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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「旅をする木」星野道夫 (文春文庫)



遮蔽物の一切ない広大な自然の中へと誘ってくれる一冊。
澄んだ空気、凛とした静寂、そこに佇む大地、厳しい自然の中で生活する人々、
そして様々な動物たち。
紡がれる言葉からその情景を思い浮かべることが出来るのは、
彼の撮った写真を見てきたからだろう。
命のきらめきまでもが宿った写真を。
先を急いで読む本ではない。
一篇一篇頁を捲りながら彼のやさしく飾らない言葉をゆっくりとなぞり、
彼の見てきた情景へと思いを馳せれば、心が少し、自由になれる気がする。


1枚の写真に魅せられ、アラスカの小さな村の村長に手紙を書き、
単身でアラスカを訪れることを決意した時の彼は19歳。
広い世界に飛び出していった彼とは真逆で、
19歳の私は生きることの意味を必死に自分の内面に問いかけていた。
そして、この本の池澤氏の解説を読み、自分の根底にあるもののひとつが
ソクラテスの言葉にあることを再認識する。
「いちばん大切なことは単に生きるのではなく、善く生きることである」
旅を続けてきた彼が、アラスカに根を下ろすことを決めた矢先での急逝。
それでも彼は、彼にしかなし得ない、濃密な人生を駆け抜けたのだと思う。


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「ヴァムピール・アリトス 秒針を止める放浪者」榎田尤利 (角川ビーンズ文庫)



アリトスが花嫁を望んだ理由がやるせない。
良くも悪くも、彼が望んだ展開になる率、低いと思うんだよね。
でも彼はそれを理解したうえでで、花嫁を求め続けている。
それが彼の業なのかな。……って、宗教違うか。
だったら、優人たちと過ごす時間は、
彼にとっての癒し時間だったらいい。
それが、長い長い年月のうちの、ほんのひと時であっても。
とはいえ、異端の者を吸い寄せる優人の周囲は不穏な出来事のオンパレード。
安らぎとは程遠いドタバタの中、優人、鴨川、久保居、斉藤の成長がとても好ましかった。
シリーズ楽しく読了。


個人的にはあんなにも早い再会はなくてもよかったんだけど。
出会ったからには賑やかに過ごして欲しいと思うわ。




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「ヴァムピール・アリトス 聖者は街にやって来ない」榎田尤利 (角川ビーンズ文庫)



第二弾も表紙のイメージと内容のヘビーさとの乖離が半端ない。
他人を攻撃するために向けられる人間の悪意ってホント気持ち悪い。
満身創痍になってたけど、みんなよく戦ったよー。
永遠ともとれる時を彷徨うヴァムピール・アリトスと人間・優人との
考え方のすれ違い。
擦り合わせて近く寄ることはできても、
根本的なところで真に理解しあうのは難しそうな気がする。
ああ、でも人と人ともそうやって歩み寄りながら関係性を築いていくのかな。
クラスメイトの鴨川・久保居・斉藤たちと優人とのより深い友情の構築は微笑ましい。
残り一冊。
どう展開する?



2003年の本。
作中に「コロナウイルス」の文字表記があって、ちょっとドキッとしました。
♪もーろびとーこぞりてー
私の友だちは「主は気焦り~、主は気焦り~」と覚えていて、
クリスマスになって気持ちが焦る神様の歌だと思っていたそうです。
年の瀬ってことで師走と混同してるようないないような(笑)






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「夏空白花」須賀しのぶ(ポプラ社)



戦争で中止となっていた夏の高校野球。
終戦後一年で大会を復活させるために奔走した人々の物語。
ラスト、感動と感激の余韻で震えた。
戦後の混乱・困窮した時代の中、よくも一年で復活させられたものだと思う。
開催を諦めることなく駆けずり回った彼らの熱意失くしてはありえなかったが、
同時に彼らの思いに賛同して参加する人々がいなければ成り立たなかった。
敗戦と言う事実と向き合い、そこから這い上がるために必要な希望……だったのかもしれない。
アメリカ軍との駆け引きや交流にもぐっとくるものがある。
彼らの尽力の先に今年の大会がある。
そう思いながら夏を待つ。


登録1800冊目。
1600冊目『革命前夜』と1700冊目『また、桜の国で』は無意識に須賀さんの作品でしたが、
今回は意図的に積読の中から須賀さんチョイス。
間違いない選書。
読後に反芻するタイトルの意味と表紙が素晴らしい。
去年はコロナ禍で開催されることのなかった大会。
去年高3だった球児たちが、全員で野球を辞めるか全員で続けるかの二択で
散々に議論した結果、結局は全員で秋の大会に出て、バラバラの大学ながらも
それぞれが野球道具を持って旅立っていきました。
苦楽を共にした仲間との繋がりって、一生ものだよね。


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「スモールワールズ 」一穂ミチ(講談社)



哀しくて、苦しくて、ままならなくて。
だけど、やさしい。
理不尽を飲み込んで、それでも。
今在る世界で足掻きながら、自分らしく生きていく。
そんな彼らの物語。
6編の連作。
ほんの少しずつ重なっている彼らの世界。
最後の物語を読み終えた後、ちょっと震えながら最初に戻りたくなる。
引き裂かれるような類のものではないけれども、
小さな何かが胸に刺さったような読後。
痛みと同時に静かに胸に広がるのは、あたたかな余韻。
一穂さんだなぁ、と思う。
全作通してとても良かった。
以下、一言ずつ各話に対する思いを。→

