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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「標的」福田和代 (幻冬舎文庫)




舞台は少々近未来。
VIP専門の警備会社vsテロリスト集団。
一癖も二癖もある警護対象者。
それ以上に興味深い経歴を持つボディーガードたち。
更に曰くありありなテロリスト。
おもしろい。
おもしろいけど、あと一味足りないかなぁ?と思っていたのは途中まで。
読了直後は、ちょっと続きーー!と吠えていました。
かつての親友が今では宿敵。
相反する正義のもとに行動する彼ら。
どちらの言い分も間違ってないかもしれないが、
法を犯している時点でそれは正義ではなく犯罪だ。
「俺は正義を疑い続ける」
惑うな。
いや、すでに彼は迷ってはいない。
だからこそ、続き~~!→

……というわけで、こちらの作品は
『標的』(旧題・『特殊警備隊ブラックホーク』から改題)『ゼロデイ』『サムデイ』の
三部作となっています。
そしてどうやら『ゼロデイ』は『標的』の前日譚らしい。
ということは!
気になる続きは『サムデイ』までお預けなの?
でも『ゼロデイ』も美味しそうなにおいがするので、鼻息荒く、二作目行きます!

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「夢の中の魚」五條瑛(集英社)



のほほんと生きているなぁ、と、自分の境遇を顧みる。
だからと言って、何かを変えたいと思うわけでもないんだけど。
そもそも「国の為」と言う言葉がピンとこない。
とはいえ、まぎれもなく「日本」という国に所属し、庇護されて生きている。
だけど、その国について、更には国が世界とどう向き合っているのか。
知らないことが多すぎる。
知ろうとしない、と言われると耳が痛いけどね。
多分、事なかれ主義。
今が平和に通り過ぎればそれでいい。
だけど、10年後は?
作中の彼らはそこまで見据えて動いている。
本作を読んで軽く感想が書けない程度にちょっと混乱中。

初読の時ってただただ楽しく読んだだけだった気がする。
再読の今、読後感が重い。
でも、こういう手ごたえは悪くない。

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「スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙 」五條瑛(集英社)



やるせなくて胸が苦しくなるのは、彼らの苦悩が伝わってくるから。
必死で生きる彼らの存在が生々しく伝わってくるから。
北朝鮮。
私の住む国とはあまりにも違う国の柵に縛られて生きる男の葛藤が痛い。
二つの国に住まう家族への想い。
そして、そんな彼らに対する葉山の想い。
職務を果たすことが誰かの不幸せに繋がるかもしれない。
そんな思いを抱いてする仕事ってきついなぁ、と思うけど。
胸に傷を抱えながらも葉山は己の仕事を全うする。
彼もまた、迷える者。
身に纏った強かさが頼もしく、悲しい。
三つの瑪瑙。
込められた想いがあたたかくて切ない。


ここまでガツンとした読み応えのある作品にはそう簡単には出会えない。
未読既読含めて五条さんの作品は全部手元にあるので、
今年は感想UPに努めます。
鉱物シリーズも革命シリーズも最初から文庫のもの以外は単行本で持っているけど、
描き下ろし目当てで文庫本が欲しくなる罠。
それ以上に、去年動きがあって、諦めかけていた続きが読める喜びをかみしめる。
『猫目石』も是非。

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「また、桜の国で」須賀しのぶ(伝祥社)



消滅と再生を繰り返した国、ポーランドが、
破壊と虐殺の限りを尽くされた第二次世界大戦。
これは、彼の国で戦った人たちの、
そして見捨てられた国のために尽力した男たちの物語。
慎、レイ、ヤン。
彼らは一様に国と個としてのアイデンティティの在り方に苦しんでいた。
そんな彼らがなぜポーランドのために命を懸けたのか。
国というよりも人。
義というよりも情。
彼の国で必死で生きる友のために。
何よりも、明日の自分に恥じないために。
『また、桜の国で』読後につぶやいて、嗚咽。
忘れてはいけない史実。
そして、戦争は回避しなければいけない。絶対に。

圧倒的な読み応えの登録1700冊目。
ガツンと胸に刺さる重厚な物語であり、忘れてはいけない歴史を突き付けられる。
須賀さん、外れないなー。
他の作品も気になるので、少しずつ集めていこうと思います。


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『A』河出文庫(中村文則)



薄い膜一枚隔てられた世界の中で
膜の外を頑なに拒絶するかのような者たちの視点で始まる短編集。
その膜が突き破られた後は、変幻自在の世界が展開していく。
並べられた物語は理解することを望まれているわけではなく、
そして理解しようとするものでもなく。
自由に綴られた著者の言葉を追った読み手が、
そこから伝わるものを自身の感性で受け止めるだけでいい。
読後感的になんとなく気持ち悪かったのは、
私的に相容れる中村文則と相容れない中村文則が混在していたから……かな。
個人的には『妖怪の村』がベスト。
インパクトが大きかった。

