして言いたかったお借り本。
でも朝ごはんは一緒に食べてあげようよ、とも思った。
二人いるんだから一人で食べるのは味気ないよ~。
「貴公子司書の溺愛ライブラリー」伊勢原ささら (幻冬舎ルチル文庫)
フリーターだった愁が好きと適性を活かした図書館司書になり、
成長を遂げていく物語。
そのきっかけを与えてくれたのは図書館館長の都築。
この都築が私視点ではダメ男でした(笑)
仕事を一生懸命覚えて自分なりにこなしていこうと頑張っていた愁の態度は好印象。
与えられたチャンスをモノにしたのは自分自身の努力の賜物。
だからこそ、一社会人として
「公私混同しても無理はないだろう?」の台詞に「いや、ダメっしょ」と突っ込み、
ペーパーの「君を養わせてくれ」には「いや、違うっしょ」と言いたい。
本に対する愛情が溢れんばかりに伝わってきたのがとても嬉しい。
「美形司書たちが女性客を接待する執事カフェのような民間図書館」
なんだそれ??な帯だけど、まさにその通りの世界が展開されていました。
上手いなーとは思ったんだよね。
残念ながら私は図書館には行かない人なので、行きたい感は皆無でしたが(笑)
「弁護士は恋を自白する」榎田尤利 (SHY NOVELS)
プロのダンサーを目指して単身NYに渡った潤也と、
そこで出会った弁護士のアシュリーとの物語。
セオリーだったらこういくんだろうなーという想像を軽く飛び越えた、
想定外すぎた展開がおもしろかった。
すべての流れを良い方に導いたおばあ様のお言葉はとても素晴らしい。
後半はダンサー仲間のリックとショーンの物語。
考えが足りないなりに実は一生懸命考えているショーンがとても可愛いし、
臆病さを捨て、恋愛にのめり込んだリックは溺愛系で素敵。
こちらは王道展開。
ガツンとしたインパクトも王道も堪能できるお得な一冊。
共通項は勿論ラブ☆
アシュリーのメンタルが安定してなさそうだなーとは思ったけど。
それにしたってまさかの行動にびっくりよ。
一方で、単身でNYに移り住んできただけあって、潤也の肝の座り方は爽快だった。
現場に乗り込んだシンとジェレミーの誤解しまくった二か国放送も愉快。
潤也が英語を理解していないと思い込んでのアシュリーたちの会話と
それに対する潤也の突っ込み等々の、通じ合っていないやり取りも楽しい。
日本語と英語の使い分け(全部日本語表記だけど)がうまいなーと思ったし楽しかった。