きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2022.01.28 「検事の死命」柚木裕子 (宝島社文庫)
- 2022.01.20 「検事の本懐」柚月裕子 (宝島社文庫)
- 2022.01.17 「最後の証人」柚月裕子 (宝島社文庫)
- 2022.01.11 「昭和ララバイ 昭和小説アンソロジー」 (集英社オレンジ文庫)
- 2022.01.09 「彼女が最後に見たものは」まさきとしか (小学館文庫)
- 2022.01.06 「滅びの前のシャングリラ」凪良ゆう(央公論新社)
- 2022.01.04 「あの日、君は何をした」まさきとしか (小学館文庫)
- 2022.01.02 「15歳のテロリスト」松村涼哉 (メディアワークス文庫)
- 2021.12.26 「武士とジェントルマン」榎田ユウリ(KADOKAWA)
- 2021.12.19 「パラソルでパラシュート」一穂ミチ(講談社)
「検事の本懐」柚月裕子 (宝島社文庫)
短編5作。
罪を犯すのが人間なら、その罪を明るみにし、裁くのもまた人間。
裁く過程や手段を間違えるのならまだしも、
意図的に事実を捻じ曲げたり、捜査を妨害しようとすることはあってはならない。
佐方を描く物語でありながら、
主体を佐方以外の他者に置いて描かれる物語。
だからこそ伝わる佐方の検事としての在り様は、凛として潔い。
そして、佐方の父、陽世の生き様は私にはとても真似できない。
父の真実が佐方に伝わって良かったと、心底思う。
それにしても……他人を貶めたり陥れたりすることに
躍起になりながら仕事して、日々楽しいのかなぁ?
楽しくないよー。
「事実がどうだったかなんて、この際問題じゃないんだよ」
検察のセリフとしてはありえない……と思わない人もいるのかな?
びっくりだわ。
事件の報道は日々あがってくる。
その度に思う。
「なんでこんなことしたのかな?」と。
だけど、その「なんで」を私が知ることはない。
でも、時に気になる「なんで」。
「最後の証人」柚月裕子 (宝島社文庫)
文庫最新刊を読むにあたって、佐方のことを復習しておきましょう、
という理由で再読。
読み始めるまでは「どんな話だったかしら?」とわくわくしてたんだけど、
プロローグだけで事件の全容や犯人を全部思い出してしまった悲しみ……いや、
読んだことがしっかり身についていたってことで喜ばしいことのはず。
でもやっぱりサスペンスやミステリーはまっさらな状態で読んだ方が断然おもしろい。
(持論です)
何度読んでも一市民が警察や検察からよってたかってこの状態に置かれたら
泣き寝入りしかない。
それが罷り通る世の中は間違っている。
「医師が話を急ぐということはどういう意味をもつことなのか」
うん。
私も知ってる。
電話で「すぐきてね」と呼び出されて良い結果だったことは一度もなかったww
だから主治医の先生から事務方を通さずに携帯に直電がかかってきたときは
いよいよヤバいんじゃないかってドキッとしたけど、
「びっくりさせると悪いから最初に言っておこうかと思って」という前置きの
診察室に行ってからでもまったく問題ない他愛のない用件でした。
先生、俺チョーいいことした!みたいに鼻高々だったけど、こっちはドキドキだったよ。
「昭和ララバイ 昭和小説アンソロジー」 (集英社オレンジ文庫)
一穂さん目当てで購入した昭和小説アンソロジー。
他の三人の作家さんは初読だったけど、期待以上に面白くてご満悦。
表紙を見てある程度のものが「わかるわかる」と思う皆様は同年代。(笑)
ひとくくりに「昭和」と言ってもなんせ64年。
それはいろいろなことがあるよね。
戦争が絡めば命について考えさせられ、
全共闘の時代は今では全く想像つかないよなぁ、と思い。
バブル期に至ってはわかるわかるわかるわー、の連続。
取り上げたテーマ的に異彩を放っていたのは一穂さんかな。
ほっこりしんみり終わるのかと思ったらガツンと来た終幕。
大学の試験期間中。
受講していた講義の試験を受けにいったらバリケード封鎖をしていて目が点になった思い出。
その時ですら思ったわ。
「え?イマドキ!?」って。
そして「バリケードが解除され次第、試験を行います。帰らないでください」とのアナウンスに、
「いつだよ!」と同時に「一日粘る根性見せて!そしたら帰るから」と思ったのは試験待ちの全員の同意。
わー、懐かしい。
ジュリアナもマハラジャもリアルで行けたのは貴重な体験。
でもボディコンは着てないよ(笑)
「彼女が最後に見たものは」まさきとしか (小学館文庫)
何をもって幸せとするのか。
それは百人百様だということを、改めて思う。
私には決してなぞることのできない彼女の幸せの在り様に涙が零れた。
そしてその覚悟に圧倒される。
一見すると幸せな家族。
だけど家庭内に抱える外に見えない歪が怖い。
そうやって子どもが壊されていく。
名前も知らない彼らが彼女のために尽力した。
理由はそれぞれだけれども、その想いがあたたかい。
彼女には全部伝わっていた。
たぶん。
間違いなく。
二作目になった三ツ矢と田所コンビのやりとりがとても愉快。
そして十重二重に絡み合う人々の人生模様が圧巻の読み応え。
自分だったら、死ぬ間際に思い浮かべる言葉は「楽しかった」が理想。
それにしても……積読を減らす!と誓った年始早々に、他作品も読みたくなる作家さんに出会ってしまったのは幸せ……なのかな?(笑)
「滅びの前のシャングリラ」凪良ゆう(央公論新社)
明日、地球が滅びるとしたら何をする?