これで『逃亡者』以外の中村作品読了。
その中での私の順不同のベストスリーは
『遮光』『掏摸』『あなたが消えた夜に』。

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「惑いの森」中村文則 (文春文庫)



短編はあまり好んでは読まない。
そして、最近の著者の作品とは相性が良くなかった。
そんなマイナス要素は一作目を読み始めた瞬間に霧散する。
50篇の短編で構築された一つの世界。
即ち、著者の紡ぎ出した森の中に惑うことなくスッと入り込んでいく。
森の中の木々が伝えてくれるのは、
包み込むようなやさしさと、やわらかさ。
尖った異物感。そして不快感。
一作一作を読みながら胸の内に浮かんでくる想いを抱いて
浮遊する空間は99%心地よい。
漂う世界のその心地よさに、安堵の息をつく。
また森の中へ足を踏み入れたくなる読後感。

蜘蛛の言葉がエロティック。こういうエロスは歓迎する。
緊急ボタンに体当たりするネコ、頑張った。
クマのぬいぐるみの想いが切ない。
そして「鐘」。そうだよね、と、全力で頷きたい。

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「星空の16進数」逸木裕(角川書店)



主軸は親からネグレクトを受け、幼いころ誘拐事件に巻き込まれた
コミュ障気味の17歳の少女が、周囲とコミュニケーションを図ることを覚え、
自己の確立をしていく物語。
個人的には。
謎の解明をしていく一見常識人の探偵・みどりの
「自分を殺す人間の顔を見てみたかった」という闇の部分と
刑事から探偵に転身し、見方も肝を冷やすほどの凄みを聞かせる強面浅川。
そして、柔らかであたたかみのある司だけど、
みどりの夫をやってるくらいだから、過去に何か抱えていると面白い。
そんな彼らの存在に興味新進で読了したお借り本。
特に浅川氏、素敵っ。

CMYKがなんたるかもわからないまま、
フォトショと格闘した日々を懐かしく思い出しました。
感覚だけで表紙作ってたなぁ。
#FFFFFFは白。
#000000は黒。
これだけは覚えています(笑)

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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅱ」香月美夜「



王族であるアナスタージウスの恋愛は
想い人の諸事情も相まって色々大変そうだけど素直に応援したくなる。
がんばれ。
ってか、直接的な言葉を伝え合う習慣がないのは、まわりくどいしめんどくさい。
人任せだったり思い込みだったりしてたら本当の気持ちは伝わらないよ~。
アナスタージウスも規格外の貴族っぽくて面白い。
エーレンフェストの騎士団は課題山積。
ローゼマインの指摘によって浮き彫りになったことが今後改善され、
メキメキ強くなっていったら面白い。
やっと下町の人たちが出てきたけど、訪れる一つの転換期。
いつまでも変わらないままではいられないのよね。

前巻でちょっとダレたけど、今回はそんなことなかったので一安心☆
長い物語。
波があってあたりまえ……かな?(笑)

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「この春、とうに死んでるあなたを探して」榎田ユウリ (単行本)



たとえ、20年間会わなかったとしても。
再会した瞬間、一瞬で当時の関係性が蘇ってくる。
それが、学生時代を共にした同級生という存在。
38歳になっても子供じみたやり取りができるのは、
成長期を共にした者同士の特権。
共有する過去の思い出を語り、そして今の自分の在り様を伝え合う。
少しずつ詳らかになる互いの今。
23年前に事故死した恩師の死と向き合うことが、
今を生きる彼の再生へと結びついていく。
彼は帰るべくしてこの街に帰ってきたのだと。
そう、思える。
人は一人で生きているのではない。
支えあってここに在るのだと。


「う~な~ぎお~いし か~ば~や~きぃ~」
なんの歌か考えなくてもメロディーが浮かぶって、唱歌すごいな。
4年に一度のオリンピックイヤーに必ず集っていた小6のときの同級生たち。
今年はコロナの渦中につき、同窓会はなし。
また皆で集まって、大人げなくはしゃいで語り合える日が必ず訪れますように。

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「ドッグレース」木内一裕 (講談社文庫)



元ヤクザの探偵矢能。
カタギを主張する彼のやることなすこと立派なヤクザ寄り。
でも、彼の主義は全くぶれないところがカッコいい。
そんな彼でも養女の栞に対峙する時には
新米パパ予備軍的な態度になるギャップが良いね。
法の境目を簡単に飛び越える非情さと、
懐に入れた人間に対する情愛とが違和感なく同居している。
今回の依頼は他人の犯した殺人の罪を着せられた男の無罪を証明するための調査。
闇社会の人間のことは闇社会に。
故に、行く先々で降りかかるトラブル。
いつもの面々に加えて今作で新たに登場した男たちがまた憎めない。
また会えるかな?


「メシでもご一緒願えませんかね?」
「断る」
矢能のこの一刀両断なそっけなさが好き(笑)


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