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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「屍界」五條瑛 (双葉文庫)



なんで「大丈夫」だと思えるのだろう。
彼らのそれは根拠なき願望。
逃がそうとしたばかりに、多くの血が流れる。
裏切りを繰り返してきた男を何故受け入れようと思うのか。
欲が勝ったばかりに失われる命。
彼らの甘さに溜息しか出ない。
なんかもう、余計なお世話だって言いたい。
過去の亡霊みたいな者たちの思惑に振り回されたくない。
今この国で生きる者たちにすべてを委ねるがいい。
その先の未来がどうなったって、それはその者たちの選択だ。
uk-xやモーリンに未来を託そうとする鳩に思いは近い。
異国で育つ命に祝福を。
誰だって生まれてくるときは無垢で純真なのにね。

あと一冊。どんなふうに着地するのかを想像しても意味がないので(←わからないから)
ただ物語の中に没入するのみ!


本編の感想は単行本の方で投稿済み。
文庫の書下ろし短編のタイトルは「ゴッホの血」。
国立西洋美術館で静かに語り合う二人の男。
話の流れで出てきた狂気の血。
まさか、これから二十年近く後にその血が災禍をまきちらすとは
二人とも思ってもいなかっただろう。

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「誘魔〈Old offender〉」五條瑛 (双葉文庫)



WWⅡのみならず、ベトナム戦争の闇も複雑に絡みつき、事態は混迷を極めていく。
アスラン教団の目の付け所の良さには感心するけれども、えげつないね。
自分が日本に住んでいること。
日本人であること。
日頃改めて意識することはないけれども。
本作を読みながら色々と考えさせられてしまう。
今ある環境は永続するものではなく、また、当たり前のものでもない。
右手で善を成しているからと言って
左手の血濡れた悪事を許容していいはずがない。
だから、迷わず糾弾していい。
彼は、悪だと。
事態の根幹を担っている者たちはいまだ表に出てこないまま。
彼らの悪事は暴かれるのだろうか?

このシリーズ、各巻のタイトルが本当に秀逸。
地下銀行のシステムについてはかなり勉強になった。
……とはいえ、私が利用することはないけれども。
山積する問題の何から解決していけばいいのか。
というか、どの問題を国のどの機関が担当してどう話し合っているのか。
全くわからないところが問題なのかも。



本編の感想は単行本の方で投稿済み。
文庫の書下ろし短編のタイトルは「海賊の蕾」
固有名詞は一切ないけれども、この二人が誰なのか想像はできる。
あってるかな?
たぶんあってるはず。
この先の巻で答え合わせができることを期待。
残り二冊。
ドキドキするわ。



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「狂血(immigrant and illegal immigrant, and imposter)」五條瑛 (双葉文庫)



血生臭い巻に相応しいタイトル「狂血」。
各所で燻る不穏な気配と連鎖するかのように、
出会ってしまったことで破滅へと傾いていく彼らの運命がなんとも言い難い。
大きく括ればみな「人類」。
だが、そこに人種や国籍といったモノが付帯することによって、
相容れない存在となってしまう。
相容れなさに拍車をかけているのが「裏口」ルートの入国。
これをどうにかしようとするとワールドワイドな話になるので割愛。
同じ人種でも血で血を洗っているわけで、状態はもはやカオス。
およそ半世紀前から撒かれていた革命の種。
根底にあるのは悪意か、大義か?
いや、それこそ狂気なのか。

櫂にとって釜崎に出会ったことは不運。
だけど、亮司に出会ったことは?どっちだろう。
芸術は人の命と引き換えにしてまで生み出すものではないんだよ。
……と言い切っちゃうのはきれいごとかな?




本編の感想は単行本の方で投稿済み。
文庫の書下ろし短編のタイトルは「Love Rose,Love lost」
『恋刃』でひっかきまわされたプロローグの余波がここでもガツンと。
そして謎が判明する。
おまえかー!
想定外だったよ。
いや、ほんとこのプロローグ構成すごいわ~。

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「純棘(Thorn)」五條瑛 (双葉文庫)



ここにきて気持ちの悪い登場人物が増えて嫌な気分になる。
天誅はその身に降りかかるがいい。
自らこそがその刀の露となり果てるがいい。(ハンムラビで)
終戦間際の出来事が非常に興味深い。
それが弱みになるようでは、彼らはその後の地位を築いていない気がする。
人の弱みを突いてのし上ろうとする輩は、所詮上に立つ器ではないのだ。
明確な意図を持ち、ひっそりと撒かれた種。
人知れず育ったその芽は不穏な気配をまき散らす。
熱帯夜の如く、息苦しい狂乱。
だけど。
嵐はまだ始まったばかり。
「この国に革命は必要ないのか?」
物語の行き着く先がわからない。
ただ平穏であることを希う。

