忍者ブログ

きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「慈雨」柚月裕子 (集英社文庫)



退職した刑事が妻と共に辿るお遍路の旅。
語られるのは彼らの旅の行程、現在と過去の幼女誘拐殺人事件の顛末、
そして彼自身の、或いは関わりあいを持った人々の人生。
彼らと共にお遍路を辿りながら、
漣のように訪れるそれらの事象に引き込まれていく。
巡礼の旅は自己の内面と向き合う旅でもある。
贖罪につながる悔恨を抱えた神場にとっては苦しい旅路。
そんな彼に寄り添った香代子の存在が大きな癒し。
この夫婦、素敵だなぁ。
事件解決に奔走した緒方の姿も好感が持てる。
だから娘さんの恋は案ずることはない。
あなた方の背中を見て育ってきた子なんだから。


かつて訪れた四国の風景を懐かしく思い出しながら読み進めました。
四国には2度行く機会があったけど、どっちも楽しかった。
「空が広い」と言う描写に納得。
この作品を読みながらまた行きたいという思いが沸々と。
私が「逆打ち」から連想するのは『死国』ではなく『炎の蜃気楼』。
感想あげるのが途中で止まっているけど、いつか再開したい。

拍手

PR

「魂の岸辺」北方謙三 (集英社文庫)



猿なの?いや、それは猿に失礼かしら?
と思ったところがスタートライン。
そこから少年は見事な成長を遂げたけれども。
その成長に少なからぬ影響を与えた男は、
馬鹿なの?と思ったところがゴールライン。
必ずしもそれしか選択肢がなかったわけではないはずだ。
なんだか悔しいなぁ。
中学生にしてはヘビーな悩み事に翻弄された子どもたち。
理不尽な圧力に屈するまいと戦った大人たち。
背伸びしつつも、周一が周囲の愛情をきちんと受け止められる子どもで良かった。
多くを語らない言葉から、何が起こったのかを推測させる。
そんな文章が冴え渡っていた。


「あのナイフはあんたから買ったんだよ」
この件がとても好き。
再び男と対峙する時、既に青年となった少年は腕を鍛え上げているのだろう。
そんな二人が酒を酌み交わす姿を想像すると口角が緩む。

拍手

「キル・ゾーン5 嘘」須賀しのぶ(コバルト文庫)



命は単純な足し算引き算では測れないって言い聞かせてみる。
でも、今回上から下された命令はどう考えたって割に合わない気がする。
あんたが行けば?
たとえ理不尽な命令でも、拒否権なんてあるわけない。それが戦争。
安全なところでふんぞり返っている月のお偉方はいずれ痛い目を見るといい。
もう少し引っ張るかと思ったけど、
タイトル通りあっさりと明るみ出た彼の嘘。
だけど、そんな嘘が吹っ飛ぶくらいのインパクトがラストに待っていた。
えっと……あなた、何者?
グッドリーとシドーのやり取りが好き。
他人の痛みを完全に理解することはできない。
だけど、せめて手を差し伸べることはできると信じたい。

個人的に今回の「嘘」の件は「隠し事」もしくは嘘と同じ意味合いで「偽り」って言う方が私好み。
日本語って表現が豊かだね。
戦いに特化してくれても構わないんだけど、
恋愛で着地するなら私はラファエルよりエイゼン推し。
だけど、サリエルだったら考えないでもない。←迷走中ww
気になる続きは読んで確認するしかない(笑)

拍手

「他人の顔」安部公房 (新潮文庫)



違う。そうじゃない。
共感性の欠片も見つけられない男の内面を延々と読み続けるストレスたるや。
自己と長い付き合いのある他者との関係性は、
仮面をかぶった程度でリセットされるものなのか?
それで本当に別人格に成り得るとでも?
見破られないと思うのは他者に対する嘲りであり、
自分がその程度の深さでしか相手と向き合ってこなかった証でもある。
そもそも、長年一緒に暮らしてきた相手に失礼だよね?
と、積もりに積もった私のストレスは、妻の手紙によって盛大にまき散らされる。
だよねー。
そうだよね。
他者と向き合うために仮面を必要とした結果、自己の内面へ沈み込んだ男に対し、
まず話し合えば?と言うのは本末転倒か?


久々に最後まで読み切った自分を褒めたたえたい読書時間でした。
男の思考と全く相容れずにストレスフル。
うわーん、ホント頑張った。
【ガーディアン必読104/1000冊】

拍手

「キル・ゾーン4 密林」須賀しのぶ(コバルト文庫)



状況判断と先読みの甘さ、黙ってなきゃいけない状況下での怒鳴りあい。
分隊長としてダイジョブか?と思うことしばしばなキャッスル。
その分周りがフォローしてくれてる部分が大きいってこと、
自覚してるだけまだいいのかな?←いいとこ探し。
この隊がうまく機能しているのは、
副官として抜群の才覚を発揮しているエイゼンによるところが大きい。
そんな彼が、狂気の側に触れる寸前のスナイパーぶりを発揮してる姿が、
とてもかっこいいと思う私も大概。
彼はそっち側のひとだったのね、という伏線があるわけだけど、どうなのかしら?
今後も楽しみ。