多分、何もできない。
せめて、大好きな人のぬくもりを感じられる場所にいられればいい。
では、一ヶ月後に地球が滅びるとしたら?
考える時間も何かの行動を起こす時間もあるだけに、
それはとても優しくて残酷な一ヶ月だと思う。
それでもやっぱり私は大好きな人と一緒にいたい。
地球がこんなことにならなかったら集うことのなかった四人。
地球の滅亡と引き換えに家族と見紛うばかりの絆を手にすることのできた四人は、
幸せだったのだと思う。
初回限定の小冊子まで読ませてもらえて感謝のお借り本。
無性にマッカーシーの『ザ・ロード』が読みたくなった。
私の中でのNo.1のディストピア。
社内の最年少の子が2000年生まれで。
そうなると聞いてみたくなるクエスチョン。
「ノストラダムスって知ってる?」
「え?何スか?それ?」
うっそーー!!と、軽く驚愕。
私世代ならみんな知ってるノストラダムス。
「あの日、君は何をした」まさきとしか (小学館文庫)
作中で最も罪深いのは誰だろう?
多分、思うところは人それぞれ。
だから、それぞれのアナタの考えをきいてみたい。
私は一人の名前を挙げる。
その人があの人に与えた苦しみこそが、最も罪深いものだと。
子どもを亡くした母親の慟哭。
息子を案ずる母親の狂気。
根底にあるのが愛情である限り、
どんな醜態を晒そうとも、彼女たちを嫌悪する気持ちは沸いてこない。
そして親を亡くした子どもの虚無。
それを埋めるかの如く、繰り返された「なぜ?」が手繰り寄せた真実。
目で見ることのできない人の本質はわからない。
自らを「異常者」と言う言葉の裏に孤独を垣間見た気がして。
哀しくなった。
初読の作家さん。
普段の私だったら買わなかった作品。
同行者がいた手前、BL棚には近寄れず、
それでもせっかく来たから何か買わねば、と思ったときに目に入ったので手に取ったけど、
私の直感に外れはなかった。(笑)
こういう出会いは嬉しいね。
そしてこのコンビに続編があるのは朗報!しかも先月の新刊……私、いいタイミングでこの作品読んだなぁ。←自画自賛。(笑)続編も読まねば。
「武士とジェントルマン」榎田ユウリ(KADOKAWA)
彼らが心に抱えた「後悔」と言う名の傷は、
他人が「あなたは悪くない」と言ったところで癒えるものではなく。
おそらく彼らはその傷を一生抱えたまま生きていくだろう。
自らが放った言葉の、或いは見えぬふりをした行為の返し刃は、
自らの心を深く抉る。
だけど、寄り添ってくれる人がいる限り、
自らの足で地を踏みしめて、明日へ踏み出すことができる。
笑える日がきっと来る。
そして、周囲の人たちもまた、それぞれの問題を抱え、
その問題と向き合いながら各々の人生を懸命に歩んでいる。
時に厳しくも、あたたかくて優しい物語。
がんばって。そして、がんばろう。
関ヶ原まで赴いて、観光すべきポイントを聞きに行った観光案内所にて。
「東軍と西軍、どちらが好きですか?」と聞かれ、
「どちらが東軍でどちらが西軍ですか?」と尋ね、
(え、ここまで来て何言ってんの?)的な顔をされたのは私です。(笑)
仕方ない。日本史は選択しなかったのよ。(←開き直り)
この作品で榎田ユウリ作品コンプ。
と同時に、榎田尤利・榎田ユウリオールコンプです。
「パラソルでパラシュート」一穂ミチ(講談社)
今日の延長の明日。
そんなふうに予定調和だった明日を予測不可の方向へ押し出すきっかけは、
何処に転がっているかわからない。
気づくか気づかないか。
乗るか乗らないか。
それによって未来が変わる。
亨に出会ったことで変化した美雨の日常。
栄治に出会って亨の道は開かれ、
そんな亨を弓彦は見つけた。
日々を綴る言葉の中に時折混ざる痛みややるせなさの躓きが心地よい。
迷いながら、それでも自分の意思で未来を模索する人たちの物語。
「魔法はかけられるんじゃなくて自分でかかるもの」
望んだ通りの未来に着地できるかはわからないけれども。
「日本三大嬢」のひとつが「受付嬢」。
あと二つは?
瞬発的に浮かんだ私のアンサーは「ウグイス嬢」と「ドジョウ」。
種族が違う(笑)