ドラッグの副作用出ましたねー。怖っ。
「覚せい剤やめますか?それとも人間やめますか? 」
かつてのCMのフレーズが蘇る。
めっちゃインパクトのあるCMでした。



本編の感想は単行本の方で投稿済み。
文庫の書下ろし短編のタイトルは「鎌と槌と星」
明確になるサーシャの失くした国。
わかってはいても、その違和感のなさに改めて納得。
サーシャは野良猫に例えられているけれども。
ネコ科であっても、猫よりも大きくて野性味のあふれる動物イメージだなぁ。
あ、でもそうなると、人が住む家には寄り付かないか。

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「愛罪(Uxoricide)」五條瑛 (双葉文庫)



その先にあるのが奈落の底だったとしても。
それが自分で選んで進んだ道の終着点であるならば、
納得もするだろう。
だが、無自覚に誘われて進んだ道の先が破滅であったら?
気づかないうちに選択肢が奪われていることが怖い。
愛故に罪を犯したと?
違う。
男は変態性欲に溺れて女を毀した。
母を奪われた子どもは憤る権利があるけれども。
男に丸め込まれた感が否めない。
そして更に質の悪いモノに絡みつかれていることに気づかないのは
幸か不幸か。
エナの怒りの発露の仕方は間違っている。
他力でしか成し遂げられない復讐はしちゃいけない。

折り返し地点の5巻。
不穏な気配がむんむんと漂っているけれども。
致命的な、あるいは決定的な事態はまだ起こらず。
水面下では陰謀が着々と進行し、
このまま彼らの意図する方向に物事が動いていくのか?
どこかで破綻するのか?
気になりポイントがありすぎて、続き、いきまーす!


本編の感想は単行本の方で投稿済み。
文庫の書下ろし短編のタイトルは「新宿水族館」。
意図するところは想像した通り。
人種、国籍、年齢、性別。
多種多様な人々が生活する街、新宿。
東北人の私から見たら街の規模が大きすぎて、
水槽の魚みたいに一人でスイスイ移動することは不可能。
待ち合わせた相手から
「事故で電車が動かなくなって何時にそっちにつくか不明。適当にお店みてて」と連絡があった時には、
身近な喫茶店に入って待っている以外の選択肢がなかったなぁ。
でもバッグには常に本が一冊。
待つのは全く苦にならないのです。


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「恋刃(Lancet) (R/EVOLUTION 4th Mission) 」五條瑛(双葉文庫)




ほんの少しその輪郭が見えてきた陰謀のあらまし。
それが「ドラッグ」だとわかっていれば、口にしない自信はある。
けれども、知人からあんなふうに勧められたら?
迷いつつも、口に入れてしまいそうな流れが怖い。
雑多な街で織りなされる人間模様。
エロスと退廃。暴力と裏切り。
漲る生命力と諦念。
そして、身を滅ぼさんばかりの恋情。
恋の刃は己自身を切り刻む……
だけならまだしも、巻き込まれた周囲はたまったものじゃない。
誰がどこまでを意図的にその絵図を描いているのか。
息もつかせぬ展開にため息。
亮司がなんだかお気の毒に思えてきた……


最後まで尾を引く「プロローグ」の威力が半端ない。
え?誰?もしかして(序盤)…?→嘘、そっち?(中盤)→え?どゆこと!??(終盤)という三段跳び。
速攻次巻に手を伸ばしたくなる。
キラの入れ墨、よき。


本編の感想は単行本の方で投稿済み。
https://bookmeter.com/books/538405
文庫の書下ろし短編のタイトルは「彼は舞い降りた」
彼=サーシャ?とタイトルを見て思ったけど、私の発想が安易すぎたわ。
舞い降りたのは天使。(笑)
ふいに訪れた自分を……というか、自分の作品を認めてくれる存在。
夢見心地にもなるだろう。
作中でも凶弾に倒れた男がいるけれども。
現実でそんなことがあってはならない。

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「心洞―Open Sesame」五條瑛 (双葉文庫)



その手に銃を握った彼女の強さが悲しくて、そして震えるほどかっこいい。
穏やかで優しい生活を、愛する男を奪った代償はその命で。
殺意を実行するに足るだけのものを与えてくれる者たちが周囲にいたのは、
手を知恵で汚しても微塵の後悔もない彼女にとっては幸いだったのだろう。
人との出会いが運命を狂わせる。
その典型がヤスフミ。
知らず足を踏み入れた沼は、奈落へと引き摺り込まれるものだった。
守りたいと思うものがあるのに。
魔性にかどわかされたのは彼の弱さ。
確たる意思を持った者たちが泥臭く、したたかに生きていく街、新宿。
最後に嗤うのは誰?