後書きに時代を感じるというかなんというか。
こんなノリで後書き書いていた作家さん、複数いた気がする。


拍手

「キル・ゾーン3 破壊天使」須賀しのぶ(コバルト文庫)



ラファエルとシドー。
二人の少年の過去が垣間見られる巻。
生い立ちを知ると今の彼らの在り様の裏付けができて、深みが増すね。
個人的にはエイゼンの過去に興味津々。
息詰まるようなジャングルの中での戦い。
所持する武器の差で生死が決まるのは残酷な現実。
でも、それを凌駕しかねない「生き物」の存在は、
物語にどう影響してくるのかしら?
生命の危機に直面しての本能の解放は桁違いに凄まじかった。
その神秘の根本的な謎解きはもう少し先になりそう。
圧倒的不利な状況下で、彼らはこの危機をどう乗り越えるのか?
次巻はエイゼンが表紙なのでとても楽しみ。

後書きでダッハウの強制収容所にチラッと触れていて、
須賀さんの今後の作品につながる素地が垣間見えた気がしました。
史学科って記載があるけど、専攻も西洋史だったのかな?
ぐいぐい引っ張られて読まされる感覚、なんだかデジャヴ……と思ったけど、
『デルフィニア戦記』読んでた時の感覚に近いことに思い当ってみました。

拍手

「キル・ゾーン2 戦場のネメシス 」須賀しのぶ(コバルト文庫)



泥臭くて人間臭い感情の発露。
理解できるだけにイラっともする。
まぁ、成長物語だと思っているからそこは許容範囲。
甘やかさず突き放さず。
頭の冷える言葉をくれるエイゼンの存在感、大きいなぁ。
彼女の身に起きたことを考えれば、怒りと憤りを抱き続けることは必然だと思うけど、
彼の父親が殺されたことは完全にスルーなのね?と、俯瞰してしまう視点に
10代の頃の感性とは違うなー、私、と(笑)
「生き抜く」意志のある人は強い。
「守る」ものを抱えた人も強い。
容赦ない戦場の日々の中でも育まれる絆や想いがある。
この先の彼らの行く末は?


対峙する地球、月、火星。
舞台はいずれ熱帯のジャングルから宇宙に移行するのかしら?どうかしら?
地球から宇宙に人々が移り住む……というワードからは
銀英やガンダムを連想。
先の展開の予測がまったくつかないだけに、続きが楽しみで仕方ない。



拍手

「キル・ゾーン1 ジャングル戦線異常あり 」須賀しのぶ(コバルト文庫)



規律は?秩序は?効率は?
と思ったけど。
そもそも、素性不問の寄せ集め治安部隊。
そんなものはあるはずがなかったのである。
正義のためでも、大義のためでもなく。
ただ生きるためだけに戦う。
ここまで生き延びてきたのは、己を鍛え、それだけの技量を身に着けてきたから。
強い意志があったから。
死と隣り合わせの世界で仲間と笑いあえるのは、そんな自分を肯定しているから。
著者の初期作品。
文庫二冊目にしては十分許容範囲な粗削りさ。
人物紹介的な巻でありながら、興味をそそられる世界観。
この先ゴールまであと19冊。
楽しみっ!

拍手

「サムデイ 警視庁公安第五課」福田和代 (幻冬舎文庫)



三つ巴かと思ったら、まさかの共闘!
そして、前二作でもやっとなった事はオールクリア。
ああ、すべてはここにつながったのね、と。
やばい。
メッチャ面白かった。
『標的』『ゼロデイ』『サムデイ』
この三部作はどれが欠けてもダメ。
この順番ですべて読んで完璧な物語です。
全体主義を想起させられる描写に『1984年』を連想したけど、
やっぱり作中で言及されてました。
受け入れちゃダメな社会。
だけど、知らないうちに浸透してしまったら気づかなそうで怖い。
それを見事にぶっ壊してくれた爽快な物語。
私も彼らが再び交わることを期待しつつ読了!また会いたい。

このシリーズで福田さん初読みだったけど
他の作品も俄然気になってきました。
ちょっとずつ集めていこう……ん?減らない積読(笑)
ストーリーも面白かったし、
どのキャラも魅力的でとても楽しかった。

拍手

「ゼロデイ 警視庁公安第五」福田和代(幻冬舎文庫)



今回は公安vsテロリスト集団・クーガ。
そして語られる警備会社・ブラックホークの成り立ち。
一作目同様、途中までは可もなく不可もなく的な感じで読み進め、
中盤以降、もしかしてそういうことなの?と、
色々と推測しながらのめり込み、
ラストは嘘でしょ?という衝撃があって、
前作同様にちょっとーー!続きーー!と、吠えました。
ジェットコースターに乗りっぱなしで放置された気分。
え?
貴方、どういうことですか?
今回はクーガの幹部たちが生き生きと魅力的に描かれていて
ちょっと困ってしまう。
やってることはガチで犯罪なのにね。


次巻は警察vs警備会社vsテロリストの三つ巴になるのかな?
広げた巨大な風呂敷を最終巻となる三作目でしっかり畳んでくれることを期待します。

拍手

  

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 5 6 7 8
11 12 13 15 16
18 19 21 23
24 25 26 27 28 29 30

フリーエリア

プロフィール

HN:
みやこ
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R

Copyright ©  -- きままに読書★ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / material by DragonArtz Desighns / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]