「ネオンテトラ」切り札はここぞという時に効果的に。相手の息の根を止めるくらいの気持ちで。
「魔王の帰還」善意と余計なことの違いは個人の主観。良くも悪くも魔王は豪快だった。
「ピクニック」無自覚の闇にぞっとする。
「花うた」率直に綴られた言葉がとてもとてもいとおしい。
「愛を適量」十五年ぶりの親子の再会。あの言葉は本心。言った当人も汲み取った方も素敵だと思う。
「式日」ああ、って思う。この先、幸せなれたらいいのにって。




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「進撃の巨人 3」諌山創(マガジンコミックス)



ピクシス司令カッコイイ~~!
絶対的な立場にある指揮官でありながら、
他者の意見に耳を傾けることのできる柔軟性。
惚れ惚れするわ。
エルヴィンと並び立つリヴァイに涙出そうになって、
一枚岩の三人の姿にやっぱり泣きたくなる。
互いが互いに預けることが出来る命。
絶大な信頼がそこにある。
なのになぜ……という未来像がやるせない。
伝播する恐怖は人を混乱に陥れる。
そこから抜け出すために縋るものは希望。
その希望を託された者がが背負うものはとてつもなく重いけれども。
やるしかないのだ。
大切な人を守るために。

坊主頭のお気に入りツートップは海坊主(シティハンター)と天光寺輝彦(コータローまかりとおる!)。
三人目はその時々で入れ替わるわけですが、今はピクシス司令を入れてのトップスリーとなっております(笑)


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「進撃の巨人 2」諌山創(マガジンコミックス)



ミカサとエレンの絆の強さを改めて思い知らされる。
エレンの強さは危ういほどまっすぐで、
だから選択を迫られる局面に立った時も、
泣きたいほどに揺らがなかったのかと思えてしまう。
そして、再読だからこそライナーたちの会話が深読みできてしまって
本当に構成を練りに練ってから連載を始めたのだと
窺い知ることが出来る。
弱肉強食。
うーん。
私絶対捕食される側な気がする。
戦力と戦略。
どちらかが欠けても有利に事は運べない。
巨人がウヨウヨしていたこの頃は
最後まで巨人vs人間で展開していくことを疑っていなかった。


超大型巨人の身長は60m。
ウルトラマンの身長も似た感じだったはず!と思って調べてみると、
歴代のウルトラマンは大体40m~60mくらいだった。
ほほー。
ウルトラマンから連想して一番最初に浮かんだ歌は『ザ・ウルトラマン』の主題歌でした。
皆さんは?(笑)

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「蝶狩り」五條瑛 (角川文庫)



楽しく読む心得は「終りが少々中途半端」と最初から心に留めて読むこと。
中途半端でもとっても楽しく読めるのは、
オムニバス式で連鎖していくストーリーが面白いうえに、
キャラが魅力的だから。 
好みじゃないのでその魅力を感じ取れなかった桜庭に、みんな快く手を貸しすぎ。
イケイケな強面ヤクザは「もう遅いよ……」の言葉に絆される。
10代の少年は身体を張って情報を守り抜く。
そんな桜庭姫は銀のスプーンをくわえて生まれてきた容姿端麗な性悪王子様に
いっそディープなキスをしてもらえばいいと思うわ。
気づけば混乱の渦の中心にいたキリエ。
10年後の彼女に会ってみたい。



諸々余韻を含ませてあとは想像して楽しむ……では消化しきれなかったのが、
覚せい剤と言う美味しい餌を遠くにチラ見させられてただ働きした松村興業の面々、
納得したのーー!?という、個人的な雄たけび。
若頭の立場が心配。
最初からここで終わらせるつもりだったのか、続編の構想があるのか。
あるなら読みたいなー。
とても読みたい。

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「冬に来た依頼人」五條瑛(祥伝社文庫)



長すぎず短すぎずの物語の中に、凝縮された面白み。
失踪者の調査を専門とする桜庭、逃避を希望する人の連れ出しが専門の檜林、
名前と風貌が乖離した二代目ヤクザ松村、
作中最年少でありながらクールで冷静なキャバ嬢キリエ。
読了後にまた会いたい、と思えるような魅力的な面々が織りなす物語。
たとえ周囲が何と言っても、突然行方の分からなくなった夫をみつけたい。
そう思う成美の心情はわかる気がする。
安否の心配はもちろんだし、
真実を知ることができなければ、一生モヤモヤするよね。
「幸福」か「不幸」かを決めるのは自分自身。
まったくもって、その通りだわ。




個人的にはちょっとデンジャラスな本物志向の王子さまに興味深々。
「王子さまのキスが必要か?」
「俺にキスをしたいなら膝をついて頼め」
「一生目覚めるな」
なんだかんだ仲良しな二人のこのやりとりが好き。

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「スモールワールズ刊行記念〈特別ショートストーリー〉「回転晩餐会」 」一穂ミチ



客観的な立場から眺めているだけでは、
その人たちの本当の関係を伺い知ることはできない。
第三者から見れば「奇跡の生還」でも、
その当事者にしてみれば、胸が軋むような現実の延長であったりする。
年に一度、彼らがそこに連れ添っていた理由が知れた瞬間、愕然とする。
そんな関係もあるのだと。
世界界中でたったふたりだけが共有していた想いがそこにはある。
そして、二人を外側から見ていた彼にも45年間抱えてきた思いがある。
人と人。
不思議な人生の交差を、
切なさとやさしさのスパイスを織り交ぜて描いた作品。
尾を引く余韻が良い。


『スモールワールズ』刊行記念企画で、
本編未収録の特別ショートストーリー。
来週の単行本の発売日が俄然待ち遠しくなりました♪
楽しみ~!

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