「どうして人には一つしか命がないのだろうか。
もしも複数あれば、その全部を奪ってやるのに」
強烈な殺意を表すのにあまりにも端的な言葉に唸る。
その言葉通りに戦う彼女の生命力の強さが眩しい。


本編の感想は単行本の方で投稿済み。
文庫の書下ろしの短編は嘉瀬と一紀の出会い編。
これもまた、人との出会いがその後の運命を決める一幕。
決して恵まれた環境下にはない者たちが、支えあうのではなく搾取しあう。
生きていく、ということがとても過酷な社会で、それでも、芽生える絆がある。
未来を語る者たちがいる。
たとえそれが大きな変革の果てに構築される未来だとしても。
……続きがめっちゃ気になるので、読書休暇ください。←無理。





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「紫嵐(Violet Storm)」五條瑛 (双葉文庫)



タイトルが秀逸。
前巻で男が囁いたのは、革命だった。
そして少年は嵐を誘う。
鮮やかな生命力をまとった少年の著しい成長に驚くものの、
それは、彼が早々に大人にならざるを得ない環境にその身を置かれたからだ。
自分の過去を受け入れることができた亮司はずいぶんと落ち着いた青年になったけれども、
サーシャに対する鬱屈を捨てきれないところがかわいい。
そして裏社会でもがく大人たち。
裏切りは裏切りを呼ぶ。
そんな簡単なことに何故思い至らないのか。
だが、それ以外に生きる術を持たない彼らの生き様が痛々しい。
鳩と一紀のかみ合わないコンビ。良いと思ったんだけどな。


本作のプロローグを読み終わった瞬間、
『プラチナ・ビーズ』を引っ張り出してきてそのプロローグとエピローグに目を通す。
ああ、この子が……と思えるのは、シリーズ読み&作家読みの醍醐味。


本編の感想は単行本で投稿済み。
文庫にはご褒美的な書下ろしの短編が収録。
すみれとキラ。
二人の少年の出会いがこの先、何をもたらしていくのかとても気になる。
「難しい。けれども、不可能じゃない」
ならば、手を伸ばす以外の選択肢はない。
ほしいものを指を咥えて見ているような、生易しい環境で育ってきてはいないのだから。

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「断鎖(Escape)」五條瑛 (双葉文庫)



「革命を起こさないか、この国に」
冒頭のこの言葉が、強烈に印象的な言葉として脳裏に残るのは、
誰がその言葉を口にしているのか、わかっているからだろう。
シリーズ一作目。
それぞれの事情、それぞれの思惑を持った人間たちが
多種多様に絡み合い、自ら首を突っ込み、あるいは巻き込まれていく。
柵を、過去を、憎しみを断ち切るにはどうしたらいいのか?
答えは一つではなく、人それぞれ。
大川が纏った執着に唖然とし、それが断ち切られたことを願う。
そして、裏社会に身を置きながらも人の好さを損なわれなかった
亮司のたどり着いた答えに安堵する。



「革命を起こさないか、この国に」
プロローグでのその言葉がどんな状況で囁かれたのかが知れるエピローグにゾクゾクする。
「R/VOLUTION」の「E」から始まる物語。最後に「R」がくる意図は?
続きを読まない選択肢はない。


本編の感想は単行本で投稿済み。
https://bookmeter.com/reviews/107408528
文庫にはご褒美的な書下ろしの短編が収録……されているとなれば、
こちらも揃えないわけにはいきません。
事件後の亮司がはじめた新しい生活の準備。
そこには当然のようにサーシャがいて、色々な意味でわくわくする。
過酷な体験をし、人間的に一回り以上大きくなった亮司が今後どんな役割を担っていくのか?
とても楽しみ。
そして衝動的に真紅の薔薇を飾りたくなって困る読後。

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「岳飛伝 17 星斗の章」北方健三 (集英社文庫)



「ほかに何が見えますか?」「湖寨が」
やばい。泣きそう……と思ったら、作中で語ってた人も泣きそうになっていました。
ですよねー。
やっぱり原点はそこにある。という思いが込みあげて感無量。
なんでそこまでして戦わないといけないのかな?と思いつつ。
それ以外の選択肢を持ち得なかった漢たち。
いや、今回梁山泊は無理やり引きずり込まれた戦いだった。
それでも軍人の彼らも文官の彼らもよく戦ったと思う。
岳飛も全力以上のものを出し切った。
そして、三つ巴の戦いから弾き出された男が、次の物語を繋いでいく。
私の生死感の核となっている物語は、豪傑の笑いで終幕。

程雲はサッカーで例えるならドイツっぽい。
童貫はフランス。
兀朮は私の中では童貫より格下なんだけど、雰囲気的にはブラジル。
と、最後の最後で意味不明なことをぼんやりと思う。
思えば2006年からの付き合いだったシリーズ『大水滸伝』。
いつかまた、彼らの人生を最初から辿りたい。

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